4. 国民健康保険料をさかのぼって直せるのは2年の期限内

過去の所得が増えても、保険料を何年でもさかのぼって計算し直せるわけではありません。国民健康保険料の賦課決定には、国民健康保険法で期限が決められています。

保険料の賦課決定は、当該年度における最初の保険料の納期の翌日から起算して二年を経過した日以後においては、することができない。

出所:e-Gov法令検索「国民健康保険法」第110条の2第1項

保険料をさかのぼって決め直せる期間は、保険の種類ごとに法律で決まっている2/2

国民健康保険料、国民健康保険税、後期高齢者医療の保険料、介護保険料について、さかのぼって賦課決定できる期限と数え始め、根拠の条文を並べた表

出所:e-Gov法令検索「国民健康保険法」、「高齢者の医療の確保に関する法律」、「介護保険法」、「地方税法」をもとにLIMO編集部作成

  • 国民健康保険料:その年度の最初の納期の翌日から2年(国民健康保険法第110条の2)
  • 国民健康保険税:法定納期限の翌日から3年(地方税法第17条の5第3項)
  • 後期高齢者医療の保険料:その年度の最初の納期の翌日から2年(高齢者の医療の確保に関する法律第160条の2)
  • 介護保険料:その年度の最初の納期の翌日から2年(介護保険法第200条の2)

4.1 国民健康保険税の市町村は3年

国民健康保険は、市区町村によって「保険料」で集めるところと「保険税」で集めるところがあります。保険税の場合は地方税法の期限が使われ、たとえば秋田市では、増額は過去3年までさかのぼって課税されます。

4.2 期限を過ぎた年度の保険料は変わらない

5年分をまとめて受け取っても、期限を過ぎた古い年度の保険料は計算し直されません。神戸市の国民健康保険料の案内でも、最初の納期の翌日から2年を過ぎると、さかのぼって住民税の所得が変わっても保険料は変更できないことが示されています。

つまり、保険料が上がる可能性があるのは、期限内に残っている直近の年度です。どの年度が対象になるかは、請求する時期とお住まいの市区町村の納期によって変わります。

5. 後期高齢者医療の窓口負担も差額を求められることがある

影響は保険料だけではありません。75歳以上の人は、後期高齢者医療の医療費の窓口負担の割合が、所得によって1割・2割・3割に分かれます。

神奈川県後期高齢者医療広域連合では、修正申告などで過去にさかのぼって1割負担から3割負担に変わった場合、窓口負担の差額を後日請求すると案内しています。年金をさかのぼって受け取り、過去の所得が増えたときも、負担割合が変わらないか確かめておきたいところです。

6. 一括で受け取るか、繰下げを選ぶか

70歳を過ぎてからでも、さかのぼって受け取らずに繰下げを選ぶこともできます。この場合は、待った月数に応じて増額された年金を、この先受け取っていく形になります。

6.1 繰下げの増額率は1か月0.7%

繰下げの増額率は1か月あたり0.7%で、75歳まで待つと最大84%です。1952年(昭和27年)4月1日以前に生まれた人などは、上限が70歳で最大42%になります。

6.2 どちらにも注意したい点がある

さかのぼって受け取ればまとまったお金が入りますが、過去の保険料や税金、窓口負担に影響する場合があります。繰下げを選べば年金額は増えますが、毎年の収入が増える分、その後の保険料や税金も上がる可能性があるのです。

どちらがよいかは、年金額やほかの収入、健康状態などによって人それぞれです。請求の前に、年金事務所で受け取れる額を、市区町村で保険料への影響を確かめてから決めると安心です。

7. まとめにかえて

70歳を過ぎてから老齢年金をさかのぼって一括で受け取ると、請求の5年前に繰下げを申し出たものとみなされ、増額された5年分を受け取れます。年180万円の人が71歳で請求すると、5年分は975万6000円になる計算です。

さかのぼって受け取った年金は、本来の年の収入として扱われます。その結果、国民健康保険料や後期高齢者医療の保険料、介護保険料が計算し直される場合がありますが、さかのぼれるのは保険料なら2年、国民健康保険税なら3年の期限内です。

どの年度の保険料や窓口負担が変わるかは、お住まいの市区町村や後期高齢者医療広域連合に確かめられます。受け取り方を決める前に、年金事務所とあわせて相談してみてください。

参考資料

太田 彩子