「偽装不倫」の賢治は、真面目に働き、妻・葉子の両親との二世帯住宅を快諾し、妻との記念日には毎度お祝いをし、義理の妹である本作の主人公・鐘子にも気配りし、これ以上ない理想の夫です。
けれどもその影で、妻・葉子は妊娠や出産について賢治からの圧力に耐えかねていました。「自分とそっくりな子どもがほしい」と言う賢治は、「二世帯住宅なら子育てが分担しやすい」、「夫婦2人の生活はこの日まで、妊活はこの日から」と綿密な計画を立て、葉子に強要しています。
それに対し葉子は違和感を覚え、戸惑いを隠せません。さらにこの問題を複雑にしているのは、葉子が夫からのモラハラのはけ口として、不倫を始めてしまったことでしょう。自分の訴えに聞く耳を持たなかった夫を見切り、日々の楽しみや生きがいを家庭の外に見出すことで、夫や家族との時間をおろそかにしてしまいます。
もちろん、家庭内でごまかすことすらできない程に不倫相手の男性にのめり込んだ葉子にも、非難されるべき点があります。葉子の不倫は、夫の存在や尊厳を傷つけたと捉えることができ、見方によっては夫に対しての「モラハラではないのか」と問うことができるからです。
こうしてモラハラが新たなモラハラを生み、解決の糸口が見つからないほどに混線してしまうのも、また現実と言えるのかもしれません。
2人の男性、共通点は…
比較してみると、「凪のお暇」の慎二にも、「偽装不倫」の賢治にも共通しているのは、両者とも二面性のある人格を持ち、外からはモラハラに気づきにくいということです。不倫を続ける葉子にも裏表があると言えるでしょう。だからこそ問題が複雑化の一途をたどってしまうのかもしれません。
さらに、自分の言動に無頓着なままでいるならば、自分がモラハラの加害者になる可能性も十分にあると認識させられます。現実において誰かをモラルのない言動で傷つけないためにも、ドラマを見て学び、考えたいものです。
【参考】
金曜ドラマ『凪のお暇』(なぎのおいとま)TBSドラマ(金曜よる10時放送)
『偽装不倫』日本テレビ(水曜よる10時放送)
藤枝 あおい