金融機関との間でトラブルになったとき、裁判以外に持ち込める窓口があります。

金融庁によると、金融ADR制度では指定紛争解決機関が中立・公正な立場で解決手段を提供します。指定を受けているのは8団体で、令和7年度の苦情受付は8757件でした。

この記事では苦情処理と紛争解決という2段階の手続と、それぞれの実施状況を確認したうえで、資産が増えたときの相談先の選び方を見ていきます。

1. 【金融ADR制度】金融機関とのトラブルを裁判以外で解決する仕組み

金融ADRは、金融分野における裁判外紛争解決制度の通称です。まず誰が担っているのかを確かめます。

1.1 指定を受けているのは8団体

受け皿は業態ごとに分かれています。

金融庁が公表する指定紛争解決機関一覧によると、指定を受けている団体は生命保険協会、全国銀行協会、信託協会、日本損害保険協会、保険オンブズマン、日本少額短期保険協会、日本貸金業協会、証券・金融商品あっせん相談センターの8団体です。

全国銀行協会は銀行業務と農林中央金庫業務、証券・金融商品あっせん相談センターは特定第一種金融商品取引業務を扱います。同じトラブルでも、利用した金融機関の業態によって相談先が変わるということです。

苦情処理では8293件のうち6721件が解決。紛争解決手続まで進むと成立の割合は下がる1/2

金融ADR制度の指定紛争解決機関8団体と、令和7年度の苦情処理手続および紛争解決手続の実施状況、終了事由の内訳と所要期間を示した図

出所:金融庁「各指定紛争解決機関の業務実施状況等」(第70回金融トラブル連絡調整協議会資料)などをもとにLIMO編集部作成

1.2 手続は苦情処理と紛争解決の2段階

入口から順に2つの段階があります。

金融庁によると、利用者のトラブルについて機関は苦情として受付し、論点整理などを行ったうえで金融機関へ伝達を行い、当事者間の話し合いによる解決を促します。原則として、苦情受付による話し合いで解決できない場合などに紛争解決の申立てへと手続が進みます。

紛争解決手続では、中立公正な紛争解決委員があっせん案や特別調停案を提示します。特別調停案は和解案であって、金融機関が原則受け入れなければならないものと位置づけられています。

1.3 令和7年度の苦情受付は8757件

まず苦情段階の規模を見ます。

令和7年4月1日から令和8年3月31日までの苦情処理手続では、当期の受付件数が8757件で、前年同期比13%の増加でした。前期の未済2201件を合わせた計は1万958件です。

機関別では日本損害保険協会が5012件で最も多く、生命保険協会1371件、全国銀行協会1247件、証券・金融商品あっせん相談センター870件と続きます。全国銀行協会は前年同期比20%、証券・金融商品あっせん相談センターは25%の増加です。

1.4 苦情処理では8293件のうち6721件が解決

終わり方の内訳も公表されています。

当期の既済件数8293件の終了事由は、解決6721件、紛争解決手続への移行991件、不調325件、その他254件、不開始1件、不応諾1件でした。移送はゼロです。

解決とは手続開始後に苦情が解決したもの、不調とは手続を実施したが申立人の納得が得られなかったもの、不応諾とは金融機関が苦情処理手続に応じなかったものを指します。金融機関が応じなかったケースは8293件のうち1件にとどまっています。

1.5 1か月未満で終わったのが3147件

かかった期間の分布もあります。

不応諾および移送を除く既済8292件の所要期間は、1か月未満3147件、1か月以上3か月未満2645件、3か月以上6か月未満1420件、6か月以上1080件でした。

いちばん多いのは1か月未満です。苦情段階で終われば、比較的短い期間で決着していることが読み取れます。

1.6 紛争解決手続の受付は1441件

段階が上がると、件数は大きく減ります。

令和7年度の紛争解決手続の受付件数は1441件で、前年同期比10%の増加でした。前期の未済658件を合わせた計は2099件です。苦情の受付8757件と比べると、6分の1ほどの規模になります。

機関別では日本損害保険協会807件、生命保険協会363件、証券・金融商品あっせん相談センター120件、全国銀行協会112件です。全国銀行協会は前年同期比67%の増加で、8団体のなかで伸び率がもっとも大きくなっています。

1.7 成立は1265件のうち和解403件と特別調停86件

ここで解決の割合が変わります。

当期の既済1265件の終了事由は、和解403件、特別調停86件、見込みなし726件、一方の離脱44件、その他6件でした。双方の離脱、不応諾、移送はいずれもゼロです。

見込みなしとは、紛争解決委員が紛争解決手続によっては和解が成立する見込みがないと判断して終了したものなどを指します。所要期間は6か月以上が464件で、3か月以上6か月未満574件と合わせると8割を超えます。苦情段階の分布とは逆の形です。

1.8 相談先が分からないときは金融サービス利用者相談室

どこに持ち込めばよいか迷う場合の窓口もあります。

金融庁は金融サービス利用者相談室を設けており、電話番号は0570-016811、IP電話からは03-5251-6811です。受付時間は平日10時00分から17時00分までで、ウェブサイトでも受け付けています。

なお、これらの計数は各指定紛争解決機関からの報告に基づき金融庁が作成した速報値です。利用した金融機関の業態に応じた窓口は、金融庁が公表する金融ADR機関一覧でご確認ください。

なお、資産が増えたときの置き場所や相談先の考え方に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

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