生活保護を受けると、施設に入らなければならないのではないか。そう心配する人もいますが、生活保護法では、生活扶助は自宅などの居宅で行うのが原則です。
一方で、障害などのために自宅での暮らしが難しい人のために、生活保護法は「保護施設」を定めています。救護施設や更生施設など5種類があり、令和6年10月1日現在で全国に284施設あります。
この記事では、厚生労働省が2026年10月7日に公表した被保護者調査で生活保護を受けている世帯の内訳を確認したうえで、居宅で保護を行う原則と、保護施設の種類と数を、生活保護法と厚生労働省の統計にそって整理します。
1. 生活保護を受けている世帯は令和8年7月分で164万4102世帯、障害者・傷病者世帯は25.6%
厚生労働省の「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯で、前年同月より3516世帯(0.2%)少なくなりました。生活保護を受けている人は196万9655人で、人口100人あたりの保護率は1.60%です。
1.1 世帯類型別の割合は、保護停止中を除く163万5284世帯が分母
164万4102世帯には保護を一時的に停止している世帯も含まれるため、世帯類型別の数は停止中を除いた163万5284世帯で集計されています。
- 高齢者世帯:90万3116世帯(55.2%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8114世帯(25.6%)
- その他の世帯:25万9162世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4892世帯(3.4%)
高齢者世帯が半分を超え、障害者・傷病者世帯が4分の1を占めています。高齢者世帯90万3116世帯のうち、単身世帯は84万4423世帯で、高齢者世帯の93.5%にあたります。
2. 生活保護の生活扶助は「居宅」で行うのが原則、施設への入所は強制されない
生活保護の保護費は、厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費と世帯の収入を比べ、収入が最低生活費に満たないときにその差額が支給されます。扶助は生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生業・葬祭の8種類です。
2.1 生活保護法第30条は、生活扶助を被保護者の居宅で行うと定めている
生活保護法第30条は、生活扶助は被保護者の居宅において行うものとしています。そのうえで、居宅で行うことができないとき、居宅では保護の目的を達しがたいとき、本人が希望したときには、救護施設や更生施設、日常生活支援住居施設などに入所させて行うことができるとしています。
2.2 施設への入所や養護を、本人の意に反して強制することはできない
同じ第30条の第2項は、施設に入所させることができるという規定を、被保護者の意に反して入所や養護を強制できるものと解釈してはならないとしています。施設に入るかどうかは、本人の意思が前提になります。
3. 生活保護法の保護施設は5種類、令和6年10月1日現在で284施設
生活保護法第38条は、保護施設の種類を救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設の5つと定めています。厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査」で、それぞれの数を確認します。
保護施設5種類の目的と、令和6年10月1日現在の施設数・定員・在所者数2/2
出所:e-Gov法令検索「生活保護法」、厚生労働省「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」をもとにLIMO編集部作成
3.1 救護施設は185施設で、保護施設のおよそ3分の2を占める
救護施設は、身体上または精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行う施設です。令和6年10月1日現在で185施設あり、保護施設284施設のおよそ3分の2を占めています。
救護施設の定員は1万5966人で、在所者数は1万5864人でした。定員に対する在所者数の割合を計算すると99.4%で、定員のほぼすべてが埋まっています。
3.2 更生施設・授産施設・宿所提供施設は、それぞれ十数施設
ほかの4種類の目的と数は次のとおりです。
- 更生施設:身体上または精神上の理由で養護と生活指導が必要な要保護者を入所させて生活扶助を行う。17施設、定員1250人、在所者957人
- 医療保護施設:医療を必要とする要保護者に医療の給付を行う。56施設
- 授産施設:就業能力の限られている要保護者に、就労や技能の修得のための機会と便宜を与える。13施設、定員440人、在所者301人
- 宿所提供施設:住居のない要保護者の世帯に住宅扶助を行う。13施設、定員906人、在所者327人
医療保護施設は、この調査では定員と在所者数を調べていないため、施設数だけが公表されています。
生活保護を受けている世帯の55.2%は高齢者世帯、25.6%は障害者・傷病者世帯です。生活扶助は居宅で行うのが原則で、施設への入所は本人の意に反して強制されません。
そのうえで、自宅での暮らしが難しい人のために、救護施設など5種類の保護施設が全国に284施設あります。最も多い救護施設は185施設で、定員のほぼすべてが埋まっています。
ここからは、保護施設全体の前年からの変化と、居宅での保護費の目安を確認したうえで、家族が施設への入所を考えるときに確かめておきたいことを見ていきます。
生活保護法では「居宅保護」が原則であり、本人の意思に反して施設入所を強制されることはありません。また、受け皿となる救護施設は在所率が99%を超えており、希望しても即時入所が難しいのが実情です。
施設への入所を検討する際は、本人の意向確認はもちろん、生活環境の変化に伴う「お金の流れ」の整理が不可欠です。入所後は生活扶助の基準や手元に残る金銭の額が変わり、自宅の賃貸解約や光熱費・口座引き落としの清算も生じます。家族だけで抱え込まず、早い段階でケースワーカーを交え、本人の尊厳と生活設計の両面から現実的な選択肢をすり合わせましょう。
