日本学生支援機構(JASSO)が2026年8月に公表した「債券内容説明書(法人情報)令和7事業年度」によると、奨学金の返還月額を減らす「減額返還制度」の承認件数は、令和7年度に5万6156件でした。
減額返還は2024年4月に見直され、返還月額を減らす割合の選択肢が増え、願い出るときの収入の目安も引き上げられました。この記事では、減額返還の仕組みと収入の目安、返還月額の計算例を確認します。
1. 奨学金の減額返還は、返還月額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1に減らして返還期間を延ばす制度
減額返還制度は、災害や傷病、経済的な理由で奨学金の返還が難しくなった人のうち、月々の返還額を減らせば返還を続けられる人を対象にした制度です。一定期間、返還月額を減らし、その分だけ返還期間を延ばします。
減らし方は、当初の返還月額の3分の2、2分の1、3分の1、4分の1の4つから選べます。2分の1と3分の1に加えて、2024年度から3分の2と4分の1が選べるようになりました。
1.1 減額返還の適用は1回12か月まで、通算15年(180か月)が上限
減額返還は、1回の願出で12か月まで適用されます。適用期間が終わる前に改めて願い出れば延長でき、通算の上限は15年(180か月)です。
1.2 減額返還を使っても返還予定総額は減らず、第二種奨学金の利子の総額も変わらない
減額返還は、毎月の返還額を減らす代わりに返還期間を延ばす制度で、返還する総額が減るわけではありません。JASSOは、有利子の第二種奨学金でも利子の支払総額は変わらないと案内しています。
機関保証を選んでいる人は、返還期間が延びる分だけ保証期間も延びますが、保証料を追加で払う必要はありません。
2. 奨学金の減額返還の収入の目安は、給与所得者で年400万円以下、扶養する子どもが3人以上なら600万円以下
経済的な理由で減額返還を願い出るときの目安は、2024年4月から次のように変わりました。給与所得者の年間収入の目安は、それまでの325万円以下から400万円以下に引き上げられています。
奨学金の減額返還を願い出るときの収入・所得の目安1/2
出所:日本学生支援機構「減額返還制度の収入・所得金額の目安」、同「令和6年4月より減額返還がさらに利用しやすくなりました」を参考にLIMO編集部作成
2.1 給与所得者は扶養する子どもが2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下
給与所得者の年間収入の目安は、次のとおりです。年間収入は、市区町村が発行する最新の所得証明書などに書かれている金額で見ます。
- 扶養する子どもが0人・1人:400万円以下
- 扶養する子どもが2人:500万円以下
- 扶養する子どもが3人以上:600万円以下
給与以外の所得がある人は、必要経費などを差し引いた年間所得で見ます。目安は300万円以下で、扶養する子どもが2人なら400万円以下、3人以上なら500万円以下です。
2.2 減額返還の審査では、被扶養者1人につき38万円を収入から差し引く
本人に被扶養者がいる場合は、1人につき38万円を収入金額や所得金額から差し引いて審査します。JASSOは、給与所得者で年間収入430万円、被扶養者1人の場合の例として、430万円から38万円を引いた392万円で審査すると示しています。
3. 奨学金の減額返還の計算例:返還月額1万5000円を4分の1にすると、月3750円
返還月額が1万5000円の人が減額返還を使うと、選ぶ割合によって毎月の返還額は次のようになります。
- 3分の2:月1万円
- 2分の1:月7500円
- 3分の1:月5000円
- 4分の1:月3750円
3.1 4分の1で12か月適用すると、1年間の返還額は18万円から4万5000円に
減額しない場合の1年間の返還額は、1万5000円×12か月で18万円です。4分の1の3750円で12か月適用すると、1年間の返還額は4万5000円になり、13万5000円少なくなります。
ただし、この13万5000円は免除されるわけではありません。返還予定総額は変わらないため、減らした分は延びた返還期間の中で返していきます。
4. 奨学金の減額返還の承認は令和7年度に5万6156件、2年で1万4327件増えた
JASSOの債券内容説明書(法人情報)によると、減額返還の承認件数は令和5年度が4万1829件、令和6年度が5万2301件、令和7年度が5万6156件でした。
4.1 見直し後の令和6年度は、前の年度より1万472件増えた
3分の2と4分の1の減らし方が加わり、収入の目安が引き上げられた令和6年度は、前の年度より1万472件(25.0%)増えました。令和7年度はさらに3855件増え、令和5年度と比べると1万4327件多くなっています。
4.2 返還を先送りする返還期限猶予の「経済困難・失業中等」は11万8061人
返還そのものを一定期間止める「返還期限猶予」のうち、経済困難・失業中等を事由とするものは、令和7年度に11万8061人でした。令和5年度は12万468人、令和6年度は11万7398人で、減額返還の承認件数ほどの増え方はしていません。
奨学金の減額返還は、給与所得者なら年間収入400万円以下、扶養する子どもが3人以上なら600万円以下が目安で、返還月額を最大4分の1まで減らせます。令和7年度の承認件数は5万6156件でした。
自分の収入が目安に収まるかは、市区町村が発行する所得証明書の年間収入金額と、扶養している人数で確かめられます。
ここからは、減額返還を願い出る手順と、使えない場合・使い分けを見ていきます。