収入が上がっても、手取りはそれほど増えないと感じている方もいるのではないでしょうか。
厚生労働省が2025年12月23日に公表した「令和5年 所得再分配調査」によると、世帯の当初所得が550万円以上の階級では、税金と社会保険料の負担が社会保障給付を上回っていました。
この記事では、当初所得の階級別に、税金と社会保険料を差し引き、社会保障給付を足した「再分配所得」がどう変わるのかを確認します。12月の冬のボーナスや年末調整を前に、世帯の手取りを考える材料にしてみてください。
1. 所得再分配調査でみると世帯の当初所得550万円が負担と給付の分かれ目
所得再分配調査は、税金や社会保険料の負担と、年金・医療・介護などの社会保障給付が、世帯の所得をどう変えているかを調べる厚生労働省の統計です。令和5年調査は、2022年1〜12月の所得を対象に3003世帯を集計しています。
1.1 再分配係数は当初所得に対する再分配所得の増減の割合
調査では、税金と社会保険料を差し引く前、社会保障給付を受け取る前の所得を「当初所得」と呼びます。そこから税金と社会保険料を引き、社会保障給付を足した所得が「再分配所得」で、再分配所得が当初所得より何%増えたか(減ったか)を示すのが「再分配係数」です。
再分配係数がプラスなら受け取った給付のほうが多く、マイナスなら負担のほうが多いということになります。全世帯の平均では、当初所得384.8万円に対して再分配所得は467.7万円で、再分配係数はプラス21.6%でした。
1.2 当初所得500〜550万円はプラス2.2%、550〜600万円でマイナス1.8%に変わる
当初所得の階級別にみると、500〜550万円の世帯の再分配係数はプラス2.2%でしたが、550〜600万円の世帯ではマイナス1.8%に変わりました。これより当初所得の高い階級は、すべてマイナスです。
当初所得1000万円以上の世帯は、当初所得1425.4万円に対して再分配所得が1169.4万円で、再分配係数はマイナス18.0%でした。
2. 当初所得階級別の再分配所得一覧、当初所得の差ほど再分配所得の差は開かない
当初所得の階級ごとに、再分配所得と再分配係数を一覧にしました。
【当初所得階級別 当初所得→再分配所得(再分配係数)】
- 50万円未満:6.3万円→249.6万円(プラス3848.6%)
- 50〜100万円:74.1万円→269.8万円(プラス264.0%)
- 100〜150万円:120.1万円→309.7万円(プラス157.9%)
- 150〜200万円:176.1万円→348.5万円(プラス97.9%)
- 200〜250万円:222.6万円→366.4万円(プラス64.6%)
- 250〜300万円:272.0万円→362.5万円(プラス33.3%)
- 300〜350万円:323.3万円→383.4万円(プラス18.6%)
- 350〜400万円:373.0万円→418.7万円(プラス12.3%)
- 400〜450万円:421.6万円→429.8万円(プラス1.9%)
- 450〜500万円:471.9万円→522.1万円(プラス10.6%)
- 500〜550万円:522.2万円→533.8万円(プラス2.2%)
- 550〜600万円:573.3万円→563.1万円(マイナス1.8%)
- 600〜650万円:621.1万円→571.8万円(マイナス7.9%)
- 650〜700万円:675.6万円→649.0万円(マイナス3.9%)
- 700〜750万円:724.7万円→638.6万円(マイナス11.9%)
- 750〜800万円:775.0万円→704.9万円(マイナス9.0%)
- 800〜850万円:825.7万円→717.2万円(マイナス13.1%)
- 850〜900万円:875.2万円→742.8万円(マイナス15.1%)
- 900〜950万円:921.0万円→806.2万円(マイナス12.5%)
- 950〜1000万円:975.7万円→810.3万円(マイナス16.9%)
- 1000万円以上:1425.4万円→1169.4万円(マイナス18.0%)
2.1 当初所得の差が149.6万円でも再分配所得の差は67.3万円
当初所得250〜300万円の世帯の再分配所得は362.5万円、400〜450万円の世帯は429.8万円でした。当初所得の平均では149.6万円の差がありますが、再分配所得の差は67.3万円にとどまります。
当初所得が低い階級ほど年金などの社会保障給付の受け取りが多く、高い階級ほど税金と社会保険料の負担が大きいため、再分配所得では差が縮まる形です。
3. 所得再分配調査の「当初所得」は世帯の合計で、個人の年収とは違う
この調査の数字をご自身の家計と比べるときは、当初所得が何を指しているかに注意が必要です。
3.1 当初所得には企業年金や仕送りも含まれる
当初所得は、雇用者所得や事業所得、財産所得などに、企業年金や仕送り、生命保険金などの私的給付を加えた額です。個人の年収ではなく、世帯の全員の所得を合わせた金額にあたります。
3.2 当初所得が高い階級ほど世帯人員が多い
1世帯あたりの世帯人員は、当初所得50万円未満の階級で1.51人、1000万円以上の階級で3.19人でした。働いている人の数(有業人員)も、それぞれ0.19人と2.09人で差があります。
調査では、世帯人員の違いをならした「等価所得」でも集計しています。世帯員1人あたりの等価所得でみても、等価当初所得が350万円以上の階級では再分配係数がマイナスでした。
令和5年所得再分配調査では、世帯の当初所得550万円以上の階級で、税金と社会保険料の負担が社会保障給付を上回りました。当初所得1000万円以上の世帯の再分配係数はマイナス18.0%です。
ご自身の世帯の所得税と社会保険料の額は、勤め先から受け取る源泉徴収票の「源泉徴収税額」と「社会保険料等の金額」の欄で確かめられます。共働きの場合は、2人分を合わせて見ておくと世帯の負担がつかめます。
ここからは、所得階級別の税金・社会保険料・社会保障給付の内訳と、12月の年末調整で見直せる控除を確認していきます。
収入が増えた分がそのまま手取りになるわけではないので、額面だけでなく、税金と社会保険料を差し引いた後の金額で世帯の家計を考えておきたいです。年末調整の書類を出す前に、使える控除が漏れていないか一度見直してみてはいかがでしょうか。
