ゼロ成長とゼロ金利が地銀を苦境に追い込むのはなぜか

銀行の利益を分析する時には、貸出部門と預金部門に分けて考えるとわかりやすいでしょう。預金部は預かった預金を経理部に市場金利で貸し出し、貸出部門は経理部から必要金額を市場金利で借り入れることにするのです。

そうなると、預金部門は悲惨です。わずかながら顧客には金利を支払い、経理部にはマイナス金利で貸し出す必要がありますから、経費はすべて赤字です。「そんなことなら預金部門など解散してしまおう」という考え方もあるのですが、そうも行きません。

将来、高金利時代が来た時には、預金が利益の源泉になるからです。預金金利は市場金利よりも変動幅が小さいので、高金利時代になってもそれほど上がらないからです。

今ひとつ、預金部があると、借り手の資金の動きが銀行から見えるという点も重要です。「売り上げ代金の入金が減って来ましたが、大丈夫ですか?」といったことに早めに気付ければ、万が一の時の銀行の傷が浅くなるかもしれませんから。

経営統合等々の大胆な生き残りが必要な時代に

ゼロ金利とゼロ成長が当分続くとすると、地銀は相当厳しい状況になるかもしれません。経営統合による過当競争回避やコスト削減等が必要になってくるかもしれませんね。銀行と銀行の合併に際しては、独占禁止法が問題となり得るわけですが、ここは是非緩く認めていただきたいと思います。

銀行が独占利潤を貪って借り手が困るというリスクは、相当小さいと思います。少なくとも、今後数年はないでしょう。その後も、可能性は小さいと思います。フィンテックなどが発達すれば、他県のライバルが容易に競争に参入してくるようになるでしょうから。

むしろ、経営統合を認めないことによって、銀行が過当競争によって疲弊し、必要な融資を行う力もなくなっていく、というリスクの方が大きいかもしれません。銀行は自己資本比率規制があるので、自己資本が減ってくると「貸し渋り」を余儀なくされますから。

更新投資は減価償却で可能(初心者向け解説)

企業が設備投資で100万円の機械を買ったとします。現金が100万円出て行きますが、決算の際には100万円の費用は発生しません。「10年かけて機械が磨り減っていくので価値が10万円ずつ減っていく」と考えて、毎年10万円の費用を計上します。これが減価償却です。

企業の利益が毎年ゼロだとします。「10万円で材料を仕入れて製品を作り、それを20万円で売ったが、減価償却の費用を計上したので利益がゼロだった」といった感じですね。

減価償却した後でゼロということは、減価償却分だけ現金が手元に残っているはずです。20万円の売り上げで、仕入れが10万円ですから。これが、銀行借入の返済に回ります。100万円借りて機械を買い、10年かけて返すわけです。

借り手が10社あり、毎年1社ずつが機械を新しく買い換えるとします。1社は100万円借りますが、10社から10万円ずつ返済が来るので、銀行の貸し出しは増えないのです。これが、更新投資の費用は減価償却で賄われてしまうために、銀行借り入れにはつながらない、という意味なのです。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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