2026年9月16日、国民生活センターより「2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況」が公表されました。さらにその前日の9月15日には、総務省統計局から高齢者の人口に関する最新データが発表され、日本の高齢化の現状と高齢者を取り巻く環境の変化が改めて浮き彫りになっています。

長引く物価高騰(インフレーション)や年金受給額の実質的な目減りが懸念される昨今、高齢者の資産防衛は社会全体の重要課題です。

私もFP(ファイナンシャルプランナー)として日々ご家庭の家計相談を伺いますが、ご両親が知らぬ間に不要な契約を結んでしまい、生活の基盤となる大切な老後資金を大きく目減りさせてしまうケースを数多く目の当たりにしてきました。「業者が家の設備を点検してくれた」など、離れて暮らす親との何気ない会話の中に、実は悪質な消費者トラブルのサインが隠れている場合も少なくありません。

本記事では、最新の統計データに基づき、親世代のリアルな暮らしの変化と、家族が実家で気にかけたい3つの防犯ポイントについて詳しく解説します。

1. 長寿化の日本、75歳以上「2168万人」←対前年度プラス43万人!

総務省統計局が発表した最新のデータによると、2026年9月15日現在の65歳以上人口は3624万人となり、日本の総人口の29.6%を占めています。

65歳以上人口及び割合の推移(1950年~2050年)1/3

65歳以上人口及び割合の推移(1950年~2050年)

出所:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」

なかでも75歳以上の人口は2168万人と、前年から43万人も増加しました。医療技術の進歩などによって長寿化が進む一方で、高齢者の働き方にも大きな変化が見られます。2025年のデータでは、70歳から74歳の36.2%、75歳以上でも12.6%の方が何らかの形で就業しています。

「親は70代だけれど、まだ元気に仕事をしている」というご家庭も多いことでしょう。一定の労働収入があることは、公的年金だけでは不足しがちな家計の安定に直結します。現代の高齢者が働く理由は経済面にとどまらず、社会とのつながりや生きがいを求めるなど、非常に多様化しています。

しかし、日中は仕事などで不在がちになるため、買い物の利便性を求めてインターネットを使った通信販売(ネットショッピング)を利用する機会が増加する傾向にあります。

一方で、年齢を重ねて仕事を完全に退き、自宅で過ごす時間が長くなると、また違った形の社会との接点が生まれます。行動範囲が狭まることで、自宅を訪ねてくる人や電話でのコミュニケーションへの依存度が高まるのです。親のライフスタイルが変化するにつれて、日常に潜むお金のトラブルのリスクも形を変えていくことを、私たち子世代はしっかりと理解しておく必要があります。

2. 【年代別】なぜ85歳以上で「訪問販売」のトラブル相談が急増するのか

国民生活センターの集計データによると、年齢が上がるにつれて、消費生活相談における「販売形態の入り口(トラブルのきっかけ)」が大きく変わっていくことがわかります。

契約当事者が 65 歳以上の年齢区分別商品・役務等別相談件数(2025 年度)〔上位 10 位〕2/3

契約当事者が 65 歳以上の年齢区分別商品・役務等別相談件数(2025 年度)〔上位 10 位〕

出所:独立行政法人国民生活センター「2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況」

各年齢層における通信販売と訪問販売の相談割合は以下の通りです。

  • 65歳から69歳:通信販売48.4%、訪問販売6.3%
  • 75歳から79歳:通信販売35.2%、訪問販売10.3%
  • 85歳以上:通信販売18.6%、訪問販売21.5%

60歳代から70歳代前半にかけては、スマートフォンやパソコンを利用したネット通販の定期購入トラブルなどが高い割合を占めています。ところが、85歳以上になると訪問販売の割合が通信販売を上回るという逆転現象が起きます。国民生活センターの資料では、年齢が上がると身体的な理由などから外出の機会が減り、在宅時間が長くなることで、訪問による勧誘を受けやすくなることが一因と考えられると指摘されています。

くわえて、配偶者との死別や子どもの独立などで一人暮らしになった高齢者は、日々の会話相手が極端に少なくなる傾向があります。そのため、優しく親切に話しかけてくる訪問業者をつい家に上げ、お茶を出して話し込んでしまうケースも珍しくありません。

悪質な業者は、高齢者が抱える孤独感や健康への不安感に巧妙につけ込みます。「このままでは家が倒壊する」などと不安をあおり、数百万円単位の高額なリフォーム契約や、不要な健康器具の購入に至らせてしまうのです。一度失われた老後資金を年金生活の中で取り戻すことは極めて困難であり、家計に致命的なダメージを与えてしまいます。