しかし子どもたちの育児の担い手が母親一人となれば、その疲弊は想像を絶します。今回の事件でも、母親は1日24回のミルクをあげ、睡眠時間は1時間程度だったそう。母親本人の資質や性格の問題ではなく、人間のキャパシティにおいて三つ子をワンオペで育児するというのは確実に無理があるでしょう。

たとえ地域の育児サークルやサポート教室などが開催されていたとしても、乳児を2人、3人と抱えての外出はあまりにも過重労働です。またそんな外出をする時間があったら、家で少しでも睡眠を取りたいと思うのは、育児経験者ならわかるでしょう。これは育児に限らないことですが、そもそものエネルギーがなければ、外部にSOSさえ発信できないことが往々にしてあります。

そのため多胎児家庭には、自ら情報を取りに行ったり外出したりしなくてもいいように、定期的かつ頻繁な家庭訪問、ベビーシッターや一時保育の無料利用といった行政支援が、早急に実現されるべきではないでしょうか。

助けの求め方がわからなくなっている

今回の事件では、多くの母親が「自分もこの三つ子のお母さんのようになっていたかもしれない」と感じたことでしょう。現状では子育て負担のほとんどが母親だけにのしかかっている日本社会。多くの母親が、精神的にも肉体的にも負担の限界に達するギリギリのところで踏みとどまっているのです。

その負担が限界に達する前に、私たちは誰に、そしてどのように助けを求めたらいいのか。さまざまな事情で夫や両親、友達にも頼れない場合には、どのような助けの選択肢があるのかといった切実な問いが、子育てをするすべての母親に突き付けられたような気がしました。

今回の事件は、三つ子の母親個人の問題ではなく、日本全体の問題。今後もこのような悲しい事件が起きないよう、母親だけに負担を押し付けない、より建設的で多角的な子育ての解決策を進めていくことが急務となるでしょう。

秋山 悠紀