7月から放送中の連続ドラマもいよいよ最終回目前です。結末が気になるところですが、「凪のお暇」では主人公凪の元恋人・我聞慎二(高橋一生さん)が、「偽装不倫」では主人公鐘子の義理の兄・賢治(谷原章介さん)が”モラハラ男性”として特徴的に描かれています。放送時にはSNSなどで毎回トレンドに入るほど注目度の高い登場人物ですが、これが現実になると看過できない問題です。
今回は、ふたりの登場人物から、ドラマでの描かれ方を検証してモラハラの実態を考えてみたいと思います。
素直になれないことと、モラハラは違う
「凪のお暇」の主要人物である我聞慎二は、凪と付き合っていた当初から、また恋人関係を解消してからも凪の容姿や生活スタイルに対して批判的で暴言を吐くことが多々ありました。
ところで、一般的に「モラハラ」と言われる「モラル・ハラスメント」は、暴力など身体的な苦痛を与えるのではなく、モラルのない言葉や態度によって相手を精神的な苦痛に追い込むものです。恋人や夫婦間のほか、職場、家庭などあらゆる人間関係にモラハラは存在します。加害者意識がなくても、受け手が精神的に追い込まれ、非難されていると苦痛を感じたら、それは「モラハラ」です。
「凪のお暇」においてモラハラの問題が複雑なのは、慎二は本当は凪のことが好きだけれど、凪と対面すると素直になれず、口の悪さでごまかしているという側面を持っていることです。さらに慎二は職場では人当たりがよく人気者で、モラハラをしているとは考えにくく、加えて凪に対しての発言を後悔し、涙する場面が何度も描かれています。そのため、第三者目線では「本当はイイ奴なんじゃないか」と思ってしまう部分があります。
一方凪も、慎二の思いやりや配慮のない言葉を聞いて、過呼吸を起こし倒れた過去があるにも関わらず、「(慎二は)そういう人だ」と割り切って受け止めてしまっています。しかしある日を境に、慎二との恋人関係を解消し、別々の道を歩むことを決めました。凪は一度仕事を辞め、住まいを変え、新しい友人や職を得て、前向きに生活しています。
そうして前進する凪を見て、依然として劣等感や後悔からモラルのない発言を繰り返す慎二にも、ドラマ第7話(2019年8月30日放送)で変化がありました。自分の過去がフラッシュバックして、とあるイベント登壇中に倒れてしまうのです。
自分が倒れたことで慎二は初めて、凪が過呼吸を起こし倒れたときの状況や心情を想像することになります。ここで、自分の発言には配慮がなく、思いやりがなかったと気づき、凪に謝罪します。
しかし視聴者として心得ておきたいのは、当然ながら「モラハラ」は最初からないほうが良いに決まっている、ということです。慎二のように、自分の経験によって気づき、過去を謝罪して前に進むことは悪いことではありません。ただ、自分が相手に対して素直になれないことをモラルのない言葉で偽り、攻撃することのないよう、ドラマから学ばなければならないでしょう。