厚生労働省は令和8年8月1日から、介護保険施設の食費・居住費の負担限度額と基準費用額を見直しました。
第3段階①・②の人は食費が1日30円〜60円、居住費が一部を除いて1日100円上がり、第2段階を分ける年金収入等の基準も80万9000円から82万6500円に変わりました。
負担が見直されたこの時期に、社会福祉法人などが利用者負担を「4分の1」軽くする制度を知り、申請すれば毎月の支払いも4分の1になるのかと考える家族もいるでしょう。
答えるのは、元自治体職員の太田彩子です。国民健康保険と後期高齢者医療の保険料を、住民税の課税情報をもとに計算していた立場から、いくつもの軽減がどの順番で重なるのかを確認します。
1. 【読者の疑問】住民税非課税世帯の特養費は、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度で4分の1になるのか
今回取り上げるのは、次のような疑問です。
「親が特別養護老人ホームに入っていて、世帯は住民税非課税です。社会福祉法人の軽減制度を申請すれば、毎月の支払いも4分の1減るのでしょうか」
1.1 4分の1軽くなるのは、主に食費と居住費
結論から言うと、毎月の支払いがまるごと4分の1減るわけではありません。軽減がはっきり表れるのは食費と居住費で、介護サービス費の自己負担は、高額介護サービス費の上限で先に抑えられていることが多いためです。
親が利用者負担第2段階で、介護サービス費の1割負担が月2万円以上なら、介護サービス費の分の支払いは変わりません。それでも食費・居住費は多床室で月6150円軽くなるので、申請する意味はあります。
1.2 そう判断する理由は3つある
結論の根拠は次の3つです。
- 実施要綱は、社会福祉法人の軽減を先に当て、軽減したあとの額で高額介護サービス費を計算すると定めている
- 第2段階の高額介護サービス費の上限は個人で月1万5000円のため、1割負担が月2万円以上なら4分の1を引いても上限を下回らない
- 食費・居住費は高額介護サービス費の対象外で、補足給付で下がったあとの額に4分の1の軽減がそのままかかる
2. 【試算】社会福祉法人等による利用者負担軽減制度で、特養の食費・居住費は第2段階の多床室なら月6150円軽くなる
まず、食費と居住費にかかる軽減を、令和8年8月からの負担限度額で計算します。
2.1 軽減は補足給付で下がったあとの額にかかる
住民税非課税世帯の人が介護保険施設に入ると、負担限度額の認定(補足給付)を受けることで、食費・居住費の1日あたりの負担に上限が設けられます。社会福祉法人の軽減は、この上限まで下がった額に対してかかります。
厚生労働省の実施要綱は、補足給付との順番を次のように定めています。
特定入所者介護サービス費及び特定入所者介護予防サービス費の支給後の利用者負担額について、本事業に基づく軽減制度の適用を行うものとする。
出所:厚生労働省「低所得者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額の軽減制度の実施について」
2.2 段階と部屋の種類で、軽減額は月6150円〜2万1675円
特別養護老人ホームに30日入所した場合で計算すると、第2段階の多床室は食費1日390円と居住費1日430円で月2万4600円です。その4分の1にあたる6150円が軽くなります。
特別養護老人ホームの食費・居住費に、社会福祉法人等による利用者負担軽減(4分の1)をかけた場合の月額です/0
出所:厚生労働省「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」をもとにLIMO編集部作成
軽減の程度は利用者負担の4分の1が原則で、老齢福祉年金を受け取っている人は2分の1が原則です。実際の割合は市町村が個別に決め、確認証に記載されます。
3. 住民税非課税世帯の介護サービス費には頭打ちがある
次に、介護サービス費の1割負担を見ていきます。住民税非課税世帯は高額介護サービス費で月の負担に上限があるため、社会福祉法人の軽減と重ねたときの差は小さくなります。
3.1 軽減を当てたあとの額で高額介護サービス費を計算する
実施要綱は、高額介護サービス費との順番についても定めています。
本事業に基づく軽減制度の適用をまず行い、軽減制度適用後の利用者負担額に着目して支給を行うものとする。
出所:厚生労働省「低所得者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額の軽減制度の実施について」
高額介護サービス費の上限は、第2段階(世帯全員が住民税非課税で、年金収入等と合計所得金額の合計が82.65万円以下)なら個人で月1万5000円です。第3段階では世帯で月2万4600円になります。
3.2 第2段階は1割負担が月2万円以上だと支払いが変わらない
第2段階で1割負担が月2万円の場合、4分の1を引いても1万5000円で、もともとの上限と同じ額です。第3段階の単身世帯でも、1割負担が月3万2800円以上なら軽減後の額が上限の2万4600円を下回らず、支払いは変わりません。
実施要綱も、特別養護老人ホームなどを使う第2段階の人の介護サービス費の負担については、高額介護サービス費の見直しで「本事業に基づく軽減を上回る軽減がなされる」として、軽減の対象から外して差し支えないとしています。
介護サービス費の1割負担の額ごとに、社会福祉法人等による利用者負担軽減で月の支払いがいくら減るかを試算しました/0
出所:厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」をもとにLIMO編集部作成
社会福祉法人の軽減で4分の1軽くなるのは主に食費と居住費で、特別養護老人ホームの第2段階・多床室なら月6150円です。介護サービス費の1割負担は、高額介護サービス費の上限との兼ね合いで差が出ない場合があります。
親の負担がどれだけ下がるかは、施設の請求書で「介護サービス費の1割負担」と「食費・居住費」を分けて見ると確かめられます。負担限度額認定証に書かれた段階も手元に用意しておくと、計算しやすくなります。
ここからは、元自治体職員として住民税の課税情報を扱っていた経験から、申請の前に確かめておきたい預貯金の基準と、窓口で聞いておきたいことを見ていきます。
住民税非課税世帯向けの軽減は、補足給付、高額介護サービス費、社会福祉法人の軽減が重なっていて、どれがどの費用を下げるのかが見えにくい仕組みです。請求書を項目ごとに分けて見ると、申請したときの差がつかみやすくなります。
