アシックスの2026年12月期中間期(1〜6月)決算は、売上高5,344億円、営業利益1,204億円でした。通期では売上高1兆500億円と、1兆円を超える見通し(会社予想)です。

インタビュワーも当初は、アシックスをスポーツシューズのメーカーだと思っていたと話していました。日本の運動靴の会社で、靴を履く人の数はそう増えない。だから大きくは伸びない。そう考えている方も多いのではないでしょうか。

実は、事業の中身を見ると印象は大きく変わります。売上の約8割は海外で、利益の約半分に相当する額をランニングシューズが稼いでいます。泉田氏は市場の広がりを人の数より生活水準で考えるべきだとし、会社も一人当たりGDPを目安に市場を見ています。この見方に立つと、アシックスのシェアが2.1%にとどまる東南アジアが、次の伸びしろとして浮かび上がります。

1. 日本のシューズメーカーから「グローバル企業」へ

2026年12月期中間期の海外売上高比率は82.1%でした。売上の約8割を海外で稼いでいることになります。

 

地域別売上高(2026年1〜6月)1/4

地域別売上高(2026年1〜6月)

出所:アシックス「2026年12月期第2四半期(中間期)決算説明資料」(2026年8月14日)を基にイズミダイズム作成

 

地域は日本・北米・欧州・中華圏・オセアニア・東南・南アジア・その他に分かれ、ほぼ世界をカバーしています。中間期の売上高で最も大きいのは欧州の1,666億円です。日本地域は1,060億円で、全体の約2割にとどまります。

泉田氏は、まずこの点を押さえてほしいと話します。

「アシックスってもはやグローバルで事業活動している会社っていう認識してほしいのと、一番売れている地域はヨーロッパ、一番売れているカテゴリーでいくとパフォーマンスランニング。これだけまず頭に入れていただけると理解しやすいかなと」

国内でも、訪日客の買い物で存在感があります。泉田氏は、表参道などで外国の人の買い物を見ると、アシックスのブランド「オニツカタイガー」を大体持っていると話します。泉田氏が「元々『キル・ビル』でしょ」と振り返ると、インタビュワーはユマ・サーマンが黄色いトラックスーツ姿で履いていた靴だと応じました。

2. 利益の約半分に相当する「ランニングシューズ」

では、アシックスは何を売って稼いでいるのでしょうか。同社の事業は6つのカテゴリーに分かれています。中間期の売上高は次のとおりです。

  • パフォーマンスランニング:2,206億円
  • スポーツスタイル:1,231億円
  • オニツカタイガー:895億円
  • コアパフォーマンススポーツ:551億円
  • アパレル:256億円
  • ウォーキング:86億円

 

カテゴリー別地域別売上高構成(2026年12月期 第2四半期)2/4

カテゴリー別地域別売上高構成(2026年12月期 第2四半期)

出所:アシックス「2026年12月期第2四半期(中間期)決算説明資料」(2026年8月14日) p.54(スライド53)

 

最大の柱は、本格的なランニングシューズを扱う「パフォーマンスランニング」です。売上高の約4割(41.3%)を占め、このカテゴリーだけで580億円の利益(カテゴリー利益)を生んでいます。

この580億円は、連結営業利益1,204億円の約5割(48%)に相当します(カテゴリー利益はカテゴリーに含まれない全社コストを差し引く前の数字で、営業利益とは定義が異なります。カテゴリー利益の合計に対しては約4割です)。

泉田氏が「ランニングシューズがどうなるかというのでこの会社を見るべき」と話すのは、この構造があるからです。

3. 成長の鍵は「人の数」より「生活水準」

ここで疑問が浮かびます。靴を履く人の数がそう増えないなら、市場のパイ(TAM=獲得しうる市場規模)には限りがあるのではないか、という点です。

泉田氏は、ランニングシューズの市場は「人の数」よりも「生活水準」で考えるべきだと話します。

「ランニングするってさ、やっぱり健康への意識の高まりじゃない。(中略)基本的には人の数が増えるってことも大事なんだけど、やっぱり生活水準が上がるってことが大事」

泉田氏によれば、靴の専門店で「最低限いい靴」の目安を尋ねると、大体1万2,000円から1万5,000円という答えが返ってくるといいます。1万円の靴を気軽に買えるのは、生活水準や国の経済レベルがある程度上がった国・地域の人に限られ、市場を広げるのはそうした人の数が増えることだ、というのが泉田氏の見方です。

 

一人当たりGDPと需要の関係3/4

一人当たりGDPと需要の関係

出所:アシックス「第14回インベストメントデイ 東南アジア戦略」(2026年4月13日)、第140回 個人投資家向けIRセミナー(2026年8月29日)を基にイズミダイズム作成

 

会社も、一人当たりGDPを目安に市場を見ています。2026年4月13日の「第14回インベストメントデイ 東南アジア戦略」で、アシックスは今後の成長ドライバーとなるベトナム(2027年予測)とフィリピン(2028年予測)でも、一人当たりGDPが5,000ドルを超える見込みだと示しました。さらに2026年8月29日の個人投資家向けIRセミナーの質疑では、一人当たりGDPが5,000ドルを超えるとランニング用シューズを購入し始める市場になるのではないか、という仮説を持っていると説明しています。

インベストメントデイの資料によると、東南アジア6か国のスポーツウェア市場は直近4年間で年率10.9%で成長しています。一方、アシックス(オニツカタイガーを含む)のシェアは2.1%です。泉田氏はこの差に注目します。

「アシックスってグローバルで売れているブランドなのに、東南アジアでこれだけのシェアしかないってことは、やっぱりノンブランドというか、それ以外のもので済ましちゃってる人が多いんじゃないって思っている。ここに経済成長があって、ブランド品が欲しいなと思うような人が増えてくると、こっからの伸び率がグッと増えてくる」

泉田氏は、こうした見方を「マクロのトップダウンのアプローチ」と呼びます。企業だけを見ていると欠けてしまう視点で、価格帯がある程度高い消費財を見るときには欠かせないといいます。