半導体大手のルネサス エレクトロニクスが2月末付で、取引企業などに対し、国内外の工場すべてで2019年4~9月の6カ月間のあいだ、一定期間の帰休を実施すると通知していたことが関係者への取材でわかった。

 今回の帰休は前工程工場、後工程工場ともに実施を予定。前工程は5月および8月の大型連休にあわせて2回(それぞれ1カ月程度)、後工程工場については、顧客への出荷対応を考慮し、複数回に分けて実施する予定。取材によれば、前工程は少なくとも5月は実施がすでに決まっているが、8月の帰休に関しては需要を見ながら判断するという。後工程は4~9月のあいだ、1カ月あたりの稼働日数は14~15日程度になるもようだ。

18年から一転して調整局面

 ルネサスは、16年の熊本地震の影響に伴う顧客側での在庫積み増し需要を受けて、マイコンを中心に17年までは高水準の引き合いが続いていたが、需要が一服したことで、18年からは一転して調整局面に入っていた。

 需給ギャップ解消に向け、これまでにも同社では生産調整を実施していた。自社ラインのウエハー投入量は、18年8月から大きく減少させている。また、ファンドリーからの購入量も18年7月から減少しており、在庫水準の適正化に向けた取り組みを加速させている。自社の前工程ラインの稼働率(ウエハー投入ベース)は、50%台半ばにまで落としたほか、300mmラインに限れば50%弱まで抑えたもよう。

 これらの取り組みにより、同社の18年12月末時点の棚卸資産は1180億円となり、9月末に比べて235億円減少した。当初は12月末に向けて200億円程度の削減を見込んでいたが、在庫調整は想定以上に進捗している印象だ。

一歩踏み込んだ対応

 これまでは生産ラインの稼働調整という対応にとどまっていたが、今回の一時帰休はそれよりも一歩踏み込んだ対応であり、状況の深刻化さがうかがえる。ただ、ルネサスとしては工場を低水準で稼働させるよりも、思い切って工場を止めた方が良いと判断したようだ。

 また、今回の決定は決算発表からわずか3週間後のものであり、主力製品のマイコンを中心に足元では予想以上に需要低迷が進んでいることを示している。ただ、生産オペレーションで対応が後手に回ったこと、さらに構造改革の発表以降、進めていたEOL(End of Life=生産終了)に伴う市場シェアの減少や、一部他社への切り替え(転注)もあったと見られ、今回の一時帰休の措置を需要の低迷という要因ですべて片付けられないところもある。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳