5. 物価上昇率には追いつかない年金額の改定
公的年金制度には、経済動向に合わせて支給額を調整する仕組みがあります。2023年度から2025年度にかけては3年連続の増額改定となり、数字の上では受給額が着実に積み上がってきました。
ただし、額面の増加だけを見て「老後は安心」と考えるのは早計です。ここで注視すべきは、物価の上昇スピードと年金の増額幅の「差」にあります。
たとえば2025年度の改定では、物価が2.7%上昇したのに対し、年金額の伸びは1.9%に留まりました。制度を将来にわたって維持するための調整(マクロ経済スライド)が行われるため、どうしても物価の勢いに年金の伸びが追いつかない「実質的な目減り」が生じてしまうのです。
1000円の受給増があっても、光熱費や食費がそれ以上に高騰していれば、家計の購買力は実質的にマイナスとなります。
2026年を安心できる一年にするために、年金という「守り」の資産だけでなく、インフレの波から資産を守る「攻め」の備えも並行して検討していくことが重要になっています。
参考資料
和田 直子
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
元銀行員/一種外務員資格(証券外務員一種)/LIMOマネー編集部金融ライター
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて後方事務や法人営業部門のアシスタント事務を経験。その後、三井住友信託銀行に転職し、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。
15年以上にわたり金融機関に在籍し、現役世代からシニア層、富裕層まで延べ1000名以上の個人顧客に対し、資産運用コンサルティングや承継対策を提案。表彰歴多数。現在は、株式会社モニクルリサーチが運営する、くらしとお金の経済メディア『LIMO(リーモ)』、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』にて企画・執筆・編集・監修を幅広く担当。
15年以上の金融機関キャリアに加え、自身も20年以上の投資経験(投資信託・株式・FX・金など)を持つ。金融のプロ・現役投資家・生活者(出産・育児経験)の3つの視点から、年金制度の仕組み、社会保障、NISAや住宅ローン、相続まで分かりやすく解説。Yahoo!ニュース経済カテゴリでアクセスランキング1位を多数獲得。【2026年6月29日更新】