9月30日は3月期決算企業の中間期末にあたり、配当や株主優待の権利が確定するタイミングとして個人投資家の関心が集まりやすい時期です。

京阪神ビルディング<8818>もその一つですが、他の中間期優待銘柄と少し事情が異なります。

同社は5月13日に株式分割・配当方針の変更とあわせて株主優待制度の新設を発表しており、今回の9月30日が制度発足後、初めて迎える権利確定日にあたります。

対象となるのは600株以上を保有する株主で、保有株式数に応じて株主限定サイト「京阪神ビルディング・プレミアム優待倶楽部」で使えるポイントが進呈される仕組みです。

同社は大阪を拠点にオフィスビルやデータセンタービル、競馬の場外勝馬投票券発売所である「ウインズビル」などを保有・賃貸する「土地建物賃貸事業」の単一セグメント企業です。

7月30日に発表した2027年3月期第1四半期決算からは、複数あるアセットタイプの中でどの事業が実際に稼ぎ頭になっているのかが読み取れます。

1. 最新決算からひも解く企業の強み

2027年3月期第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の連結業績は、売上高が前年同四半期比1.7%増の50億9,900万円、営業利益が同10.2%増の16億2,900万円、経常利益が同12.6%増の17億3,900万円、四半期純利益が同12.5%増の12億700万円と、各段階で増収増益を確保しました。

通期予想(売上高205億円、営業利益55億円)に対する進捗率は、売上高が24.9%、営業利益が29.6%となっています。

同社は土地建物賃貸事業という単一セグメントですが、保有物件はオフィスビル・データセンタービル・ウインズビル・商業施設や物流倉庫等の4つのアセットタイプに分かれています。

第1四半期の売上高内訳を見ると、最も比率が高いのはデータセンタービルで、全体の55.2%にあたる28億1,500万円(前年同四半期比4.4%増)を占めました。

次いでオフィスビルが22.9%の11億6,600万円(同1.9%増)、ウインズビルが16.3%の8億3,200万円(同0.1%減)、商業施設・物流倉庫等が5.6%の2億8,500万円(同16.4%減、2025年9月に資産回転型事業の一環で売却した浅草駅前ビルの影響)となっています。

同社の実質的な稼ぎ頭であるデータセンタービルは、大阪都心部に8棟を保有・賃貸しています。具体的には、高い防災性能や安定した電力供給、先進的なセキュリティシステムを備えた堅牢な建物・インフラをテナント企業に貸し出す不動産賃貸事業となっています。

同社では、大規模災害時にもテナントの事業継続を可能にする性能に加え、30年以上にわたり積み上げてきた保守管理のノウハウが評価されているとしています。第1四半期は、一部テナントの本契約への移行によって賃料収入が増加したことが増収の要因となりました。

また、会社全体でもリーシングを中心とした営業活動に注力した結果、第1四半期末時点の空室率は0.02%と、引き続き高い稼働率を維持しています。

2. 通期業績予想の修正:京都物件の売却益で純利益は70億円に

京阪神ビルディングは7月30日、京都市中京区の「四条河原町ビル」(賃貸用不動産)を国内事業法人に譲渡する契約を締結したと発表しました。

この譲渡に伴い、2027年3月期第2四半期に固定資産売却益として約59億円を特別利益に計上する見込みです。

これを受けて同社は5月13日発表の2027年3月期通期の連結業績予想を修正しました。売上高(205億円)と営業利益(55億円)の予想は据え置かれた一方、経常利益は従来予想の49億円から8.2%減の45億円(前期実績比19.7%減)に、純利益は従来予想の49億円から42.9%増の70億円(前期実績比49.7%増)に修正されています。

経常利益が下方修正となった理由について、同社は海外不動産開発案件でリーシング活動などの事業進捗が想定以上に早まった結果、翌期以降に予定していた関連費用が前倒しで計上される見込みとなったためと説明しています。

一方の純利益は、京都物件の売却に伴う特別利益の計上などから、従来予想を上回る見込みとしています。

今回の純利益の上方修正は、ビル売却という一過性の特別利益によるところが大きく、経常利益は下方修正されている点には注意が必要です。修正後の1株当たり当期純利益は73円37銭(分割後ベース)。

2.1 配当:2029年3月期まで続く累進増配方針

京阪神ビルディングは7月1日付の株式分割(1株→2株)にあわせて配当方針も見直しています。

同社は現在、2024年3月期を初年度とする長期経営計画(2024年3月期〜2033年3月期)を進めており、その最初のフェーズの最終年度である2028年3月期の業績目標(事業利益80億円、償却前事業利益120億円、ROE7.0%以上)を達成できる見通しが立ったとして、2027年3月期から2029年3月期にかけての配当を累進増配(減配せず増配を続ける方針)とすることを決めています。

2027年3月期の年間配当予想は、分割後ベースで中間15円・期末15円の合計30円です。前期(2026年3月期)の年間配当40円は分割前の金額のため、分割調整後の実質額に直すと20円に相当し、今期予想の30円はそこから50%の増配となる計算です。予想配当性向は40.9%で、同社が長期経営計画で掲げる45%程度の水準に近づいています。

ただし、この40.9%という配当性向は、京都物件の売却益を含む修正後の1株当たり当期純利益(73円37銭)をもとに算出した数値です。売却益を除いた本業ベースの利益で見れば、実質的な配当性向はこれより高い水準になる点には留意が必要です。