ベランダのプランター、庭の花壇、家庭菜園。コロナ禍をきっかけにガーデニングを始めたという人は少なくないでしょう。
あれから数年が経ち、この需要はいまも続いているのでしょうか。
経済産業省の統計から、ホームセンターで売れた園芸関連商品の販売額の推移を確認していきます。
- 2024年のホームセンターの園芸・エクステリア関連商品の販売額は5206億2400万円
- 2020年に前年比110.5%と大きく伸び、2021年の5372億5600万円がピーク
- 2022年以降は3年連続の微減だが、コロナ前の2019年より9.3%高い水準
1. 園芸関連商品の販売額は6年でどう動いたか
経済産業省の「商業動態統計調査」によると、全国のホームセンターにおける園芸・エクステリア関連商品の2019年から2024年の販売額と前年比は、以下のような結果になりました。
- 2019年:4762億2800万円(前年比99.3%)
- 2020年:5260億2300万円(前年比110.5%)
- 2021年:5372億5600万円(前年比102.1%)
- 2022年:5360億6900万円(前年比99.8%)
- 2023年:5293億2600万円(前年比98.7%)
- 2024年:5206億2400万円(前年比98.4%)
2019年の4762億2800万円から2021年の5372億5600万円まで伸び、その後は緩やかに減少しています。
なお、この数字はホームセンター業態の販売額です。園芸店や通信販売、ネット通販で売れた分は含まれていないため、園芸用品の市場全体を示すものではありません。
2. 2020年に一気に伸びた「巣ごもり需要」
推移のなかで際立っているのが2020年です。
コロナ禍に起こった巣ごもり需要により、2020年には販売額が大きく伸びたことがわかります。前年比110.5%、金額にして497億9500万円の増加です。
外出が制限されるなか、家の中や庭で過ごす時間が長くなりました。その時間を充実させる手段として、ガーデニングや家庭菜園が選ばれたということでしょう。
植物を育てることは、屋外に出られなくても自宅で完結し、日々の変化を楽しめます。当時の生活環境と、非常に相性のよい趣味だったといえます。
翌2021年も前年比102.1%と伸びを維持し、5372億5600万円でピークを迎えました。
3. 微減が続いても「コロナ前より高い」
行動制限がなくなり、家にこもる必要がなくなった2022年以降からは微減となっています。
- 2022年:前年比99.8%
- 2023年:前年比98.7%
- 2024年:前年比98.4%
3年連続で前年をわずかに下回る推移です。しかし、それでもコロナ前の2019年よりは高い水準をキープしています。
2019年の4762億2800万円と2024年の5206億2400万円を比べると、443億9600万円、率にして9.3%高い水準です。
コロナ禍を契機にガーデニングを始め、そのまま楽しんでいる方が多いのかもしれませんね。
一時的なブームであれば、行動制限の解除とともに2019年の水準まで戻るはずです。そうならずに高止まりしているということは、新たに定着した層が存在することを示しています。
この数字が何を数えているのかを、一度確かめておきたいところです。
商業動態統計調査のホームセンター販売額は、調査対象となったホームセンターのレジを通った金額です。同じ土や苗を園芸専門店で買っても、通信販売で取り寄せても、この5206億2400万円には入りません。
つまり、この統計が下がったからといって、園芸をする人が減ったとまでは言い切れません。買う場所が変わっただけ、という可能性が残ります。ネット通販の利用がこの6年で広がったことを思えば、そこは無視できないところです。
逆に、園芸をする人の数が変わらないまま、ホームセンターで買う人の割合が増えれば、この数字は伸びます。統計が動いた理由を需要の増減だけで説明しないほうが安全だろうと思います。
どの範囲を数えた金額なのかは、その大きさとは別に押さえておきたいところです。そのうえで、次はホームセンター全体との比較を見ていきます。
4. ホームセンター全体は伸びているのに園芸は減っている
同じ統計のなかで、他の商品分類と比べてみると、園芸の位置づけがはっきりします。
2024年のホームセンターの商品販売額は全体で3兆3987億7700万円、前年比101.7%でした。つまり全体は伸びています。
一方、園芸・エクステリアは前年比98.4%で、全体と逆の方向に動いています。同じ2024年に「家庭用品・日用品」は前年比103.7%、「ペット・ペット用品」は102.1%、「DIY用具・素材」は101.9%と伸びました。
ホームセンター自体の売上が落ちているわけではなく、そのなかで園芸だけが緩やかに縮んでいる。この構図は、園芸需要そのものの一巡を示している可能性があります。
とはいえ、園芸・エクステリアは全体の約15%を占める大きな分類です。金額の規模で見れば、いまも主要な柱のひとつであることは変わりません。
5. ガーデニングにかかる費用の考え方
市場規模の話から、個人の家計に目を移してみましょう。
ガーデニングは、始めるときの初期費用と、続けるときのランニングコストに分けて考えられます。
初期費用としては、プランターや鉢、土、園芸用の道具、支柱やネットなど。何をどこまで揃えるかによって金額は変わります。
ランニングコストは、種や苗、追加の土、肥料、そして水道代です。育てる規模によりますが、道具を買い足す必要がなければ、初年度より抑えられることが多いでしょう。
道具は繰り返し使えるため、続けるほど1年あたりのコストは下がっていきます。以前ご紹介したレジャー白書の記事で、活動回数と費用の2軸から余暇を4つに整理しましたが、ガーデニングはそのうち「回数が多く費用が安い」日常型に近い性格を持つといえるでしょう。
6. 家庭菜園という選択肢
園芸のなかでも、家庭菜園には食費への影響という側面があります。
野菜の価格が高騰する時期に、自宅で収穫できるものがあれば助けになります。ただし、必ずしも「買うより安い」とは限りません。土や肥料、苗の費用、そして手間を考えると、スーパーで買ったほうが安く済む野菜も多くあります。
金銭的な損得より、育てる過程を楽しむこと、採れたての味を味わうこと、そうした金額に表れない価値のほうが大きいと考えるのが現実的でしょう。
5206億2400万円という販売額は、そうした価値を求める人たちの支出が積み上がった結果といえます。
7. まとめにかえて
今回は、経済産業省の商業動態統計調査から、ホームセンターの園芸関連商品の販売額を確認しました。
- 2024年の販売額は5206億2400万円
- 2020年に前年比110.5%と大きく伸び、2021年の5372億5600万円がピーク
- 2022年以降は3年連続の微減だが、コロナ前の2019年より9.3%高い水準
- ホームセンター全体は前年比101.7%で、園芸だけが逆方向に動いている
ブームで終わらず、暮らしの一部として定着した。数字はそんな変化を映しているようです。
8. 【執筆者コメント】祖父の畑は、収支では説明がつかない
私の祖父は家庭菜園でトマトを作っています。毎年よく実るのですが、そのぶんサルにもよく食べられています。
食べられた分を差し引いたら、たぶん買ったほうが安いのだろうと思います。それでも祖父が毎年苗を植えるのは、収支の話ではないからでしょう。実がつく過程を見て、採れたてを食べて、ときどき近所に配る。そこまでが一続きになっています。
本文にある「金額に表れない価値」というのは、こういうことなのだろうと思います。統計に出てくるのは苗と土と肥料の代金だけで、そのあとに起きることは金額になりません。
私は自分では育てていないのですが、山に囲まれた場所に住んでいると、畑をやっている家がとても多いことに気づきます。趣味と生活の中間のような位置に、家庭菜園はあるのかもしれません。
5206億2400万円という数字を見て思ったのは、この金額の相当な部分が「損得では説明できない支出」なのだろうということでした。
参考資料
中沢 新
