4. 夫の年金から天引きされる所得税はいくら減るのか

配偶者を申告書に書くと、夫の年金から天引きされる所得税はどれくらい変わるのでしょうか。夫の年金を年240万円とし、2か月ごとの支給1回分で試算しました。

4.1 源泉徴収税額の計算式

年金から天引きされる所得税は、次の式で計算します。控除額は、月ごとの基礎的な控除に配偶者などの控除を足した額に、支給の月数を掛けたものです。

  • 源泉徴収税額=(年金の支給額-社会保険料-控除額)×5.105%

2027年分の基礎的な控除は、年金の月割額の25%に7万5000円を加えた額と、10万5000円のいずれか多いほうです。年240万円なら月割額は20万円で、基礎的な控除は月12万5000円になります。

70歳以上で年金172万円以下の妻を書くと、夫の年金からの天引きは2か月ごとに4084円減る2/2

夫の年金が年240万円の場合に、配偶者を書かないとき、妻の年金が172万円超205万円以下のとき、70歳以上で172万円以下のときの、1回あたりと年間の源泉徴収税額を比べた表

出所:e-Gov法令検索「所得税法」、日本年金機構「老齢年金から源泉徴収される所得税の控除を受けるとき」をもとにLIMO編集部作成

  • 配偶者を書かない:1回6126円、年3万6756円
  • 妻の年金172万円超205万円以下:1回2807円、年1万6842円(年1万9914円減る)
  • 70歳以上で妻の年金172万円以下:1回2042円、年1万2252円(年2万4504円減る)

4.2 試算の前提

夫の年金は2か月分で40万円、天引きされる介護保険料などの社会保険料は2か月分で3万円と仮定しました。1回分の控除額は、基礎的な控除が25万円、配偶者の控除が8万円または6万5000円です。

税額は円未満を切り捨てた概算で、年間は2027年に支払われる6回分を足しています。社会保険料が多く、差し引いた残りが配偶者の控除額より小さくなる場合は、減る額もこれより少なくなります。

5. 夫の年金が214万円未満なら所得税は天引きされない

そもそも所得税が年金から源泉徴収されるのは、2027年分では65歳以上で年金が214万円以上の人です。夫の年金がこれに届かない場合、妻を申告書に書いても、天引きされる所得税は変わりません。

それでも申告書の提出が必要になる場合があります。日本年金機構の案内では、年金が住民税の非課税限度額以上の人で、控除の対象となる配偶者や親族を扶養している人は、申告書の提出が必要としています。

申告書の内容は、翌年の個人住民税の控除にも使われます。所得税が引かれていないからといって、届いた申告書をそのままにしないようにしましょう。

6. 申告書を書く前に確かめたいこと

配偶者の欄に書くかどうかを決める前に、次の点を確かめておくと安心です。

6.1 見積もりは2026年度の年金額で出す

申告書に書く所得は2027年中の見積額ですが、2027年度の年金額はまだ決まっていません。4月分からの年金額の改定で上下することがあるため、基準の172万円や205万円に近い人は、余裕を持って見積もることが大切です。

6.2 期限を過ぎてもなるべく早く出す

提出期限は、届いた申告書に書かれています。日本年金機構では、期限に間に合わない場合もなるべく早く提出するよう呼びかけています。

申告書を出さないままだと、確定申告をしない限り配偶者の控除は受けられません。出し忘れに気づいたら、確定申告で控除を受ける方法もあるのです。

7. まとめにかえて

夫婦ともに年金を受け取っていても、65歳以上の妻の年金が205万円以下なら、夫の扶養親族等申告書に源泉控除対象配偶者として書けます。172万円以下で70歳以上なら、差し引かれる控除は月4万円に増えます。

夫の年金が年240万円の場合で試算すると、天引きされる所得税は年1万9914円から2万4504円減りました。2027年分は同一生計配偶者の所得の基準が62万円に上がり、年金168万円超172万円以下の70歳以上の妻も、月4万円の控除の対象に入ります。

夫婦それぞれの年金額は、年金額改定通知書や源泉徴収票で確かめられます。書き方に迷ったときは、ねんきんダイヤルや年金事務所、税務署に相談してみてください。

参考資料

太田 彩子