貸借対照表が財産目録なら、損益計算書は“財布”と考えていいでしょう。A社の損益計算書は平成29年1月1日からスタートして同年12月31日までを表していますから、この期間の売り上げ、費用、利益をまとめた財布として考えてみましょう。

1年間でA社の財布には、売上の35億7912万円がチャリーンと入ってきたのですが、仕入れや給料、その他の経費や税金等の支払があって、最終的に財布の中には1586万円(当期純利益)が残りましたということです。黒字ということですね。もし売上より費用の支払いが多ければ、赤字ということです。

これは個人のサイフのやりくりと同じで、もらった給料の中で支払をまかなって余れば黒字、逆に支払過多であれば赤字となります。分かりやすいですね。

たとえば、読者の会社のボーナスがなぜかここ数年だんだん減ってきて、今年は激減!なんて経験ありませんか。こうしたことも、会社の財布である損益計算書を定期的に見ておけば、来年はもっと減るかも?と予想が付くものです。赤字でどんどん現金が減っていけば、ボーナスは期待できませんものね(泣)。

さて、A社の余った1586万円は来期に繰り越すことになりますが、この期間においては利益が余って財産の一部になるということで、貸借対照表の利益剰余金に組み入れられます(図表1の矢印)。つまり、毎年黒字で利益を積み上げる会社は、貸借対照表の利益剰余金が膨らんで自己資本が分厚くなっていくことになり、企業の財務体質が堅固になっていくと考えていいでしょう。

個人に置き換えると、ハードワーカーなご主人とやりくり上手な奥さんがいて毎月家計が黒字のご家庭は、黙っていても貯金が増える、ということですね。

と、財務諸表の理解を進めるため、かなりシンプルに解説してみましたが、より詳しく読み込むには専門用語をしっかり理解する必要があります。特に、読者のみなさんが個別株式に投資する場合、投資対象企業の財務諸表を読み込むのは当然で、時系列で比較したり足元の業況がどのように推移しているのかも調べたりする必要がありますよね。

また、ぜひこの機会にご自身が勤務されている会社の財務諸表をしっかり見てみましょう。資産をバッチリ保有して、黒字経営だと思っていた自分の会社が、実は役員連中が給料ぼったくりで中身はスカスカの実質ゾンビ企業だった、なんてことがあるかもしれません・・・。

ことほどさように、財務諸表を読むことはいち早く企業の実態を知り、いざとなればダメ会社から逃げるための自分を守る手段になるかもしれないのです。

(注)本コラムは筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織や企業の見解ではありません。また、内容をより簡単にご理解いただくため、細部を要略する場合がありますのでご了承ください。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)