医療費が高額になったとき、家計を守るセーフティネットとして機能するのが「高額療養費制度」です。2025年12月16日、厚生労働省の専門委員会から、制度見直しに向けた「基本的な考え方」が公表されました。

今回の見直しでは、医療の高度化などに対応するため、所得区分を細分化し、能力に応じた負担へと見直す方針が示されています。一方で、長期療養が必要な人への配慮として、「多数回該当」の自己負担限度額は現行水準を維持する方向です。来年夏以降の施行が見込まれる改革のポイントと、「多数回該当」「外来特例」という重要なしくみを、あらためて確認していきます。

1. 【高額療養費制度】自己負担の上限額「所得区分は細分化」を軸に見直し検討

高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担が高額になった際に、家計への過度な影響を防ぐための制度です。まず窓口で自己負担分を支払い、後で上限額を超えた分が払い戻されます(償還払い)。

また、入院や同一医療機関での外来診療では、支払いを自己負担限度額までとする「現物給付」のしくみもあります。この「現物給付」を利用する際、マイナ保険証を活用することで手続きが大幅に簡略化されます。従来、窓口支払いを上限額に抑えるには、事前に「限度額適用認定証」の取得・提示が必要でした。

しかし、マイナ保険証を使えば、この認定証の提示なしに、所得区分に応じた上限額が自動的に適用されます。

これにより、患者は煩雑な書類手続きなしに、スムーズに制度を利用できます。