1. 生成AI時代の就職・転職活動で起きている「異変」とは?

「〇〇社の平均年収や残業時間、社風について教えて」

生成AIツールの普及に伴い、就職・転職活動における企業リサーチの方法は劇的に変化しました。従来の口コミサイトや検索エンジンに代わり、AIに企業の評価や評判をまとめてもらう人が急増しています。

しかし、その手軽さの裏で、求職者が自らチャンスを逃してしまう「罠」が潜んでいることをご存じでしょうか。

株式会社GIGが実施した「AI時代の採用コミュニケーション実態調査2026(GIG)」(調査対象:直近半年以内に就活・転職活動をした新卒118名・中途118名、有効回答数236名)によると、AIを用いて企業を調べた中途求職者のうち、なんと52.8%が「AIの回答をもとに応募を見送った」と回答しています。新卒の22.7%と比較しても、中途採用においてAIが強いスクリーニング(絞り込み)ツールとして機能している実態が明らかになりました。

ですが、長年人事や採用の現場に携わってきた筆者の視点から言わせてもらうと、「AIの回答だけを信じて応募をやめるのは非常に危険で、もったいない」ということです。

なぜAIの情報を鵜呑みにしてはいけないのか、採用現場の実態と合わせて詳しく解説します。

2. 中途の94.4%が経験!AI情報と「実際の企業姿」の大きなギャップ

同調査では、AIで得た企業情報と実際の採用情報や面談内容との間にギャップ(ズレ)があったかどうかも尋ねています。その結果、新卒では50.0%が「違っていた経験はない」と答えたのに対し、中途求職者では94.4%が何らかの「相違」を経験したと回答しました。

具体的にどのような点で情報のズレが生じていたのでしょうか。同調査による上位の項目は以下の通りです。

  • 福利厚生(中途:44.4%)

  • 年収・給与(新卒:22.7%/中途:41.7%)

  • 社風・雰囲気(新卒:18.2%/中途:41.7%)

なぜこれほど大きなギャップが生まれてしまうのでしょうか。原因は、生成AI特有の「ハルシネーション(事実とは異なる誤った情報を堂々と出力する現象)」や、インターネット上の古い口コミ・噂レベルの情報をAIが学習して出力してしまう点にあります。

特に中途採用の場合、職種や役職、中途入社年数によって給与や福利厚生の適用範囲が細かく分かれていることが少なくありません。AIはそうした複雑な前提条件を無視し、過去の一般的な情報やネット上の断片的な口コミを一括りにして回答してしまう傾向があります。

また、「社風」や「職場の雰囲気」といった定性的な情報は、部署や拠点、あるいは直近の組織変更によって大きく変化します。AIが提示した古い情報を真に受けて「この会社は残業が多そうだ」「社風が合わなさそうだ」と判断し、応募を諦めてしまうのは、求職者にとって大きな機会損失でしかありません。

柳 奈央子
また、「社風」や「職場の雰囲気」といった定性的な情報は、部署や拠点、あるいは直近の組織変更によって大きく変化します。AIが提示した古い情報を真に受けて「この会社は残業が多そうだ」「社風が合わなさそうだ」と判断し、応募を諦めてしまうのは、求職者にとって大きな機会損失でしかありません。