総務省の家計調査によると、現役世代の平均勤労月収は51万5,729円。そこから税金や社会保険料が差し引かれて、可処分所得は42万8,519円となっています。その中で日々の暮らしに使っているお金が31万5,433円ですから、多くの勤労家庭は月10万円くらいを頑張って預金している情景が目に浮かびます。

ですが、それでもやはり月15万円の将来への貯蓄が「足りない」のです。消費税は10%に上り、確実に生活費は上がるため、節約でさらに25万円との差額10万円を埋めていくのはさすがに厳しいでしょう。「節約すれば、人生はなんとかなる」は間違いなく誤解です。

もしかしたら、「月25万円の貯蓄が必要」と聞いただけで、この本を閉じてしまいたくなった方もいるかもしれません。もちろんこの数字はあくまでも一例で、将来に向けて必要な貯蓄額は個々人で違います。

よく「私の年齢だとどのくらい貯蓄がないとダメですか?」とか、「年収の何割、貯蓄に回せばいいですか?」と聞かれますが、これはまったくナンセンスな質問。なぜなら、自分がいくら将来のために貯蓄をしたらよいのかを決めるのはあなた自身だからです。

本書では特に老後資金づくりに焦点を当てていますが、考え方自体は、人生に必要なお金全般の増やし方の参考になるでしょう。まずは、「将来のために今行動を起こそう!」そんな決意をしてください。

「節約すれば大丈夫」は誤解です!

必要な貯蓄額は人それぞれですが、いずれにしても大きなお金が必要なことに驚いたことでしょう。お金を増やすためには、次の3つのやるべきことがあります。

(1)収入を増やす
(2)支出を減らす
(3)お金に金利を稼いでもらう

金利が高く、上りのエスカレーターだった1980年代ごろまでの時代は、24時間がむしゃらに働くこと、これがお金を増やすためにもっとも重要なことでした。

当時は、賃金が良かったので、暮らしぶりも良くなりましたが、その中でもコツコツ預金をすれば高金利でお金が倍々に増えていきました。年功序列で賃金が上がり、終身雇用で定年まで勤めあげれば退職金もありました。厚生年金基金に代表される企業年金は、5.5%で運用した年金を定年退職後は終身で受け取れました。

つまり、かつては「働くこと」=「お金を増やすこと」だったのです。時代が変わり、収入が増えにくくなった社会になって意識され始めたことが、支出を減らすことです。節約で支出を抑えるというのはとても賢明な方法です。しかし、それだけでは足りない! だからお金に働いてもらうことが必要なのです。ただし、低金利時代のお金の働き方は、預金ではなく投資です。

「72の法則」とは?!

お金を増やすには、適切な金利が必要です。金利は複利と時間という力を加えることで、さらにお金の成長率が高まります。複利とは、利息が利息を生む仕組みで、貯めたお金を引き出さず、時間をかけてじっくりと増やすことにより得られる果実です。

お金は金利により成長のスピードが異なります。このスピードを計るために用いて、お金が2倍になるまでの期間が簡単にわかる計算式が「72の法則」です。算式は簡単で、「72÷金利=お金が2倍になるまでの期間」で求めることができます。

実際に計算してみると、現在の預金金利ではどうやってもお金が増えないということを実感してもらえるので、次にいくつかの問題を掲載してあります。(「『72の法則』計算してみましょう」の図を参照)

「72の法則」計算してみましょう

皆さんの銀行預金が2倍になるまでどれくらいかかるか、実際の金利をもとに計算してみてください。例えば、三菱UFJ銀行の普通預金は金利0.001%なので、預金が2倍になるのに7万2000年かかります。スーパー定期であれば0.01%ですが、それでも7200年と膨大な時間が必要です。

もし投資を行って3%の利回りで運用できれば、資金が2倍になるまで24年と現実的になります。だからこそ、投資がお金を増やすための有力な選択肢となるのです。ただし、やってはいけない投資が世の中にはたくさんあるので気をつけたいところです。

今回紹介した『書けばわかる!節約・預金だけではもったいないわたしにピッタリなお金の増やし方』では、老後に足りないお金を「長期・積立・分散投資」に基づいて安心・着実に増やす方法を、投資が初めての方に向けて解説しています。

また、年金の受給金額を増やす、保険に必要以上のお金をかけないなど、老後資金の準備をするコツも紹介しています。

人生100年時代。豊かな老後を送るためにも、そろそろお金について考えてみませんか?

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翔泳社

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