2026年9月9日、厚生労働省は市町村の国民健康保険に関する最新のデータとなる「令和6年度の国民健康保険事業年報」を公表しました。

この年報には、日本全国の市町村における国民健康保険料(または国民健康保険税)が、1世帯当たり平均でいくら計算され、実際にいくら請求されているのかという具体的なデータが示されています。

私はこれまでファイナンシャルプランナーとして数多くの家計相談をお受けしてきましたが、「会社員から独立したら保険料が高くて驚いた」「毎年届く通知書の金額がどう決まっているのかわからない」というお悩みを本当によく耳にします。日本の公的医療保険制度は素晴らしい仕組みですが、その計算方法は複雑で、専門用語も多いため、初心者にとってはハードルが高く感じてしまうものです。

この記事では、最新のデータをもとに1世帯当たりの平均額やその内訳をわかりやすく紐解くとともに、令和8年度から予定されている制度の大きな変更点、そして実際に通知書が届いたときに確認したい3つの実用的なポイントを解説します。

1. 【国民健康保険料】1世帯当たりの金額には「約5.6万円」の開きあり!

まずは、最新の事業年報から見えてくる「計算上の金額」と「実際に請求される金額」のギャップについて見ていきましょう。ここには、国民健康保険ならではの複雑な仕組みが隠されています。

1.1 本来の算定額19万9251円と、実際の調定額14万2545円

医療給付費分と後期高齢者支援金分を合わせた保険料(税)算定額は、1世帯当たり19万9251円でした。集計の対象は保険者数1716、世帯数は年度平均で1577万9782世帯です。

これに対して、実際に課された保険料(税)調定額は1世帯当たり14万2545円でした。算定額計に対する割合では71.5%にあたります。

計算上の額と実際に課された額のあいだには、1世帯当たりで5万6706円の開きがあることになります。

1.2 所得割額・均等割額・平等割額が算定額に占める割合

算定額の内訳は、所得割額が1世帯当たり11万6418円で58.4%、均等割額が5万9807円で30.0%、平等割額が2万2620円で11.4%でした。

資産割額は404円で0.2%にとどまります。資産割を採用している保険者が限られているためです。

均等割額を被保険者1人当たりに直すと4万1493円で、調定額を1人当たりに直すと9万8895円になります。

令和6年度の市町村の国民健康保険料(税)1世帯当たりの算定額から調定額までの内訳1/2

令和6年度の市町村の国民健康保険で1世帯当たりの保険料算定額19万9251円から、軽減額や賦課限度額を超える額を経て調定額14万2545円に至るまでの区分ごとの額と割合を並べた表

出所:厚生労働省「国民健康保険事業年報 令和6年度」をもとにLIMO編集部作成

図に入れた1世帯当たりの額は次のとおりです。

【算定額とその内訳】

  • 保険料(税)算定額(計):19万9251円
  • 所得割額:11万6418円
  • 資産割額:404円
  • 均等割額:5万9807円
  • 平等割額:2万2620円

【算定額から差し引かれるもの】

  • 軽減額(低所得者分):2万5244円
  • 軽減額(未就学児分):391円
  • 軽減額(産前産後分):50円
  • 災害等による減免額:171円
  • その他の減免額:1263円
  • 賦課限度額を超える額:2万3810円

【実際に課された額】

  • 保険料(税)調定額:14万2545円

2. 【国民健康保険料】算定額から差し引かれている2つの大きな要素

本来の計算額である約19万9000円から、実際の請求額である約14万2000円へと下がる背景には、主に2つの大きなマイナス要素が働いています。

2.1 低所得者分の軽減額は約2万5000円(全世帯平均)

軽減額(低所得者分)は1世帯当たり2万5244円で、算定額計の12.7%にあたります。

これは世帯の所得が一定の基準を下回る場合に、均等割額と平等割額を減額する仕組みによる分です。軽減の対象になる世帯だけを取り出した額ではなく、全世帯で割った平均であることに注意が必要です。

2.2 上限(賦課限度額)を超える額は約2万3000円

賦課限度額を超える額は1世帯当たり2万3810円で、算定額計の11.9%でした。

保険料には区分ごとに上限が設けられているため、計算上の額が上限を超えた世帯ではその超過分が課されません。低所得者分の軽減額とほぼ同じ規模の額が、上限側でも差し引かれている形です。

2.3 未就学児分と産前産後分の軽減額も集計されている

軽減額(未就学児分)は1世帯当たり391円、軽減額(産前産後分)は50円でした。

対象となる方が世帯にいる場合に適用される軽減なので、全世帯で割った平均では小さな額になります。ほかに災害等による減免額が171円、その他の減免額が1263円集計されています。

3. 【国民健康保険料】令和8年度からどう変わる?4つの区分と上限113万円

ここまで見てきた令和6年度の数字は3つの区分で構成されていますが、区分の数は令和8年度から変わります。

賦課限度額もあわせて動いているため、年度をそろえて見ておきたいところです。

3.1 医療給付費分・後期高齢者支援金等分・介護納付金分の3区分

令和7年度までの国民健康保険料は、医療給付費分にあたる基礎賦課額、後期高齢者支援金等賦課額、介護納付金賦課額の3つで構成されていました。

賦課限度額は令和6年度が基礎賦課額65万円・後期高齢者支援金等賦課額24万円・介護納付金賦課額17万円の合計106万円、令和7年度が66万円・26万円・17万円の合計109万円です。

令和8年度は基礎賦課額が67万円に引き上げられ、3区分の合計は110万円になります。

3.2 新設された子ども・子育て支援金分

令和8年度からは、上の3区分とは別に子ども・子育て支援金分が加わって4区分になります。

国民健康保険法施行令では、子ども・子育て支援納付金賦課額の限度額は3万円と定められています。3区分の110万円と合わせると、1世帯にかかる上限は113万円です。

国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額の推移と令和8年度に加わる区分2/2

国民健康保険料の賦課限度額が令和6年度の合計106万円から令和7年度109万円、令和8年度110万円へ推移したことと、令和8年度から子ども・子育て支援納付金賦課額3万円が加わることを示した表

出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」をもとにLIMO編集部作成

4. 【国民健康保険料】算定額と調定額は同じ時点の数字ではない

年報の1世帯当たりの額は集計の条件が決まっているため、その条件を押さえておくと読み違えを避けられます。

4.1 算定額は賦課期日現在、調定額は現年分

年報の注記では、保険料(税)算定額・軽減額・減免額・賦課限度額を超える額は賦課期日現在の額とされています。

一方、保険料(税)調定額は当該年度に賦課された現年分の額です。集計する時点が違うため、算定額から各項目を順に引いた額がそのまま調定額になるわけではありません。

賦課期日のあとに世帯の増減や所得の変更があれば、その分が調定額に反映されます。図の割合を足し合わせても100%にならないのはこのためです。

4.2 世帯数は3月から2月までの年度平均で計算されている

1世帯当たりの額を出すときの世帯数と被保険者数は、3月から2月までの年度平均が使われています。

年度末の時点だけで見た世帯数は1541万6529世帯で、年度平均の1577万9782世帯とは差があります。ほかの資料と突き合わせるときは、どちらの世帯数で割った額なのかを確かめておきます。

4.3 令和6年度の額は令和6年度の賦課限度額にもとづく

今回の年報は令和6年度の実績なので、賦課限度額を超える額も令和6年度の限度額である合計106万円をもとに集計されています。

令和8年度の限度額110万円と並べて差を計算すると、年度がずれた比較になります。限度額の引上げが超過分にどう効くかは、令和8年度の年報が出てから確かめる形になります。

5. 【国民健康保険料】賦課限度額に到達するのはどんな世帯か

賦課限度額を超える額が1世帯当たり2万3810円あるとはいえ、上限に到達する世帯そのものは多くありません。

5.1 令和8年度の限度額該当世帯の割合は1.43%の推計

厚生労働省が令和7年11月の社会保障審議会医療保険部会に示した資料では、令和8年度に引上げを行った場合の限度額該当世帯の割合は合計で1.43%と推計されています。

区分ごとに見ると基礎賦課分が1.71%、後期高齢者支援金等賦課分が1.35%、介護納付金賦課分が0.97%です。いずれも子ども・子育て支援納付金賦課分を除いた数値として示されています。

賦課限度額の引上げは、被用者保険のルールとのバランスを考慮し、超過世帯割合が将来的に1.5%に近づくよう段階的に行われるとされています。

5.2 医療分の限度額に達する収入の目安は約1170万円

同じ資料では、医療分の賦課限度額に達する収入の目安も示されています。令和8年度では給与収入が約1170万円、年金収入が約1170万円です。

これは旧ただし書方式・4方式を採用する保険者の令和5年度全国平均値を使い、給与収入または年金収入のある単身世帯で試算した数値とされています。3方式の場合は約1100万円、2方式の場合は約1170万円という試算も併記されています。

算定に使う料率は保険者ごとに決まるため、この目安は試算の条件のもとでの水準です。