「介護サービスには訪問・通所・施設の3種類がある」という説明をよく見かけますが、実はこの3つだけでは説明しきれないサービスがあります。それが、複数のサービスを組み合わせて提供する「複合型サービス」です。

この記事では、介護サービス情報公表システムの公式情報にもとづき、介護保険サービスの基本的な分類と、見落とされがちな複合型サービスの仕組みを整理します。

1. 介護保険サービスは、まず「居宅サービス」と「施設サービス」に分かれる

介護サービス情報公表システムの公式情報によると、介護保険サービスは大きく「居宅サービス」と「介護保険施設」に分類されます。居宅サービスはさらに、訪問系(訪問介護・訪問看護など)、通所系(通所介護・通所リハビリテーションなど)、短期入所系(短期入所生活介護・短期入所療養介護など)に分かれます。

介護保険施設には、介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)、介護保健施設サービス(介護老人保健施設)、介護医療院サービスの3つがあります。「訪問・通所・施設」という3分類は、この居宅サービスの中の訪問系・通所系と、介護保険施設をまとめて表現した、いわば簡略版の整理だといえます。

訪問系サービスの代表である訪問介護(ホームヘルプ)は、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援(生活援助)を行います。通所系の代表である通所介護(デイサービス)は、老人デイサービスセンターなどで、入浴・排泄・食事などの介護や、日常生活を送るうえで必要な機能訓練を提供します。

齊藤 慧
「訪問・通所・施設」という3分類は分かりやすい反面、実際の制度上の区分とは少しずれています。短期入所系(ショートステイ)がどこにも当てはまらず迷子になる、という相談を受けたことも一度や二度ではありません。

1.1 【介護保険サービスの基本分類】

前提:介護サービス情報公表システムの公表情報にもとづく編集部整理1/2

前提:介護サービス情報公表システムの公表情報にもとづく編集部整理

出所:介護サービス情報公表システム「サービス編」を基に編集部作成

  • 訪問系(居宅サービス):訪問介護・訪問看護などです
  • 通所系(居宅サービス):通所介護・通所リハビリテーションなどです
  • 短期入所系(居宅サービス):短期入所生活介護・短期入所療養介護などです
  • 介護保険施設:介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院です

2. 【編集者の視点】

「訪問・通所・施設」という言葉のイメージだけで介護サービスを理解していると、ショートステイや、これから説明する複合型サービスがどこに位置づけられるのか分からなくなりがちです。制度上の分類を一度押さえておくと、その後の情報収集がぐっと楽になります。

短期入所系サービスの代表である短期入所生活介護(ショートステイ)は、介護老人福祉施設などに短期間入所し、日常生活上の支援や機能訓練を受けられるサービスです。家族の介護負担を一時的に軽減する目的で使われることが多く、訪問系・通所系のどちらとも異なる、独立した分類に位置づけられています。

3. 見落とされがちな「複合型サービス」。通い・宿泊・訪問を1つの事業所で組み合わせる

介護サービス情報公表システムの公式情報によると、地域密着型サービスの一種として、「通い・訪問・泊まり」といったサービスの組み合わせを一体的に提供する「複合型サービス」があります。代表的なものが、小規模多機能型居宅介護と、看護小規模多機能型居宅介護です。

小規模多機能型居宅介護は、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組み合わせ、日常生活上の支援や機能訓練を行うサービスです。要支援1・2および要介護1〜5の認定を受けた方が利用できます。

複合型サービスは「地域密着型サービス」の一種であるため、原則として事業所が所在する市町村に住んでいる人しか利用できません。他の居宅サービスの多くが市町村をまたいで利用できるのとは異なる点で、引っ越しの際には利用継続の可否を事前に確認しておく必要があります。

看護小規模多機能型居宅介護は、これに加えて、看護師などによる「訪問(看護)」も組み合わせることで、介護と看護を一体的に提供します。ただし、要支援1・2の人は利用できず、要介護1〜5の認定を受けた方が対象です。

齊藤 慧
「通いはA事業所、訪問はB事業所」というように複数の事業所を使い分けるイメージを持っている人が多いのですが、複合型サービスは1つの事業所が『通い・宿泊・訪問』をまとめて提供する仕組みです。担当者が変わりにくいという安心感につながる制度だと感じています。

4. 複合型サービスは「月額定額制」。回数を気にせず利用できる

介護サービス情報公表システムの公式情報によると、小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の利用者負担は、通所介護のように利用回数に応じて積み上がる仕組みではなく、要介護度ごとに決まった「月額定額制」です。

例えば、小規模多機能型居宅介護(同一建物に居住する者以外の場合)の月額利用者負担(1割負担)の目安は、要支援で月額約3450〜6972円、要介護で月額約1万458円〜2万7209円です。看護小規模多機能型居宅介護の目安は、要介護1で月額約1万2447円、要介護5で月額約3万1408円です(いずれも1単位10円で計算した基本報酬のみの金額で、実際には地域区分や加算により変動します。同一建物に居住する場合は、やや低い金額になります)。日常生活費(食費・宿泊費・おむつ代など)は、別途負担が必要です。

4.1 【複合型サービスの月額利用者負担の目安(1割負担・同一建物以外の場合)】

前提:介護サービス情報公表システムの公表情報にもとづく編集部整理(1単位10円で計算した基本報酬のみの目安)2/2

前提:介護サービス情報公表システムの公表情報にもとづく編集部整理(1単位10円で計算した基本報酬のみの目安)

出所:介護サービス情報公表システム「小規模多機能型居宅介護」・「看護小規模多機能型居宅介護」を基に編集部作成

  • 看護小規模多機能型居宅介護:基本報酬の目安として、要介護1で月額約1万2447円、要介護3で月額約2万4481円、要介護5で月額約3万1408円です
  • 小規模多機能型居宅介護:要介護度に応じて月額約1万458円〜2万7209円の幅があります(要支援は約3450〜6972円)
  • いずれも月額定額制で、利用回数に応じた積み上げ計算ではありませんが、地域区分や加算等により実際の金額は変動します

5. 【編集者の視点】

月額定額制であることは、利用者にとって「使いすぎたら高額になる」という不安が少ないというメリットがあります。一方で、日常生活費は別途かかるため、月額料金だけで総費用を判断しないよう注意が必要です。

6. 要支援・要介護の認定によって、利用できるサービスの範囲が変わる

複合型サービスのうち、小規模多機能型居宅介護は要支援1・2の人も利用できますが、看護小規模多機能型居宅介護は要介護1〜5の認定を受けた人に限られ、要支援の人は利用できません。看護が必要かどうかで、選べるサービスの範囲が変わってくる点は見落とされがちです。

ご自身や家族がどのサービスを利用できるかは、要介護度の認定結果によって決まります。介護サービスの利用を検討する際は、まず要介護度の認定を受けたうえで、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することをおすすめします。

なお、居宅サービスには福祉用具関連(福祉用具貸与・特定福祉用具販売)も含まれます。車椅子や介護ベッドなどのレンタル、入浴補助用具などの購入費支給も、訪問・通所とは別の枠組みとして用意されている点は見落とされがちです。

要支援・要介護の区分は、介護サービスの利用限度額(区分支給限度基準額)にも直結します。区分が上がるほど、1か月に利用できるサービスの量の上限も大きくなる仕組みです。

堺市の公式情報によると、区分支給限度基準額は要支援1で5032単位、要支援2で1万531単位、要介護1で1万6765単位、要介護3で2万7048単位、要介護5で3万6217単位です。1単位あたりの金額は、サービスの種類によって10円から10.7円の間で異なります。この限度額を超えた分のサービス利用は、全額自己負担になります。

介護費用の全体像について知りたい人は、介護費用の総額試算を整理した別記事もあわせてご確認ください。

齊藤 慧
本記事は、編集部が介護サービス情報公表システムの公式情報にもとづき、サービスの分類・対象者・料金体系を確認したうえで整理しています。制度の全体像を先に知っておくと、いざ介護が必要になったときに慌てず選択肢を検討できるはずです。

7. まとめ

  • 介護保険サービスは、居宅サービス(訪問系・通所系・短期入所系)と介護保険施設に大きく分かれます
  • 「通い・宿泊・訪問」を1つの事業所で組み合わせる「複合型サービス」という第4の枠組みもあります
  • 複合型サービスの代表は小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護です
  • 複合型サービスは月額定額制で、要介護度によって利用者負担額が決まります

「訪問・通所・施設」という単純化された理解だけでは説明しきれないサービスもあるため、ご自身の状況に合わせて、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しながらサービスを選ぶことをおすすめします。

具体的な利用料金や事業所の情報は、お住まいの自治体や介護サービス情報公表システムでご確認ください。

8. よくある質問

8.1 Q. 介護サービスは訪問・通所・施設の3種類だけですか。

A. いいえ。この3分類に加えて、「通い・宿泊・訪問」を組み合わせて提供する「複合型サービス」という枠組みもあります。

8.2 Q. 小規模多機能型居宅介護は要支援の人も利用できますか。

A. はい。要支援1・2および要介護1〜5の認定を受けた方が利用できます。

8.3 Q. 看護小規模多機能型居宅介護は誰でも利用できますか。

A. いいえ。要介護1〜5の認定を受けた方が対象で、要支援1・2の人は利用できません。

8.4 Q. 複合型サービスの料金は利用回数によって変わりますか。

A. いいえ。月額定額制のため、利用回数にかかわらず要介護度に応じた決まった金額になります。ただし、食費・宿泊費などの日常生活費は別途必要です。

8.5 Q. どのサービスを選べばよいか分からない場合はどうすればよいですか。

A. 地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することをおすすめします。ご本人の要介護度や生活状況に応じて、適したサービスを提案してもらえます。

8.6 Q. 区分支給限度基準額を超えて利用したらどうなりますか。

A. 限度額を超えた分のサービス利用は、全額自己負担になります。1割〜3割負担で済む範囲を超えないよう、ケアマネジャーと相談しながら利用計画を立てることが大切です。

8.7 Q. 複合型サービスは引っ越しても同じ事業所を使い続けられますか。

A. 複合型サービスは地域密着型サービスに区分されるため、原則として事業所が所在する市町村に住んでいる人が対象です。引っ越し先が別の市町村の場合、同じ事業所を継続利用できない可能性があるため、事前の確認をおすすめします。

参考資料

齊藤 慧