ソニーが発表した2019年4~6月期業績のうち、イメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)の売上高は前年同期比14%増の2307億円、営業利益は同70%増の495億円と大幅に伸びた。モバイル機器用イメージセンサーの需要が旺盛で、フル稼働が続いていることが収益を押し上げた。
米中貿易摩擦で前倒し需要も
今回から半導体事業セグメントの名称をI&SSに変更した。売上高2307億円のうち、イメージセンサーの売上高は同21%増の1949億円だった。画素サイズ0.8μmの4800万画素など高付加価値品への引き合いが強く、製品ミックスの改善で単価を維持できたことに加え、スマートフォンカメラの多眼化と素子の大判化(センサーサイズの大型化)、フラッグシップモデルにおけるシェア上昇などで出荷数量が大幅に増えた。
特に中国向けの需要が旺盛で、「米中貿易摩擦に伴う前倒し調達もあったと思う」と述べた。米中貿易摩擦に関しては、中国スマートフォンの最大ブランドであるファーウェイが米国政府から半導体の禁輸措置を受けた(現状ではG20大阪サミットを機に禁輸措置緩和の方向)ことから、ファーウェイが半導体を前倒しで調達しているとされていた。
こうした要因によって、イメージセンサーの生産は月産能力10万枚(300mmウエハー換算)に対して19年4~6月期のウエハー投入量は10万枚と、ほぼフル稼働を続けた。6月18日に山形県鶴岡市で発生したM6.7の地震で、生産拠点の1つである山形テックの操業を一時的に停止したものの、人的・物的に大きな被害はなかった。
増設棟の新設は「19年度中に判断」
19年7~9月期に関しては、中国向けに強い需要が継続するとみている。多眼化と大判化への要求が当初の想定以上に強く早いため、生産面では当初計画どおりに月産能力を10.5万枚に引き上げる。ウエハー投入量についても10.5万枚のフル稼働を継続する計画だ。
下期以降に通商問題などに関わる懸念が残っており、今後の影響を上期いっぱいかけて見極めたいとの趣旨から、通期見通しの売上高9900億円、営業利益1450億円、設備投資額3000億円は据え置いた。予定では、19年度末までに月産能力を10.7万枚まで高めることにしている。一方で、19~21年度の3年間でI&SS事業に6000億円を投資し、月産能力を13万枚まで高める計画にも変更は加えていない。
また、21年度以降の需要に対応するため、これに1000億円を追加投資してイメージセンサーの新増設棟を建設することを検討中だが、「まだ意思決定はしていないが、19年度中に決めたい」との意思を改めて表明した。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏