障害者手帳を持ちながら働いている方や、これから就職や転職を考えている方にとって、最も気になるのは「実際にどれくらいの賃金を受け取れるのか」という現実的なお金の問題ではないでしょうか。2026年(令和8年)7月1日には、民間企業における障害者の法定雇用率(企業が従業員のうち障害者を雇わなければならないと定められた割合)が2.5パーセントから2.7パーセントへと引き上げられ、企業の雇用枠が拡大するなどの大きな動きがありました。
筆者はファイナンシャルプランナーとしてこれまで多くの家計相談をお受けしてきましたが、「働き始めたいけれど、いくら稼げるのか不安」「体調を崩さないペースで働いた場合、生活費は足りるのだろうか」という切実なお悩みを本当によく耳にします。最初から無理をしてフルタイムを目指すのではなく、ご自身の状況と家計のバランスを見極めることが長く働き続けるための鍵となります。
この記事では、厚生労働省の調査結果をもとに、障害の種類別の平均賃金と労働時間による違いをわかりやすく解説します。記事後半では、2026年7月から変わった企業側のルールの見直し内容や、実際に働き方を決めるときに確認しておきたい3つの実用的なポイントについても整理します。
1. 【2023年度調査】障がいの種類別・平均賃金は月13万円から23万5000円
障害者雇用実態調査は、民間の事業所で働く障害者の賃金や労働時間を把握するための調査です。令和5年6月に、常用労働者5人以上を雇う民営事業所から無作為に選んだ約9400事業所を対象に行われ、6406事業所が回答しました。
賃金は令和5年5月の1か月分で、超過勤務手当を含む額です。結果は令和6年3月27日に公表されました。
1.1 障害の種類別の平均賃金は月13万円から23万5000円
障害の種類別に、令和5年度と前回の平成30年度の平均賃金を並べました。
令和5年5月の平均賃金は、身体障害者が23万5000円、精神障害者が14万9000円、知的障害者が13万7000円、発達障害者が13万円でした1/2
出所:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」をもとにLIMO編集部作成
【令和5年度調査(令和5年5月)】
- 身体障害者:23万5000円
- 知的障害者:13万7000円
- 精神障害者:14万9000円
- 発達障害者:13万円
【平成30年度調査】
- 身体障害者:21万5000円
- 知的障害者:11万7000円
- 精神障害者:12万5000円
- 発達障害者:12万7000円
1.2 平均賃金は前回の平成30年度調査からすべての障害の種類で上がった
前回調査と比べると、身体障害者と知的障害者はそれぞれ2万円、精神障害者は2万4000円、発達障害者は3000円上がりました。
超過勤務手当を除いた所定内給与額で見ると、身体障害者は22万3000円、知的障害者は13万3000円、精神障害者は14万6000円、発達障害者は12万8000円です。
1.3 精神障害者の92.7%は精神障害者保健福祉手帳で確認されている
この調査で、事業所が精神障害者であることを精神障害者保健福祉手帳で確認していた割合は92.7%でした。医師の診断などで確認していた人は6.9%です。
発達障害者についても、81.7%が精神障害者保健福祉手帳で確認されていました。雇用されている人の多くが、障害者手帳を持って働いていることが分かります。
2. 障害者手帳を持つ人などの平均賃金、週30時間以上なら精神障害者で月19万3000円
障がいの種類による平均賃金の差には、週の労働時間の違いも影響しています。障害者雇用実態調査では、週所定労働時間別の平均賃金も集計されています。
2.1 週所定労働時間別の平均賃金、週30時間以上と週20時間以上30時間未満の差は身体障害者で月10万6000円
障がいの種類ごとに、週所定労働時間別の平均賃金を並べました。
【身体障害者】
- 週30時間以上:26万8000円
- 週20時間以上30時間未満:16万2000円
- 週10時間以上20時間未満:10万7000円
- 週10時間未満:6万7000円
【知的障害者】
- 週30時間以上:15万7000円
- 週20時間以上30時間未満:11万1000円
- 週10時間以上20時間未満:7万9000円
- 週10時間未満:4万3000円
【精神障害者】
- 週30時間以上:19万3000円
- 週20時間以上30時間未満:12万1000円
- 週10時間以上20時間未満:7万1000円
- 週10時間未満:1万6000円
【発達障害者】
- 週30時間以上:15万5000円
- 週20時間以上30時間未満:10万7000円
- 週10時間以上20時間未満:6万6000円
- 週10時間未満:2万1000円
週30時間以上と週20時間以上30時間未満の差は、身体障害者で10万6000円、精神障害者で7万2000円、知的障害者で4万6000円、発達障害者で4万8000円でした。
2.2 週30時間以上で働く人の割合は、身体障害者75.1%、精神障害者56.2%
週所定労働時間が30時間以上の人の割合は、身体障害者が75.1%、知的障害者が64.2%、精神障害者が56.2%、発達障害者が60.7%でした。
週20時間以上30時間未満で働く人は、知的障害者で29.6%、精神障害者で29.3%、発達障害者で30.0%を占めます。身体障害者は15.6%です。
2.3 正社員の割合は身体障害者59.3%、知的障害者20.3%
雇用形態を見ると、正社員の割合は身体障害者が59.3%、知的障害者が20.3%、精神障害者が32.7%、発達障害者が36.6%でした。
賃金の支払い方も違い、時給制の割合は身体障害者で27.3%、知的障害者では72.5%です。
障害者雇用実態調査では、身体障害者の平均賃金は月23万5000円、週30時間以上で働く精神障害者は月19万3000円でした。同じ障がいの種類でも、週の労働時間によって月の賃金は大きく変わります。
自分の働き方に近い数字は、週所定労働時間の区分で確かめられます。週の所定労働時間は、雇用契約書や労働条件通知書に書かれています。
ここからは、2026年7月に引き上げられた障がい者の法定雇用率と企業の雇用の数え方、ファイナンシャル・プランナーとして家計相談をお受けしてきた立場から、働き方を決めるときに確かめたいことをお伝えします。
週の労働時間が10時間変わるだけで、月の賃金は数万円単位で動きます。体調と相談しながら働く時間を決めるときは、手取りで毎月いくら入るかを家計の固定費と並べてみると、無理のない働き方を考えやすくなります。
