うつ病や統合失調症などで通院を続けていると、診察代と薬代が毎月かかります。治療が数年に及ぶと、医療費の合計は家計にとって小さくない額になります。
厚生労働省が2025年10月21日に公表した「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」では、令和6年度末の精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数は154万7433人で、前年度から7.6%増えました。通院の医療費の自己負担を軽くする制度として、自立支援医療(精神通院医療)があります。
この記事では、精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数の推移と、自立支援医療(精神通院医療)の対象、所得区分ごとの自己負担上限月額を確認します。
1. 精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数は、令和6年度末に154万7433人
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患により日常生活や社会生活に制約がある人に交付される障害者手帳です。衛生行政報告例では、有効期限切れを除いた交付台帳登載数を毎年度末に集計しています。
- 令和2年度末:118万269人
- 令和3年度末:126万3460人
- 令和4年度末:134万5468人
- 令和5年度末:143万8093人
- 令和6年度末:154万7433人
1.1 令和6年度末は前年度から10万9340人増え、4年前の約1.3倍に
令和6年度末の交付台帳登載数は、前年度末から10万9340人(7.6%)増えました。令和2年度末の118万269人と比べると36万7164人多く、4年で約1.3倍になっています。
人口10万人あたりでみると、令和6年度末は1249.9人でした。
1.2 精神障害者保健福祉手帳の等級別では2級が89万7292人で最も多い
精神障害者保健福祉手帳には1級から3級までの等級があります。令和6年度末の等級別の人数は次のとおりです。
- 1級:13万9406人(前年度から1.9%増)
- 2級:89万7292人(同7.2%増)
- 3級:51万735人(同10.0%増)
前年度からの増え方は3級が10.0%と最も大きく、1級は1.9%でした。
2. 自立支援医療(精神通院医療)は、通院の医療費の自己負担を原則1割にする制度
自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患(てんかんを含む)で通院による治療を続ける必要がある人の、医療費の自己負担を軽くする公費負担医療制度です。厚生労働省の資料では、令和4年度の精神通院医療の支給決定件数は247万960件でした。
2.1 自立支援医療(精神通院医療)の対象は外来・投薬・デイ・ケア・訪問看護など
対象になるのは、統合失調症、うつ病や躁うつ病などの気分障害、不安障害、てんかんなど、すべての精神疾患です。対象の要件は通院による治療を続ける必要がある程度の状態であることで、精神障害者保健福祉手帳の所持は要件に挙げられていません。
医療費が軽くなるのは、入院しないで受ける医療で、外来の診察、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護などが含まれます。入院医療の費用、公的医療保険の対象にならない治療(病院や診療所以外でのカウンセリングなど)、精神疾患と関係のない病気の医療費は対象外です。
2.2 3割負担の医療費が1割に。医療費7000円なら自己負担は700円
公的医療保険で3割を負担している人なら、自己負担が1割に下がります。厚生労働省の例では、かかった医療費が7000円の場合、医療保険での自己負担2100円が700円になります。
申請は市区町村の担当窓口で行います。精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合などは、医師の診断書を省略できる場合があります。
3. 自立支援医療(精神通院医療)の自己負担上限月額は、所得区分で0円から2万円まで
自立支援医療(精神通院医療)では、1割の負担が過大にならないよう、1か月あたりの自己負担に上限があります。上限額は、通院する人と同じ公的医療保険に加入している人を「世帯」として、その所得で決まります。
3.1 住民税非課税世帯は月2500円か5000円、低所得1の年収基準は82.65万円以下に見直し
住民税非課税世帯のうち、本人の年収が一定以下の「低所得1」は上限月額2500円、それ以外の「低所得2」は5000円です。生活保護世帯の自己負担は0円です。
低所得1の年収基準は、制度設計時の障害基礎年金2級の支給額に合わせて「80万円以下」とされてきました。障害基礎年金2級の年間支給額が80万円を超えたため、厚生労働省は令和8年7月から基準を見直しており、最新の資料では本人の年収82.65万円以下が低所得1です。
3.2 課税世帯でも「重度かつ継続」に該当すると、上限月額は5000円・1万円・2万円
住民税が課税されている世帯は、原則として医療保険の自己負担限度額(高額療養費)が上限です。住民税の所得割が23万5000円以上の世帯は、下の「重度かつ継続」に該当する場合を除き、自立支援医療の対象外になります。
ただし、統合失調症、うつ病や躁うつ病、てんかん、認知症などの脳機能障害、薬物関連障害(依存症など)の人や、医療保険の高額療養費の多数回該当の人などは「重度かつ継続」として、課税世帯でも上限月額が設けられます。
- 住民税の所得割3万3000円未満(中間所得1):5000円
- 住民税の所得割3万3000円以上23万5000円未満(中間所得2):1万円
- 住民税の所得割23万5000円以上(一定所得以上):2万円
精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数は令和6年度末に154万7433人となり、4年で約1.3倍に増えました。通院の医療費は、自立支援医療(精神通院医療)を使うと原則1割になり、住民税非課税世帯なら1か月の負担は2500円か5000円までです。
自分の世帯がどの所得区分にあたるかは、住民税の課税証明書の所得割の額で確かめられます。申請先は市区町村の担当窓口で、障害福祉課や保健福祉課が担当していることが多いです。
ここからは、月の医療費2万円と10万円での自己負担の計算と、受給者証の更新で気をつけたい点を整理します。