4. 上限を引き上げると中ほどの所得層の保険料はどうなるか
上限額の引き上げは、上限に届く人だけの話ではありません。厚生労働省は年金収入400万円の人への影響も示しています。
4.1 年金収入400万円なら年29万7000円
年金収入400万円の人の年間保険料は、令和7年度が28万5000円でした。令和8年度の目安は次のとおりです。※全国平均料率による試算
- 上限を80万円に据え置いた場合:30万円(前年度比5.3%増)
- 上限を85万円に引き上げた場合:29万7000円(前年度比4.2%増)
上限額の設定によって、年金収入400万円の人の保険料がどう変わるか3/3
出所:厚生労働省「後期高齢者医療の保険料の賦課限度額について」(第207回社会保障審議会医療保険部会 資料3)を参考にLIMO編集部作成
上限を引き上げたほうが、年金収入400万円の人の保険料は3000円低くなる見込みです。上限に届く人の負担が増える分、それ以外の人の負担がやわらぐ関係になっています。
なお、賦課限度額を超える人の年間保険料は80万円から85万円になり、6.3%の増加です。
5. 後期高齢者医療の賦課限度額が引き上げられる理由
なぜ上限を上げるのでしょうか。厚生労働省は資料のなかで理由を挙げています。
5.1 所得と医療給付費がともに増える見込み
近年は物価と賃金が上昇傾向にあり、後期高齢者の所得も医療給付費もともに増加が見込まれるとしています。
また令和8年度は、出産育児支援金の激変緩和が終わるなどの影響もあるとされています。
5.2 納付意識と中間所得層の負担のバランス
同じ資料には、上限を設けている理由も書かれています。給付と保険料負担のバランスを失えば、加入している人の納付意識に悪影響を及ぼすおそれがあるためです。
上限を上げるかどうかは、超える人の割合と、中間所得層の負担とのバランスを見て決められています。
6. 【元自治体職員のアドバイス】保険料の通知が届いたら確かめたいこと
筆者は元自治体職員で、役場で国民健康保険と後期高齢者医療の保険料の計算を担当していました。窓口で実際に確かめていた点を挙げます。
6.1 均等割額と所得割額の内訳を見る
通知書には、均等割額と所得割額がそれぞれ書かれています。前の年度と比べるときは、合計額だけでなく内訳で見比べることになります。
所得割額が増えていれば前年の所得が増えた影響、均等割額が変わっていれば料率か軽減の判定が変わった影響、という切り分けができます。
6.2 軽減の判定は世帯の所得で決まる
均等割額の軽減は、本人だけでなく世帯主と同じ世帯の加入者の所得を合わせて判定します。本人の所得が変わらなくても、世帯の中の誰かの所得が変われば軽減の区分が動くことがあります。
同居している家族の所得が関わる点は、窓口でも説明に手数がかかるところでした。
6.3 負担が重いと感じたら早めに相談する
保険料には所得に応じた軽減のほかに、事情に応じた減免の制度もあります。納期を過ぎると延滞金がつくこともあります。
難しいと感じた時点で、お住まいの市区町村の窓口に相談しておきたいところです。
7. まとめにかえて
後期高齢者医療の保険料の賦課限度額は、令和6・7年度の80万円から令和8年度は85万円になります。制度が始まった平成20年度の50万円から、段階的に引き上げられてきました。
全国平均の料率で計算すると、上限に達するのは年金収入だけの場合で1021万円、年金と給与が同程度の場合で1150万円です。上限を超える人の割合は1.21%と推計されています。
年金収入400万円の人で見ると、上限を据え置いた場合の30万円に対し、85万円へ引き上げた場合は29万7000円と、わずかに低くなる見込みです。
自分の保険料は、市区町村から届く通知書で均等割額と所得割額の内訳まで確かめられます。分からない点があれば、窓口で確認してみてください。
参考資料
太田 彩子