厚生労働省は2026年9月18日の社会保障審議会介護保険部会で、第10期の65歳以上の介護保険料について、所得段階ごとの保険料の設定などを見直す論点を示しました。

現行の第9期(令和6年度〜令和8年度)については、基準額は全国平均で月6225円です。

親が65歳を過ぎると、この保険料は年金から天引きされるものと思っている人も多いでしょう。ところが、65歳になった直後や引っ越した直後などは納付書や口座振替で自分で納める期間があり、気づかないうちに未納になっている場合があるため注意が必要です。

この記事では、介護保険料を自分で納める人の条件と、滞納が1年、1年6か月、2年を超えたときに介護サービスの支払いがどう変わるかを、計算例とあわせて確認します。

1. 65歳以上の介護保険料は全国平均で月6225円、65歳になった直後などは納付書や口座振替で納める

65歳以上の人(第1号被保険者)の介護保険料は、市区町村ごとに決まります。納め方は、年金から天引きされる「特別徴収」と、納付書や口座振替で納める「普通徴収」の2つです。

1.1 第9期の介護保険料の基準額は、全国平均で月6225円

厚生労働省が公表した第9期(令和6年度〜令和8年度)の65歳以上の介護保険料は、基準額の全国加重平均で月6225円でした。第8期(令和3年度〜令和5年度)の6014円から211円上がっています。

実際の保険料は、本人や世帯の所得によって段階的に決まるため、基準額より低い人も高い人もいます。

1.2 納付書や口座振替で納める「普通徴収」になる人

東京都新宿区は、次のような人を普通徴収の対象として案内しています。

  • 年金額が年18万円未満の人
  • 年度の途中で65歳になった人
  • 年度の途中で転入した人
  • 年度の途中で保険料が再計算され、増減があった人

新宿区は、65歳になったばかりの人や、前の住所地で特別徴収されていた転入者は、年金が年18万円以上でもおおむね6か月から12か月は普通徴収になるとしています。この期間は、納付書や口座振替で納めなければ未納になります。

2. 介護保険料の滞納が1年以上続くと、介護サービスの費用はいったん全額払いになる

介護保険法は、65歳以上の人が介護保険料を滞納した場合の給付制限を、第66条・第67条・第69条で定めています。滞納の期間が長くなるほど、制限は重くなります。

65歳以上の介護保険料を滞納したときの給付制限1/2

65歳以上の介護保険料を滞納したときの給付制限を示した表。1年以上は費用をいったん全額支払う償還払い、1年6か月以上は保険給付の一時差し止めと滞納保険料の差し引き、時効(2年)で納められない期間があると要介護認定のときから一定期間、自己負担が1割・2割の人は3割、3割の人は4割になり、高額介護サービス費や施設の食費・居住費の負担軽減も受けられない

出所:e-Gov法令検索「介護保険法」、新宿区「介護保険料を滞納すると」を参考にLIMO編集部作成

2.1 1年以上の滞納:介護サービスの費用をいったん全額支払う「償還払い」になる

保険料の納期限から1年以上たっても納めていないと、介護サービスを使うときに費用の全額をいったん支払い、あとで申請して保険給付分の払い戻しを受ける「償還払い」に変わります。介護保険被保険者証には、支払方法を変更した旨が記載されます。

2.2 1年6か月以上の滞納:保険給付の支払いが一時差し止めになる

1年6か月以上たっても納めていないと、払い戻されるはずの保険給付の全部または一部が一時差し止めになります。それでも納めない場合は、差し止めた保険給付から滞納している保険料が差し引かれることがあります。

2.3 時効で納められない期間があると、要介護認定のときから自己負担が3割または4割になる

介護保険料を徴収する権利は、2年で時効により消滅します。時効で納められなくなった期間がある人が要介護認定を受けると、その期間に応じて一定期間、保険から出る給付が減らされます。

新宿区の案内では、この期間の利用者負担は、1割または2割の人が3割に、3割の人が4割に引き上げられます。高額介護サービス費や高額医療合算介護サービス費は支給されず、介護保険施設などの食費・居住費の負担限度額制度も使えません。

3. 介護保険料の未納で自己負担が3割になると、要介護3で在宅サービスを上限まで使う月は8万1144円

給付額が減らされると、毎月の自己負担がどれだけ変わるのかを計算例で確かめます。在宅サービスには、要介護度ごとに保険で使える上限(区分支給限度基準額)があり、要介護3は月2万7048単位です。

【計算例】要介護3で在宅サービスを上限まで使った月の自己負担2/2

要介護3で在宅サービスを区分支給限度基準額2万7048単位まで使った月の自己負担を比べた横棒グラフ。1単位10円として費用は月27万480円、自己負担1割なら2万7048円、給付額減額期間で自己負担3割なら8万1144円、差は月5万4096円

出所:厚生労働省「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額」をもとにLIMO編集部作成

1単位を10円として計算すると、上限まで使った月の費用は27万480円です。介護サービスの1単位の単価は地域とサービスの種類によって10円より高い場合があり、ここでは10円で計算しています。

  • 自己負担1割(給付制限なし):2万7048円
  • 自己負担3割(給付額減額期間):8万1144円
  • 差:月5万4096円

給付制限がなければ、住民税課税世帯で課税所得380万円未満の世帯は、自己負担が月4万4400円を超えた分を高額介護サービス費として払い戻されます。給付額減額期間中は高額介護サービス費が支給されないため、8万1144円がそのまま自己負担になります。

65歳以上の介護保険料は、滞納が1年以上で償還払い、1年6か月以上で保険給付の一時差し止めとなり、時効で納められない期間があると、要介護認定のときから自己負担が3割または4割に上がります。要介護3の計算例では、上限まで使う月の負担は2万7048円から8万1144円に増えます。

親の保険料が年金から天引きされているか、自分で納める期間があるかは、市区町村から届く介護保険料の決定通知書で確かめられます。

ここからは、給付額が減らされる期間の決まり方と、制限が行われない「特別な事情」、親の保険料の納め方を家族で確かめる方法を見ていきます。

熊谷 良子

時効で納められなくなった保険料は、あとから払おうとしても払えません。給付が減らされるのは要介護認定を受けたときなので、親が元気なうちに保険料の通知書を一緒に見ておくことが、いちばん確実な備えになると思います。