10月以降、パートやアルバイトで働く人のお金の事情が大きく変わります。
1つは最低賃金の引き上げです。そしてもう1つが、いわゆる年収106万円の壁がなくなることです。
どちらも収入の面では前向きな変更に見えますが、働く時間を抑えようとする動きにつながる面もあります。
そこで今回は、2つの変更の中身を確認したうえで、社会保険に加入すると負担と給付がどう変わるのかを見ていきます。
1. 10月から最低賃金が引き上げへ
厚生労働省は、2026年度の地域別最低賃金の改定額が全都道府県で答申されたことを公表しました。
改定額の全国加重平均は1177円です。前年度の1121円から56円の引き上げとなり、目安制度が始まった1978年度以降で2番目に大きな上げ幅でした。
引き上げ額は都道府県ごとに54円から65円まで幅があります。改定後の最高額は1280円、最低額は1085円で、その比率は84.8パーセントです。
発効するのは2026年10月1日から12月2日までの間で、都道府県ごとに順次となります。
時給で働く人にとっては収入が増える変更です。ただ、扶養の範囲内で働いている人にとっては、別の事情が絡んできます。
2. パートで働く人の前にある年収「106万円の壁」と「130万円の壁」
扶養には税金の扶養と社会保険の扶養の2種類があります。どちらも一定の収入を超えると負担が生まれるため、年収の壁と呼ばれてきました。
このうち社会保険の側にある壁が2つです。
1つが106万円の壁で、勤務先の厚生年金保険と健康保険に加入する要件のことを指します。所定内賃金が月額8万8000円以上という要件を年収に置き直すと、およそ106万円になるためこう呼ばれてきました。
もう1つが130万円の壁です。こちらは配偶者などの被扶養者と認められる収入の上限で、超えると自分で保険に加入することになります。
混同されやすいのですが、2つは別の制度です。今回変わるのは前者のほうです。
3. 2026年10月から社会保険の加入要件が変わる
短時間で働く人が勤務先の社会保険に入る要件は、これまで4つありました。
賃金要件が外れ、企業規模要件も10年かけて縮小していく1/2
出所:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」を参考にLIMO編集部作成
このうち賃金要件が、2026年10月に撤廃される予定です。2025年に成立した年金制度改正法にもとづく変更です。
撤廃の理由は最低賃金にあります。2025年度の地域別最低賃金が全都道府県で時給1016円を超えたため、週20時間働けば自動的に月額8万8000円以上になるからです。
要件が意味を持たなくなったので外す、という整理です。残るのは週20時間以上という労働時間の要件と、企業規模、そして学生ではないことの3つになります。
企業規模要件も段階的に縮小します。いまの51人以上から、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上となり、2035年10月には10人以下の企業も対象です。
なお、130万円の壁のほうは今回の変更に含まれていません。こちらは引き続き残ります。
4. 時給が上がると働く時間を抑えたくなる理由
時給が上がるのは本来うれしいことです。それでも働く時間を減らす選択が出てくるのは、社会保険料の負担が発生するためです。
収入が増えても保険料が引かれるぶん、手取りがいったん下がる区間があります。この逆転を避けようとすると、勤務時間を短くするという判断になります。
働く時間を減らせば、職場ではシフトの組み直しが必要になります。人手を新たに探すことになる場合もあるでしょう。
ただ、ここで考えたいのは、社会保険に加入することが本当に損なのかという点です。