終活という言葉は広く知られるようになりました。認知度は96.9%にのぼります。ところが、実際にエンディングノートを書き上げている人は多くありません。しかも、書けていない割合は高齢になるほど高くなります。

本記事では、厚生年金の受給額分布と、年金だけで暮らせているかというシニア世代の実感を確認したうえで、平均寿命・認知症の推計値と、終活とエンディングノートの実態を年代別に見ていきます。

松本 真奈

ご相談の場で「そのうちやります」と言われることが多いのが、この分野です。ただ、書くべきことは年齢とともに増えますし、体力も気力も必要になります。先送りするほど難しくなるという点で、資産の準備とよく似ています。数字を見ながら、いつ始めるべきかを考えていきましょう。

ご自身だけでなく、周りの方のためにも早めに視野に入れた資産管理ができると安心ですね。

1. 厚生年金は「10万円未満」19.0%が「20万円以上」18.8%を上回る

厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を詳しく見ると、意外な事実が浮かび上がります。生活費の目安となる「20万円以上」を受給する人よりも、実は「10万円未満」の人の方が多いのが実情です。

※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)1/4

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

1.1 受給額分布の対比(厚生年金・男女全体)

  • 月額10万円未満:19.0%(約5.3人に1人)
  • 月額20万円以上:18.8%(約5.4人に1人)

わずかな差ではありますが、高額受給者の割合を「10万円に届かない層」が上回っています。
国民年金のみの受給者を含めて全体を俯瞰すれば、この「10万円未満」の割合はさらに圧倒的なものになると推測されます。

平均額が15万円台であっても、実際には受給者間の格差が大きく、個人単位で見れば、8割以上の人が「月20万円未満」の受給額となっており、自助努力での備えが重要視される背景となっています。

年金生活に入ってから「思ったより少なかった」と慌てないよう、現役時代から自身の受給予定額をシビアに見積もっておく必要があるでしょう。公的年金だけに頼り切るのではなく、早い段階からiDeCoやNISAなどを活用した「自分年金」作りを検討することが、老後のゆとりを左右する鍵となります。

2. 「年金だけでは日常生活費も難しい」60歳代の単身世帯では50.7%

受給額の分布は、あくまで振り込まれる金額の話です。では、実際に年金で暮らしている人は、その金額をどう感じているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」に、シニア世代の実感が表れています。

60歳代・70歳代世帯の生活実感2/4

家計の金融行動に関する世論調査

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

2.1 「さほど不自由なく暮らせる」は8~12%台にとどまる

「年金だけでさほど不自由なく暮らせる」と答えた人は、60歳代・70歳代のいずれでも、二人以上世帯・単身世帯を問わず8~12%台でした。年金だけで余裕をもって暮らせているという層は、ごく一部にとどまります。

2.2 単身世帯は60歳代50.7%、70歳代35.5%

「年金だけでは日常生活費程度も賄うのが難しい」と答えた割合は、二人以上世帯で26~33%台です。

これが単身世帯になると、60歳代で50.7%、70歳代でも35.5%にのぼります。世帯の人数が少ないほど、生活への不安が大きく出ている形です。

2.3 余裕がない理由の5割超が「物価上昇等」

年金生活に余裕がない理由として最も多く挙がったのは「物価上昇等」でした。

年代や世帯構成を問わず5割を超えており、これに「医療費の自己負担増」や「年金支給額の引き下げ」が続きます。

受け取る額が変わらなくても、支出が増えれば手元の余裕は削られます。年金額の見込みを確かめるのと同じくらい、その金額でいまの支出を賄えるのかを確かめておきたいところです。

3. 平均寿命は男性81.35年・女性87.33年。65歳以上の12.3%が認知症

厚生労働省が公表する「令和7年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.35年、女性が87.33年。前年と比較して男性は0.25年、女性は0.20年上回っており、長期的にも大きく伸びています

長い老後を豊かに過ごすには、資産形成に加え、公的年金や医療・介護リスクへの理解が重要です。長寿化の中で避けて通れないのが「認知症」への備えです。

3.1 認知症の現状、「シニアの約3人に1人」認知機能に何かしらのサインが現れている状態

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)4/4

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)

出所:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

65歳以上のシニア層3603万人を対象にした令和4年度(2022年度)の推計によると、65歳以上の高齢者における現状は以下の通りです。

  • 認知症: 約443万人(12.3%)
  • 軽度認知障害(MCI): 約559万人(15.5%)

認知症やその前段階とされるMCI(軽度認知障害)を含めると合計で約1002万人、およそ3人に1人が認知機能に関して何らかのサポートや注意が必要な状況にあると推計されています。認知症は今や身近な問題であり、MCI段階での対応が生活の質を左右します。

こうした背景から注目されているのが「終活」です。