3. 「繰上げ・本来・繰下げ」どれがお得?年金シミュレーション

繰上げ受給を選択した場合、本来より早めに受け取れますが、生涯年金が減額されるため、トータルで受け取れる金額が少なくなる可能性があります。

一方で繰下げ受給を選択した場合、生涯年金が増額されますが、受給開始が遅れることからトータルで損をしてしまうケースも出てきます。

では、「繰上げ・本来・繰下げ」結局どれがお得なのでしょうか。

本章にて、厚生年金を「繰上げ・本来・繰下げ」3パターンで受給した場合の、「5年単位」での損益分岐点のシミュレーションを見ていきましょう。

なお、厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は14万3973円であるため、1万円未満の端数は切り捨て、年金月額を「14万円」と仮定して試算しています。

70〜100歳までの間に「繰上げ・本来・繰下げ」で受け取れる、トータルの年金月額は下記の結果となりました。

老齢年金「繰上げ・本来・繰下げ」損益分岐点シミュレーション

老齢年金「繰上げ・本来・繰下げ」損益分岐点シミュレーション

厚生労働省・日本年金機構の資料を参考に筆者作成

3.1 60歳から年金を受け取る場合(繰上げ受給)

  • 70歳時点で受け取れるトータルの年金額:約1277万円
  • 75歳時点で受け取れるトータルの年金額:約1915万円
  • 80歳時点で受け取れるトータルの年金額:約2554万円
  • 85歳時点で受け取れるトータルの年金額:約3192万円
  • 90歳時点で受け取れるトータルの年金額:約3830万円
  • 95歳時点で受け取れるトータルの年金額:約4469万円
  • 100歳時点で受け取れるトータルの年金額:約5107万円

3.2 65歳から年金を受け取る場合(本来の受給)

  • 70歳時点で受け取れるトータルの年金額:約840万円
  • 75歳時点で受け取れるトータルの年金額:約1680万円
  • 80歳時点で受け取れるトータルの年金額:約2520万円
  • 85歳時点で受け取れるトータルの年金額:約3360万円
  • 90歳時点で受け取れるトータルの年金額:約4200万円
  • 95歳時点で受け取れるトータルの年金額:約5040万円
  • 100歳時点で受け取れるトータルの年金額:約5880万円

3.3 70歳から年金を受け取る場合(繰下げ受給)

  • 70歳時点で受け取れるトータルの年金額:0円
  • 75歳時点で受け取れるトータルの年金額:約1192万円
  • 80歳時点で受け取れるトータルの年金額:約2385万円
  • 85歳時点で受け取れるトータルの年金額:約3578万円
  • 90歳時点で受け取れるトータルの年金額:約4771万円
  • 95歳時点で受け取れるトータルの年金額:約5964万円
  • 100歳時点で受け取れるトータルの年金額:約7156万円

70歳時点では、繰上げ受給がトータルの年金額の中で最も高くなっていますが、75〜80歳時点では本来の受給開始のタイミングが、最もトータルの年金額が高くなっています。

85歳以上になると、繰下げ受給がトータルの年金額が最も高くなっており、100歳時点で繰上げ受給と繰下げ受給で受け取れる金額は約3000万円もの差が生じています。

厚生労働省の「令和4年簡易生命表の概況」では、男性の平均寿命は「81.05年」、女性の平均寿命は「87.09年」となっています。

上記の統計も参考に、どのタイミングで受給開始をするべきか、検討できると良いでしょう。

なお、今回は年金月額14万円で試算しましたが、ご自身の将来の年金見込み額でシミュレーションを行いたい場合は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」から確認できます。

4. 繰上げ・繰下げ受給の選択は慎重に検討しよう

本記事では、繰上げ受給・繰下げ受給の利用率及び、それぞれの概要について詳しく紹介していきました。

繰上げ・繰下げ受給はそれぞれメリットがある一方で、デメリットも存在します。

「早く受け取れるから」「増額率が高くなるから」と安易に選択せずに、メリット・デメリットをしっかりと理解したうえで検討するようにしましょう。

参考資料

和田 直子