令和6年における最新のデータとして、厚生労働省から後期高齢者医療制度の財政状況に関する報告や、令和7年を見据えた国民生活基礎調査など、シニア世代のお金と健康に関する重要な統計が相次いで公表されました。
私自身もファイナンシャルアドバイザーとして活動する中で、親が75歳を迎えたことをきっかけに、今後の通院費や介護費用について家族で真剣に話し合う機会がありました。親にはいつまでも元気でいてほしいと願う一方で、年齢とともに増える医療費が家計にどのような影響を与えるかは、どの家庭にとっても避けて通れない切実なテーマです。
この記事では、最新の一次データをもとに、日本の高齢者医療を根底から支える制度の現状と、私たちが知っておくべき年金生活のリアルについて、金融知識が少ない方にも分かりやすく解説していきます。
1. 後期高齢者医療制度の加入者「2039万人」へ拡大←前年から50万人の増加!
超高齢社会が進む日本において、原則として75歳以上の方(一定の障害がある場合は65歳以上の方)を対象とする「後期高齢者医療制度」は、誰もが安心して必要な医療を受けられるための大切なセーフティネットとして機能しています。
令和6年度の厚生労働省のデータによると、この制度の対象となる被保険者(保険に加入している人)の数は2039万人にのぼり、前年度から一気に50万人も増加しました。日本の総人口に占める高齢者の割合が年々高まっていることを如実に示しており、制度の規模は拡大の一途をたどっています。多くの方がこの制度に加入し、日々の健康維持や持病の治療、いざという時の入院などにおいて、この保険制度を利用していることが分かります。
2. 収支規模は18兆円超え!財源の内訳と支え合いの仕組み
高齢者の健康を守る制度を安定して運営していくためには、当然ながら巨大な財源が必要となります。令和6年度の単年度収入額は18兆3498億円(前年度比7135億円増)、単年度支出額は18兆3453億円(前年度比6585億円増)となっており、収入と支出の双方が膨らみ続けている状況です。
支出の大部分を占めているのが、実際に高齢者の方々が医療機関を受診した際の「保険給付費(医療費の自己負担分を除いた給付)」であり、その額は17兆9900億円に達しています。この莫大な支出をどのように賄っているのか、主な収入の内訳を見てみましょう。
- 後期高齢者交付金:7兆2246億円(現役世代からの支援金)
- 国庫支出金:5兆9267億円(国や自治体からの公費・税金)
- 保険料:1兆7394億円(高齢者ご自身が納める保険料)
このように、高齢者ご自身が負担する保険料だけでなく、若い現役世代からの支援金や、国と自治体の税金がバランスよく組み合わされることで、日本の医療制度は成り立っています。なお、単年度の精算後収支は350億円の赤字となりましたが、前年度からの繰越金などを加味した全体の収支差引合計額では3714億円の黒字を確保しており、制度が直ちに揺らぐわけではありません。とはいえ、医療費の増加傾向は今後も続くため、中長期的な持続可能性については社会全体で考えていく必要があります。
3. 全国平均99.47%の保険料収納率が示すものと地域差
制度を支える重要な基盤として欠かせないのが、加入者一人ひとりが毎月納める保険料です。令和6年度の全国平均の保険料収納率(納付されるべき保険料が実際に納められた割合)は99.47%と、極めて高い水準を保っています。前年度から0.04ポイントのわずかな低下は見られたものの、ほぼすべての方がしっかりと保険料を納付し、制度を支え合っていることが分かります。
一方で、これを都道府県広域連合(各都道府県で制度を運営する組織)ごとに詳しく見てみると、わずかながら地域差が存在していることが確認できます。最高値を記録した地域では99.80%に達しているのに対し、最も低い地域では99.15%となっています。こうした違いは、各自治体におけるサポート体制の充実度や、地域ごとの経済状況の違いを反映していると考えられます。今後も制度を安定的に運営していくためには、お住まいの地域に関わらず、誰もが無理なく保険料を納付できるような配慮や、地域間の平準化に向けた取り組みが引き続き求められます。
4. 高齢者世帯のリアルな家計簿。平均所得336万1000円と通院事情
75歳以上になると、加齢に伴い健康上の悩みが顕著になる方が多くいらっしゃいます。令和7年の国民生活基礎調査によれば、65歳以上の通院者率(人口1000人に対する割合)は678.6となっており、実に約7割の方が何らかの病気やケガで医療機関に通っています。主な通院理由としては高血圧症、眼の病気、脂質異常症、腰痛症などが挙げられ、多くの方にとって通院や治療が日常の一部となっています。
4.1 高齢者世帯の家計状況
一方で、高齢者世帯の家計状況はどうなっているのでしょうか。同調査によると、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は336万1000円です。公的年金を受給している世帯のうち、総所得の100%を年金に頼っている世帯は41.3%に上ります。また、現在の生活について「苦しい(大変苦しい・やや苦しいの合計)」と答えた割合は52.1%と半数を超えています。多くの方が、限られた年金を主な収入源として、日々の生活費や医療費を工夫しながらやりくりされている様子がうかがえます。
だからこそ、医療費の窓口負担を原則1割(一定の所得がある方は2割または3割)に抑えてくれる後期高齢者医療制度は、高齢者の健やかな暮らしを守るための非常に大きな支えとなっているのです。