公務員と会社員では、退職金はどちらが多いのだろうと気になったことはないでしょうか。勤め先によって制度が大きく違ううえ、受け取るのは長く勤めたあとの一度きりのことが多いため、身近な人と比べにくいお金でもあります。転職や定年後の働き方を考える時期には、なおさら気になるのではないでしょうか。
実は国は、国家公務員の退職金の水準を決めるために、民間企業の退職金と企業年金をおよそ5年ごとに調べ、公務と比べています。人事院が2022年4月に公表した比較では、退職の理由と勤続年数をそろえたうえで、公務が2407万円、民間が2405万5000円と、ほぼ同じ水準でした。
本記事では、人事院の官民比較と、内閣人事局が公表している国家公務員の退職手当の最新の平均支給額をもとに、公務員と会社員の退職金を並べて見ていきます。あわせて、数字を比べるときに取り違えやすい点と、自分の退職金を確かめるときの手がかりも紹介します。
1. 【公務員と会社員の退職金】国の官民比較では公務2407万円、民間2405万5000円
人事院の「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について」(2022年4月21日)によると、退職一時金と企業年金(使用者が出した分)を合わせた1人当たり平均の退職給付額は、公務が2407万円、民間が2405万5000円でした。公務が民間を1万5000円(0.06%)上回る結果です。
この比較では、民間は企業規模50人以上の企業で、2020年度中に勤続20年以上で退職した事務・技術関係の常勤の従業員、公務は勤続20年以上で退職した行政職俸給表(一)の適用職員が対象です。さらに、定年退職どうし、公務の応募認定退職と民間の会社都合退職どうしを組み合わせ、勤続年数もそろえて計算しています。
この数字の読み方として大切なのは、同じ条件の人どうしを比べた結果だという点です。退職の理由や勤続年数が違う人の平均どうしを並べると、条件の違いがそのまま金額の差に出てしまいます。この比較はそうした違いをできるだけそろえたうえで、公務と民間がほぼ同じ水準になるよう確かめるためのものと読むことができます。ニュースなどで公務員と会社員の退職金の差が話題になるときは、どの条件で比べた数字なのかを確かめてから受け止めるとよいでしょう。
2. 【内訳を見ると】民間は退職給付の半分あまりが企業年金、公務は大半が退職手当
内訳を見ると、公務は退職手当が2185万円、共済年金給付現価額が222万円です。民間は退職一時金が1148万円、企業年金現価額が1257万5000円でした。
ここでいう現価額は、将来受け取る年金の総額を退職した時点の価値に換算した金額で、民間の企業年金現価額には、企業年金の支給基準に基づいて一時金で支払われた分も含まれています。公務の退職手当は、退職日の俸給月額などをもとに、退職の理由と勤続期間ごとに決められた支給率で計算されます。一方、共済年金給付は退職の理由による差はなく、勤続年数が長いほど多くなる仕組みです。
この内訳から、取り違えやすい点が見えてきます。まず、退職一時金と退職手当だけを比べると、民間は1148万円、公務は2185万円となり、大きな開きがあるように見えてしまいます。ただし、民間で企業年金を一時金で受け取った分は、この1148万円ではなく企業年金現価額の側に入っています。
次に、民間では企業年金が退職給付の半分あまりを占めるため、年金として受け取る分まで含めて見ないと、実際の水準をつかみにくくなります。
そして、調査では、退職給付制度がある企業のうち、企業年金制度がある企業は47.9%でした。勤め先に企業年金があるかどうかで、一時金の金額の意味も変わってきます。退職給付額は、退職時に受け取るお金と、何年もかけて受け取る年金を1つの金額にまとめたものだという点も、数字を見比べるときに意識しておきたいところです。
会社員の方は、自分の退職金が一時金だけなのか、企業年金もあるのかを、まず確かめておくことが大切です。
3. 【国家公務員の定年退職】2024年度の平均は2160万1000円、勤続35〜39年で2328万6000円
内閣人事局の「退職手当の支給状況」によると、2024年度中に退職した国家公務員(常勤職員)の退職手当の平均支給額は、定年退職で2160万1000円でした。定年退職者の平均勤続年数は37年1月です。勤続年数別に見ると、定年退職では勤続35〜39年が2328万6000円、40年以上が2246万4000円となっています。
退職の理由別では、応募認定(早期退職の募集に応じた退職)が2470万3000円、自己都合が345万4000円でした。自己都合で退職した人の平均勤続年数は9年10月と短く、勤続年数の違いが平均支給額に表れていると考えられます。同じ定年退職でも、勤続年数によって平均支給額が変わる点も押さえておきたいところです。退職手当の平均は、定年まで勤めるかどうかや途中で辞める時期によって大きく変わるため、自分の働き方の見通しとあわせて読むことが大切です。
この数字は、退職手当だけの金額です。人事院の官民比較で使われた共済年金給付現価額は含まれていないため、先ほどの2407万円と並べるときは、何を足した金額なのかをそろえて見る必要があります。
ここまでの数字をまとめると退職の理由と勤続年数をそろえた退職給付額は公務2407万円、民間2405万5000円で、ほぼ同じ水準でした。2024年度の国家公務員の定年退職の退職手当は平均2160万1000円です。公務員と会社員の退職金を比べるときは、一時金だけか企業年金も含めるか、勤続年数や退職の理由が同じかをそろえて見ると、数字の受け止め方を誤りにくくなります。これからの退職金の見通しを立てるために、自分の勤め先の制度を一度確かめておきましょう。
