物価高が続くなか、「ネット通販での買い物を控えるようになった」と感じる方もいるのではないでしょうか。

総務省統計局が2026年10月9日に公表した「家計消費状況調査」(2026年8月分)によると、ネットショッピングを利用した世帯の割合は54.9%と前年同月から2.2ポイント低下した一方、利用した1世帯あたりの支出額は5万1110円と前年同月から2.6%増えました。

「利用する世帯は減ったのに、使った世帯の支出は増えた」という、一見すると食い違う動きです。

ただし、5万1110円は利用した世帯だけの平均で、全世帯で平均すると金額は大きく変わります。本記事では、公的統計から読み取れることと、読み取れないことを分けて整理します。

1. 「家計消費状況調査」とは?ネットショッピング利用世帯の割合は54.9%に低下

「家計消費状況調査」は、総務省統計局が購入頻度の少ない高額商品・サービスの消費やICT関連消費の実態を毎月調べている統計です。ここでいうネットショッピングとは、世帯におけるインターネットを通じた商品(財)やサービスの購入をいいます。今回取り上げる数値の対象は、二人以上の世帯です。

2026年8月分では、ネットショッピングを利用した世帯の割合は54.9%でした。前年同月の57.1%と比べて2.2ポイントの低下です。

ネットショッピング利用世帯の割合1/3

ネットショッピング利用世帯の割合(二人以上の世帯、2025年8月57.1%、2026年8月54.9%)

出所:総務省統計局「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)2026年8月分結果」をもとにLIMO編集部作成

  • 2026年8月:54.9%
  • 2025年8月:57.1%
  • 差:マイナス2.2ポイント

前年同月との差を月ごとにみると、総務省統計局の統計メールニュースで公表された値では、3月は0.2ポイント、4月は0.4ポイントの低下でした。これに対し、6月は2.7ポイント、7月は2.4ポイント、8月は2.2ポイントと、6月以降は2ポイント台の低下が続いています。

2. ネットショッピングの支出額はいくら?全世帯は2万8042円、利用世帯は5万1110円

2026年8月のネットショッピングの支出額は、二人以上の世帯全体で平均すると2万8042円でした。前年同月の2万8449円から、名目で1.4%の減少です。

一方、ネットショッピングを利用した1世帯あたりの支出額は5万1110円で、前年同月の4万9809円から名目で2.6%の増加となりました。

ネットショッピング支出額2/3

ネットショッピング支出額(全世帯平均と利用1世帯あたり、2025年8月と2026年8月の比較)

出所:総務省統計局「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)2026年8月分結果」をもとにLIMO編集部作成

  • 全世帯平均:2万8449円(2025年8月)から2万8042円(2026年8月)へ、名目1.4%減
  • 利用1世帯あたり:4万9809円(2025年8月)から5万1110円(2026年8月)へ、名目2.6%増

2.1 なぜ「利用世帯は減少、1世帯の支出は増加」になるのか?

2つの数字は、分母が異なります。全世帯の平均は、ネットショッピングを利用しなかった世帯も含めて平均した金額です。利用1世帯あたりの金額は、利用した世帯だけで平均した金額です。

たとえば、利用世帯の割合54.9%に利用1世帯あたりの支出額5万1110円を掛けると約2万8060円となり、全世帯平均の2万8042円とほぼ一致します。前年同月と比べると、利用世帯の割合は約3.9%低下(57.1%から54.9%)し、利用世帯の支出額は2.6%増えました。この2つが重なった結果、全世帯平均は1.4%前後の減少になったと整理できます。

この統計から「言えること」と「言えないこと」は、次のとおりです。

  • 言えること:ネットショッピングを利用した世帯の割合は下がり、利用した世帯の平均支出は増え、全世帯平均では減少したという集計結果です。
  • 言えないこと:「利用頻度の低い世帯が離れた」「物価上昇の影響が大きい」といった理由は、個別の世帯を追跡した調査ではないため、この統計だけでは断定できません。
監修
熊谷 良子

「ネット通販を使う人が減った」と聞くと、ネット通販が下火になったのかな、と思ってしまいますよね。でも、今回の「利用世帯の割合」は、調べた月にネットで買い物をした世帯がどれくらいいるかを表す数字で、1世帯がいくら使ったかを示すものではありません。

たとえるなら、「お店に来たお客さんの数」と「お客さん1人あたりの買い物額」は別の話、ということです。来店者が少し減っても、1人あたりの買い物額が増えれば、見え方は変わります。ニュースで数字を見かけたら、「これは割合かな、金額かな」「誰を平均した数字かな」と、ひと呼吸おいて確かめてみてください。それだけで、数字の受け止め方がぐっと落ち着きます。割合が下がっても金額が増える組み合わせは、分母が違えば自然に起こり得ます。