精神障がいは、身体的な障がいと比べて外見からは分かりにくく、周囲には見えにくい困難を抱えながら、日常生活や社会生活を送っている方もいます。精神障害者保健福祉手帳は、そうした方の自立や社会参加を支える制度のひとつです。

厚生労働省によると、精神障害者保健福祉手帳の所持者は2024年度末で154万7433人となり、1年間で10万9340人増えました。手帳を持つ方には、税負担の軽減や交通・施設利用に関する支援などが設けられています。

この記事では、手帳の所持者数や1級・2級・3級の目安、申請・更新の流れを確認します。そのうえで、日常生活や社会生活の負担を軽減するために設けられている支援について、東京都の制度を例に整理します。記事後半では、ハローワークを通じた障がいがある方の就職状況も見ていきます。東京都では手帳の等級を3段階とし、更新は有効期限の3か月前から申請できます。

1. 【精神障害者保健福祉手帳】所持者「154万7433人」5年連続で増加

障害者手帳には、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。このうち精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患によって長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある方が対象です。

1.1 2024年度末は154万7433人、1年で10万9340人の増加

厚生労働省の「令和6(2024)年度衛生行政報告例」によると、2024年度末時点の精神障害者保健福祉手帳の所持者数(有効期限切れを除く)は154万7433人でした。前年度より10万9340人、率にして7.6%の増加です。

2020年度末の118万269人から、5年連続で増えています。人口10万人あたりでみても、2020年度の935.6人から2024年度は1249.9人になりました。

精神障害者保健福祉手帳の所持者数(有効期限切れを除く)の推移です。1/8

精神障害者保健福祉手帳の所持者数の推移

出所:厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」をもとにLIMO編集部作成

1.2 等級別では2級が89万7292人で最多。3級は10.0%増

等級別にみると、最も多いのは2級の89万7292人で、全体の半数以上を占めます。3級は51万735人、1級は13万9406人でした。

前年度からの伸びが最も大きいのは3級で、10.0%増えています。2級は7.2%増、1級は1.9%増でした。

2024年度末の等級別の所持者数と、前年度からの増加率です。2/8

精神障害者保健福祉手帳の等級別の所持者数

出所:厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」をもとにLIMO編集部作成

2. 【精神障害者保健福祉手帳】「1級・2級・3級」はどう違う?手帳の有効期間は2年間

手帳の等級や手続きの流れを、東京都福祉局の案内をもとに確認します。

2.1 東京都が示す1級から3級の目安

等級は、申請時の診断書などに基づいて審査され、決定されます。東京都は、それぞれの等級を次のように示しています。

  • 1級:日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度
  • 2級:日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度
  • 3級:日常生活又は社会生活が制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度

2.2 申請から受け取りまで、紙形式は2か月程度

東京都では、特別区は保健所・保健センターなど、市町村は市役所・町村役場の障害者福祉主管課などが申請の窓口です。申請には、障害者手帳申請書、診断書、本人の写真などが必要です。

診断書は、精神障がいにかかる初診日から6か月を経過した日以後に作成され、申請日から3か月以内のものが求められます。審査があるため、申請から受け取りまで紙形式で2か月程度、カード形式では2か月半程度かかります。

2.3 有効期間は2年。更新を知らせる通知サービスも

手帳の有効期間は、申請を受理した日から2年間(2年後の月末まで)です。更新を希望する場合は、有効期限の3か月前から申請できます。更新の際は、提出書類に基づいて改めて等級の審査が行われます。

東京都では、更新手続きの開始1週間前に、LINE・SMS・書面で知らせる通知サービスも用意されています。

東京都の精神障害者保健福祉手帳の主な手続きです。3/8

東京都の精神障害者保健福祉手帳の手続き

出所:東京都福祉局「精神障害者保健福祉手帳」をもとにLIMO編集部作成

3. 【精神障害者保健福祉手帳】所持することで受けられる「優遇制度」東京都の事例で確認

東京都では、都内に住み手帳を持つ方を対象に、交通や施設の利用で受けられる優遇があります。

3.1 都営交通乗車証で都営交通が無料に

東京都は、都内在住の手帳の所持者に「東京都精神障害者都営交通乗車証」を発行しています。有効期間は発行日から2年間です。特別区では、都電、都営バス、都営地下鉄、日暮里・舎人ライナーの定期券発行所が申請・発行の窓口です。

3.2 路線バスは都内区間の運賃が半額

東京都が発行した、写真が貼られた手帳を持つ本人は、都内を走る一般路線バスの都内区間で運賃が半額になります。東京都の例では、運賃210円が110円になります。高速バスや空港連絡バスなどは対象外です。

利用するときは、運賃を支払う際に、手帳の写真が貼られたページを開いて乗務員に見せます。他の道府県が交付した手帳や、写真が貼られていない手帳は対象になりません。

3.3 都立公園・都立施設は本人と付添者が無料

浜離宮恩賜庭園や恩賜上野動物園、東京都美術館などの都立公園・都立施設は、手帳の所持者と付添者が手帳を見せれば無料で利用できます。都立公園付設の有料駐車場も無料です。

また、「東京都障害者休養ホーム事業」では、全国の宿泊施設を利用するときに、年間2泊まで、1泊あたり本人は6490円、付添者は3250円を上限に実費が助成されます。

東京都で手帳を持つ方が受けられる、交通・施設関係の主な優遇です。4/8

東京都で手帳を持つ方が受けられる主な優遇

出所:東京都福祉局「精神障害者保健福祉手帳」をもとにLIMO編集部作成

一部の施設では有料となる場合があるため、利用する前に各施設に確認しておくと安心です。

4. 等級で変わる優遇、都営住宅の当せん確率は1・2級で7倍、NHK受信料は1級なら半額免除

東京都の優遇には、等級によって対象が変わるものもあります。

4.1 都営住宅の優遇抽せんは、1・2級で7倍、3級で5倍

都営住宅の5月と11月の募集(抽せん方式)では、一部の地区で優遇抽せん制度があり、一般世帯に比べて当せん確率が1・2級の方は7倍、3級の方は5倍になります(家族向のみ)。

すでに入居している1・2級の方で、所得が一定額以下の場合は、使用料の特別減額も受けられます。

4.2 1級だけが対象の制度も

1級の方が対象の制度には、駐車禁止規制からの除外措置があります。都内に住所があることが条件で、窓口は住所地を管轄する警察署です。

NHKの受信料は、1級の方が世帯主で受信契約者の場合に半額が免除されます。また、手帳を持つ方がいる世帯で、世帯全員が区市町村民税非課税の場合は、等級にかかわらず全額が免除されます。

このほか、生活保護を受けている方のうち、一定の要件を満たす1・2級の方は、障害者加算がつくことがあります。

東京都の案内のうち、等級によって対象が変わる主な制度です。5/8

東京都の優遇のうち等級で対象が変わる主な制度

出所:東京都福祉局「精神障害者保健福祉手帳」をもとにLIMO編集部作成

4.3 税金の障害者控除は、1級なら「特別障害者」として40万円

手帳を持つ本人や、控除対象の配偶者・扶養親族が手帳を持つ場合は、所得税と住民税で障害者控除を受けられます。

国税庁によると、精神障害者保健福祉手帳の障害等級が1級の方は「特別障害者」、2級・3級の方は「障害者」に該当します。所得税の控除額は、障害者が27万円、特別障害者が40万円、同居している特別障害者を扶養する場合は75万円です。

住民税の控除額は、障害者が26万円、特別障害者が30万円、同居の特別障害者が53万円です(横浜市の資料による)。会社員は年末調整、それ以外の方は確定申告で申告します。

精神障害者保健福祉手帳の等級と、障害者控除の額です。6/8

精神障害者保健福祉手帳と障害者控除の額

出所:国税庁「No.1160 障害者控除」、横浜市「税の知識(令和8年度版)」をもとにLIMO編集部作成

ここで紹介したのは東京都の例です。区市町村や民間の事業者が独自の優遇を設けている場合もあるため、お住まいの自治体の窓口やホームページで確かめてみてください。