金の価格が高い水準で推移するなか、手元にある金地金や金貨を売ることを考える人もいるでしょう。

田中貴金属工業が2026年10月5日に公表した金の店頭買取価格(税込)は、1グラムあたり2万3025円でした。この価格で計算すると、100グラムの金地金を売った代金は230万2500円になります(売買の手数料は含みません)。

この記事では、円建ての金価格がどのように決まるのかを確認したうえで、売却代金が1度に200万円を超えるときに関わる「支払調書」と「取引時確認」の2つの制度を整理します。

なお、純金積立に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【純金積立シミュレーション】10年続けていたら資産3.5倍に…「月1万円×10年間」でどのくらい増えた?《2016年~2026年》
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1. 円建ての金価格は「ドル建て価格×為替レート÷31.1035」が基準になる

国内で売り買いされる金の価格は、海外の金相場と為替レートの両方を受けて決まります。三菱マテリアルの解説をもとに、円建ての金価格の基本となる計算を確認します。

1.1 海外の金相場は1トロイオンス(約31.1035グラム)あたりの米ドルで取引される

三菱マテリアルによると、海外の金相場は貴金属特有の重量単位であるトロイオンスを使い、米ドル建てで取引されています。1トロイオンスは約31.1035グラムです。

国内の小売価格は、この米ドル価格を1グラムあたりの円建て価格に換算し、取扱会社の諸費用を加えたうえで消費税を上乗せして算出されます。

1.2 円安になると、ドル建て価格が同じでも円建ての金価格は上がる

換算の式は「ドル建て価格×為替レート÷31.1035」です。たとえばドル建て価格が1トロイオンス4000ドルのとき、1ドル=150円なら1グラムあたり約1万9290円、1ドル=160円なら約2万576円になります。

ドル建ての相場が変わらなくても、円安が進むと円建ての金価格は上がり、円高が進むと下がります。手元の金の評価額は、海外の相場と為替の両方の動きを受けることになります。

ドル建て価格と為替レートを変えたときの、円建ての金価格(1グラムあたり)の計算例1/3

ドル建て価格4000ドル・5000ドルと為替レート140円・150円・160円の組み合わせで計算した、1グラムあたりの円建て金価格の表

出所:三菱マテリアル「金投資 よくあるご質問」を参考にLIMO編集部作成

【1トロイオンス4000ドルの場合】

  • 1ドル=140円:1万8004円
  • 1ドル=150円:1万9290円
  • 1ドル=160円:2万576円

【1トロイオンス5000ドルの場合】

  • 1ドル=140円:2万2506円
  • 1ドル=150円:2万4113円
  • 1ドル=160円:2万5721円

ドル建て価格と為替レートは仮定の数字で、小数点以下は四捨五入しています。実際の店頭価格には、取扱会社の諸費用と消費税が加わります。

2. 金地金を1度に200万円超売ると、買取業者が税務署へ「支払調書」を提出する

金地金や金貨を売った代金が一定額を超えると、その取引の内容が買取業者から税務署へ報告されます。金地金等の支払調書の仕組みを、国税庁の案内で確認します。

2.1 支払調書の対象は2012年1月1日以降の、200万円を超える金地金等の売却

国税庁によると、「金地金等の譲渡の対価の支払調書」は、2012年(平成24年)1月1日以降、金地金等の売買を業として行う者が国内で金地金等を買い取り、200万円を超える対価を支払う場合に、税務署への提出が義務付けられたものです。

対象の「金地金等」は、金や白金(プラチナ)の地金と、金貨・白金貨です。支払調書には、売った人の住所・氏名・個人番号のほか、金地金等の種類、重量、数量、支払金額、支払確定年月日が記載され、支払確定日の翌月末日までに提出されます。

2.2 金地金等を売る人は、氏名・住所・個人番号を買取業者に告知する

所得税法第224条の6では、金地金等を売って代金を受け取る人は、氏名、住所、個人番号を買取業者に告知し、住民票の写しなどの確認書類を示すことが定められています。

三菱マテリアルは、1度に200万円を超える金・プラチナ・金貨を売却する場合に支払調書が税務署に提出されると案内しています。2016年1月以降は支払調書に個人番号も記載されるため、個人番号が記載された書類の提出を求めています。

2.3 支払調書は取引の報告で、税金がかかるかどうかは利益で決まる

支払調書は、売却の事実を税務署に知らせるための書類で、提出されたことによって税金がかかるわけではありません。

国税庁は、金地金等を売却して譲渡益が生じた場合は、原則として総合課税の譲渡所得として課税されると案内しています。

3. 現金で200万円を超える金の売買では「取引時確認」も行われる

支払調書とは別に、マネー・ローンダリング対策を定めた犯罪収益移転防止法にも、金の売買で200万円という基準があります。

3.1 宝石・貴金属等取扱事業者は、現金で200万円を超える売買で取引時確認をする

警察庁の犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)の資料によると、宝石・貴金属等取扱事業者が、代金の支払が現金で200万円を超える宝石・貴金属等の売買契約を結ぶときは、取引時確認が必要になります。

対象の貴金属は、金、白金、銀とこれらの合金です。宝石や、貴金属・宝石の製品の売買も含まれます。

3.2 取引時確認では、本人特定事項と取引の目的・職業が確認される

取引時確認では、氏名・住居・生年月日といった本人特定事項に加えて、取引を行う目的や職業が確認されます。

支払調書は売却代金の額で、取引時確認は現金で支払われる代金の額で対象になるかどうかが決まります。2つの制度の違いを図にまとめました。

金地金を売る代金が200万円を超えるときに関わる2つの制度2/3

金地金等の譲渡の対価の支払調書(所得税法)と取引時確認(犯罪収益移転防止法)の対象・提出や確認をする人・売る人がすることを並べた比較図

出所:国税庁「F1-42 金地金等の譲渡の対価の支払調書(同合計表)」、警察庁JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」を参考にLIMO編集部作成

金の円建て価格はドル建ての相場と為替レートで決まり、価格が上がるほど、同じ重さの金を売ったときの代金は大きくなります。1度の売却代金が200万円を超えると支払調書の対象になり、代金を現金で受け取るなら取引時確認も行われます。

売る前に、手元の金の重さに買取業者が公表している買取価格を掛けて代金の目安を出しておくと、個人番号や本人確認の書類を準備しやすくなります。

ここからは、元銀行員として資産運用の相談を受けてきた立場から、純金積立で買った金の預け方の違いと、金の持ち方を選ぶときの考え方を見ていきます。

和田 直子

金は利息や配当を生まない資産なので、持っている間の保管の手間や費用、売るときの手続きまで含めて持ち方を選ぶことが大切です。売却代金が200万円を超えそうなときは、個人番号が分かる書類と本人確認書類を先にそろえておくと手続きが進めやすくなります。