国税庁は2025年12月、令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の相続税の調査等の状況を公表しました。相続税の実地調査は9512件で、追徴税額は合計824億円です。件数、追徴税額とも前の事務年度から増えています。

調査で見つかった申告漏れの相続財産は2879億円で、このうち現金・預貯金等が837億円を占めました。この記事では、申告漏れになった財産の中身と、贈与税の調査で見つかった申告漏れを、国税庁の資料で確認します。

1. 令和6事務年度の相続税の実地調査は9512件、追徴税額は合計824億円

国税庁は、資料情報などから申告額が少ないと想定される事案や、申告が必要なのに申告していないと想定される事案について、相続税の実地調査を行っています。令和6事務年度の主な数字は次のとおりです。

  • 実地調査件数:9512件(前の事務年度は8556件)
  • 申告漏れ等の非違件数:7826件
  • 申告漏れ課税価格:2942億円
  • 追徴税額の合計:824億円(本税716億円、加算税109億円)

1.1 実地調査を受けた事案の82.3%で申告漏れなどが見つかった

非違件数を実地調査件数で割った非違割合は82.3%で、前の事務年度の84.2%から1.9ポイント下がりました。それでも、実地調査を受けた事案のおよそ8割で、申告漏れなどが見つかっていることになります。

非違があった7826件のうち、重加算税が課されたのは1065件で、割合は13.6%です。重加算税は、財産を隠したり事実を偽ったりした場合に課される加算税です。

1.2 実地調査1件当たりの追徴税額は867万円

実地調査1件当たりでみると、申告漏れ課税価格は3093万円、追徴税額は867万円でした。追徴税額は前の事務年度の859万円から少し増えています。

2. 申告漏れ相続財産2879億円のうち、現金・預貯金等は837億円で29.1%

調査で見つかった申告漏れの相続財産を種類別にみると、次のグラフのようになります。なお、ここでの2879億円は財産そのものの金額で、債務や葬式費用などを差し引いて計算する申告漏れ課税価格(2942億円)とは一致しません。

申告漏れ相続財産の内訳。現金・預貯金等は837億円で、その他に次いで多い1/2

令和6事務年度の相続税の実地調査で見つかった申告漏れ相続財産2879億円の内訳を示した横棒グラフ。その他1247億円(43.3%)、現金・預貯金等837億円(29.1%)、有価証券393億円(13.6%)、土地353億円(12.3%)、家屋50億円(1.7%)

出所:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」をもとにLIMO編集部作成

2.1 最も多いのは「その他」の1247億円、次いで現金・預貯金等の837億円

令和6事務年度の申告漏れ相続財産の内訳は、その他が1247億円(43.3%)、現金・預貯金等が837億円(29.1%)、有価証券が393億円(13.6%)、土地が353億円(12.3%)、家屋が50億円(1.7%)です。土地や家屋に比べて、現金・預貯金等や有価証券の申告漏れが大きくなっています。

2.2 現金・預貯金等の申告漏れは、令和2事務年度の529億円から837億円へ

国税庁の資料には令和2事務年度からの推移も載っています。申告漏れ相続財産の合計は1756億円から2879億円に、このうち現金・預貯金等は529億円から837億円に増えました。現金・預貯金等は4年で約1.6倍です。

構成比でみると、現金・預貯金等は令和2事務年度から令和6事務年度まで30.1%、32.2%、31.5%、30.3%、29.1%と、毎年3割前後で推移しています。

3. 贈与税の実地調査では、申告漏れのあった財産の62.9%が現金・預貯金等

国税庁は、相続税を補う税として贈与税の調査も行っています。令和6事務年度の贈与税の実地調査は2778件で、申告漏れ等の非違件数は2582件、追徴税額は123億円でした。

3.1 非違のあった2582件のうち、83.4%は申告していなかった事案

非違があった2582件を申告の有無で分けると、無申告が2154件(83.4%)、申告はしていたが漏れがあった事案が428件(16.6%)です。贈与税の申告漏れの多くは、そもそも申告していないケースでした。

3.2 財産別の延べ件数では、現金・預貯金等が1754件で最も多い

申告漏れがあった財産を種類別に数えると(1つの事案で複数の財産に漏れがあればそれぞれ1件と数える延べ件数)、現金・預貯金等が1754件で62.9%を占めました。有価証券は397件(14.2%)、土地は77件(2.8%)、家屋は27件(1.0%)、その他は533件(19.1%)です。

相続税の調査では申告漏れ相続財産の約3割、贈与税の調査では申告漏れがあった財産の6割超が、現金・預貯金等でした。どちらの調査でも、預金や現金は申告漏れの中心になっています。

国税庁は無申告の事案について、資料情報の収集・活用など把握のための取り組みを積極的に行うとしています。相続や贈与で預金を受け取ったときは、申告が必要かどうかを確かめておくことが欠かせません。

ここからは、元銀行員として相続や口座の手続きのご相談を受けてきた立場から、国税庁が公表した調査事例と、相続が始まる前後に口座まわりで確かめておきたいことを見ていきます。

中本 智恵

預金は、亡くなった方の口座だけを見ていると全体がつかみにくい財産です。ご家族名義の口座や生前に引き出した現金も含めて、どのお金が誰のものかを早めに整理しておくと、申告のときに慌てずに済みます。