通勤や通院に車が欠かせない地域では、生活保護を考えたときに「車を手放さなければならないのか」が気になる人もいるでしょう。
厚生労働省が2026年10月7日に公表した「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯でした。生活保護では資産を活用することが前提になり、自動車の扱いは厚生労働省の通知で細かく決められています。
この記事では、生活保護の基本と生活扶助基準額の例を確認したうえで、自動車の保有が認められる場合と、仕事を探している間の扱いを見ていきます。
1. 生活保護を受けている世帯は令和8年7月分で164万4102世帯、受けている人は196万9655人
被保護者調査(令和8年7月分概数)で、生活保護を受けている世帯と人の数を確認します。
1.1 生活保護を受けている世帯は前年同月より3516世帯少ない
生活保護を受けている世帯は164万4102世帯で、前年同月より3516世帯(0.2%)少なくなりました。前月と比べると1324世帯多くなっています。
生活保護を受けている人は196万9655人で、前年同月より2万438人(1.0%)少なくなりました。人口100人あたりの保護率は1.60%です。
2. 生活保護は、資産などを活用しても最低生活費に届かないときに差額が支給される
生活保護は、世帯の収入が国の定める最低生活費に届かないときに、その差額を保護費として支給する制度です。厚生労働省は、保護を受ける前提として次の4つを挙げています。
- 資産の活用:預貯金や、生活に使われていない土地・家屋などは売却などをして生活費に充てる
- 能力の活用:働くことができる人は、その能力に応じて働く
- あらゆるものの活用:手当など、ほかの制度で受けられるものがあれば先に活用する
- 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる場合は援助を受ける
2.1 生活保護の扶助は8種類
保護費は、生活を営むうえで必要な費用ごとに8種類の扶助に分かれています。
- 生活扶助:食費・被服費・光熱水費など日常生活に必要な費用
- 住宅扶助:アパートなどの家賃
- 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費など
- 医療扶助:医療サービスの費用(本人負担なし)
- 介護扶助:介護サービスの費用(本人負担なし)
- 出産扶助:出産費用
- 生業扶助:就労に必要な技能の修得などにかかる費用
- 葬祭扶助:葬祭費用
2.2 生活扶助基準額の例(令和8年10月1日現在)
厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」では、世帯の例ごとに生活扶助基準額が示されています。住んでいる地域で額が変わるため、東京都区部等と地方郡部等が並んでいます。
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳):東京都区部等16万8020円、地方郡部等15万370円
- 高齢者単身世帯(68歳):東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万9950円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):東京都区部等12万5460円、地方郡部等11万1720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳):東京都区部等20万50円、地方郡部等17万9300円
いずれも児童養育加算などを含む月額です。家賃がかかる場合は住宅扶助が別に加わります。
3. 生活保護を受けている間の自動車の保有は、通勤と通院などの場合に例外として認められる
自動車は資産にあたるため、生活保護を受けるときは処分して生活費に充てるのが原則です。そのうえで、厚生労働省の通知(「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」)は、処分させることが適当でないものとして保有を認める場合を定めています。
3.1 通勤用の自動車は、障害者や深夜勤務など4つの場合に保有が認められる
通勤用の自動車は、自動車による以外に通勤する方法がまったくないか、通勤することがきわめて困難で、保有が社会的に適当と認められるときに、次の4つの場合で保有が認められます。
- 障害者が自動車で通勤する場合
- 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人などが自動車で通勤する場合
- 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車で通勤する場合
- 深夜勤務などの業務に就いている人が自動車で通勤する場合
2つ目から4つ目は、さらに4つの要件をすべて満たす場合に限られます。
3.2 障害者の通院などに使う自動車は、排気量おおむね2000cc以下が目安
障害者(児)の通院・通所・通学に自動車が必要な場合や、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人が通院などに自動車を必要とする場合も、保有が認められることがあります。
この場合は、定期的に自動車が使われることが明らかで、送迎サービスなどの活用が難しいことに加え、通院などに必要最小限の自動車(排気量がおおむね2000cc以下)であることが求められます。ガソリン代を除く維持費が、ほかからの援助などで確実にまかなわれる見通しがあることも要件です。
3.3 仕事を中断して申請したときは、自動車の処分の指導が概ね6か月保留される
通勤用の自動車は、いま働いている人にしか認められていません。ただし、失業や病気で仕事を中断して申請した人でも、概ね6か月以内に就労によって保護から抜けることが確実に見込まれ、自動車の処分価値が小さい場合は、処分の指導を行わないことができるとされています。
6か月を過ぎても、就労を妨げる事情がなく、自立に向けた活動を具体的に続けている人は、保護の開始から概ね1年の範囲で処分の指導が保留されることがあります。保留中は、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人が求職活動に使う場合を除いて、自動車を使うことは認められません。
生活保護では自動車は原則として処分の対象ですが、通勤用で4つの場合、通院などで2つの場合に保有が認められ、仕事を探している間は処分の指導が保留されることがあります。
車を持ったまま相談するときは、通勤や通院に使っている事情と、車の年式や維持費が分かるものを用意して、住んでいる地域の福祉事務所に伝えると話が進めやすくなります。
ここからは、保有が認められた自動車の維持費と買い替えの扱いについて見ていきます。
車は暮らしの足であると同時に、売ればお金になる資産でもあります。保有が認められるかどうかは、通勤や通院の必要性と、維持費を払い続けられるかの両方で判断されると押さえておくと、相談の準備がしやすくなります。
