決算が順調でも株価が下がる日はある。2026年8月28日のコジマ(7513)がそれだった。前日終値1,459円から1,384円へ、前日比▲5.1%。8月半ばから積み上げた上げ幅を、ほぼそのまま吐き出した格好である。直近の利益は通期予想に対して十分すぎるほど進んでいるのに、である。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
- ①2026年8月28日の終値は1,384円で前日比▲5.1%、8月24日の1,500円から4営業日で下げた
- ②2026年8月期3Q累計の純利益51億円は、通期予想53億円の98%にあたる
- ③発行済株式の5割超をビックカメラが保有し、個人株主は9万3,852人にのぼる
1. 1日で5%下げた株価と、その直前にあった1割超の上げ
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出所:各種資料をもとに筆者作成
まず、直近1カ月の値動きを整理しておきたい。
2026年7月30日の終値は1,428円だった。そこから8月上旬にかけて水準を切り下げ、8月10日には1,330円と、この1カ月で最も低い終値をつけている。
流れが変わったのは8月中旬だ。8月17日の1,345円を起点に上昇へ転じ、8月19日は1,410円、8月20日は1,470円と切り上げ、8月24日には1,500円と期間中で最も高い終値をつけた。5営業日で1割を超える上げである。
そのあとが今回の下げにあたる。8月25日1,487円、8月26日1,483円、8月27日1,459円と少しずつ削られ、8月28日に1,384円まで下げた。前日比は▲5.1%、8月24日の水準からは▲7.7%になる。
1カ月全体では、7月30日の1,428円から1,384円へ▲3.1%。上げた分をほぼ返し、出発点の近くへ戻ってきたことになる。
株価が動いた理由を一つに決めることはできない。ただ、この期間に新しい決算の開示はなく、8月中旬からの上げが短い日数に集中していたことを踏まえると、上げ幅を取りにいった資金が戻ったという説明が最も無理がない。
加えて、同社の決算期は8月末で、この週は2026年8月期の最終週にあたる。期末をまたぐ手前の需給が絡んだ可能性もある。
2. PER20.23倍という値付けと、通期予想の98%まで進んだ利益
値動きの話でとどめず、いま株価がどのあたりに置かれているかを確認しておきたい。
8月28日時点のPER(株価収益率)は20.23倍、PBR(株価純資産倍率)は1.45倍である。会社が示す2026年8月期の通期予想EPS(1株当たり利益)は68.41円で、終値1,384円はその20倍強にあたる。
小売業は業態の幅が広く、業種の平均像をそのまま当てはめにくい。それでも、薄利多売が前提の家電量販という業態にしては、利益に対する値付けが控えめとは言いにくい水準にある。
その値付けの前提となる利益の進み方はどうか。2026年8月期3Q累計の実績は、売上高2,228億円、営業利益74億円、経常利益76億円、純利益51億円である。
会社の通期予想は売上高2,940億円、営業利益82億円、経常利益85億円、純利益53億円だから、通期予想に対する進捗率は営業利益で90%、純利益では98%に達する。
売上高の進捗率が76%であることを踏まえると、利益の進み方が売上の進み方を大きく上回っている。3Qまでの9か月で、通期の利益をほぼ作り終えた形だ。
もっとも、家電量販にとって6月から8月はエアコンが動く季節でもある。利益の季節性を考えれば、通期予想そのものが控えめに置かれている可能性は残る。
実際、通期の営業利益予想は1Q時点の76億円から上期時点で82億円へ引き上げられ、3Q時点では据え置かれている。会社計画が保守的に置かれ、期中に上へ寄せられてきた流れが見て取れる。
3. 発行済株式の5割超をビックカメラが握る会社の株価
この銘柄の値動きを見るうえで外せないのが、所有構造である。
2025年8月期末時点の大株主を見ると、筆頭はビックカメラで、保有比率は50.44%にのぼる。コジマ自身も有価証券報告書でビックカメラを親会社と記載しており、議決権比率は50.47%、関係の内容は業務提携と役員の兼任である。
過半を1社が持つということは、市場で日々売買される株式が発行済株式の半分に届かないということでもある。
株主の内訳を単元数の比率で見ると、その他法人が52.74%、個人その他が38.16%、金融機関が5.49%、外国法人等が2.72%という並びになる。外国法人等の比率は3%に満たない。
海外投資家が入りにくい構造は、株価の振れ方にも表れやすい。買い手と売り手が国内の個人に寄るほど、短期の需給だけで水準が動きやすくなるからだ。
8月中旬の1割超の上げと、その後の▲7.7%の戻り。この振れ幅を業績の変化だけで説明するのは無理がある。所有構造から来る売買の薄さも、あわせて見ておきたいところだ。
4. 筆者コメント
印象的なのは、決算の進み方と株価の動き方が、まったく別の時計で回っていることだ。
3Qまでに通期予想の利益をほぼ作り終えている会社の株が、新しい開示のない週に1日で5%下げる。この落差は、業績を追う目線だけでは埋まらない。
家電量販は、季節と製品サイクルで需要が動く商売である。パソコンの入れ替え、猛暑によるエアコンの動き、住宅設備の更新。どれも数か月単位で効いてくる材料で、1日の値動きとは時間軸が合わない。
一方の株価は、その時点で買いたい人と売りたい人の力関係でしか決まらない。過半を親会社が持ち、残りの多くを個人が持つこの銘柄では、その力関係が偏りやすい。
だから私は、この手の銘柄の日々の値動きを業績のシグナルとして読まないようにしている。見るべきは進捗率と粗利率の方向であって、4営業日の上下ではない。決算の中身と株価の呼吸は、そもそも周期が違うのだ。