富士電機が半導体の増産投資を加速している。同社は、創業100年を迎える2023年度までを対象にした5年間の中期経営計画を策定中で、全社ベースで売上高1兆円の突破を目指していく。北澤通宏社長は「伸ばしていくのはパワエレとパワー半導体」と語り、自動車の電動化や再生可能エネルギー関連などに今後大きな需要が見込めるパワー半導体の積極的な増産を進める。

半導体売上高は2年連続1000億円超え

 北澤社長は18年度第2四半期決算を発表した18年10月、説明会の中で「次期中期経営計画では、EV(電気自動車)需要の拡大を見据え、パワー半導体の投資は4桁を超える可能性がある」と言及し、5年で1000億円を超える設備投資を検討していることを明らかにした。電子デバイス事業(半導体+ディスク媒体)の設備投資実績は14~18年度の5年間で661億円であり、今後5年間は投資を1.5倍以上に拡大することになる。

 同社は、欧米各国が2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止し、電動車へシフトする動きを受けて、17年度にパワー半導体の増産投資を改めて強化することを決断。このとき総額500億円にのぼる投資を実施することを決め、まず200億円の投資案件を固め、松本工場や山梨工場の増強で8インチの生産能力を拡大していくことにした。

 これに伴い、18年度は電子デバイス事業の設備投資額として前年度比2.5倍となる281億円を充て、国内外で前工程、後工程ともに増強を進めた。18年度は中国市場の減速などで産業パワー半導体の需要が下ぶれたものの、電子デバイス事業は売上高が前年度比8%増の1373億円、営業利益は同14%増の156億円を記録し、半導体の売上高は2年連続で1000億円を超えた。

19年度は設備投資さらに上積み

 同社は18年度第3四半期の決算発表時に、自動車向けパワー半導体の需要が計画より増加傾向にあるため、250億円の設備投資の前倒しを決定している。これは23年度までの設備投資額の内数。19年後半~20年にかけて実行し、19年下期から業績に寄与し始め、増強投資の完了は20年下期になる予定と説明していた。

 これを受けて19年度は、電子デバイス事業の設備投資額として前年度比21%増の341億円を計画し、さらに増額する。前工程では8インチの増産、後工程では自動車向けの強化に投資する方針で、8インチ生産能力増強の加速、自動車向け新製品の量産立ち上げ、産業向け第7世代IGBTの売上拡大を進める。

 19年度の電子デバイス事業は、売上高が前年度比9%増の1503億円、営業利益は同12%増の175億円を計画している。パワー半導体を積極的に増産して自動車用の比率を高め、営業利益率11~12%をキープしていく考え。足元のパワー半導体の市況について「年間で工作機械用などの産業向けは横ばいの見通しだが、自動車向けの需要増で増収を見込む。自動車用のスペックイン活動は順調で、23~24年度に向けた案件も出始めている。再生可能エネルギー向けは風力を中心に増加し、中国のエアコン向けも18年10~12月期を底に増加に転じた」と説明した。

20年度も積極投資を継続

 パワー半導体の売上拡大に向けて、20年度も19年度と同程度の増産投資を行う考えだ。自動車分野の顧客ニーズが強く、同社を含む主要半導体メーカーだけではまかなえない状況になっているという。物量の保証と価格との関係にしっかりと手を打ち、設備投資を判断していく。

 同社は、20年度に半導体だけで売上高1300億円、中期目標として1500億円の達成を目指しており、このうち自動車向けの比率を40%まで高める(18年度実績は29%)ことを目標に掲げている。今後の需要動向によっては、新たな生産拠点を手当てする可能性も浮上してくるだろう。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏