3. 2024年4月から支給停止調整額が変更される

支給停止調整額とは、この金額を超えると公的年金が減額されるという金額なのですが、2023年度までは月額48万円とされています。

しかし2024年度からは月額50万円となるため、今までよりも減額されにくくなります。

在職老齢年金の計算方法として、収入と年金額の2つの金額を押さえておきましょう。

  • 基本月額(年金)
    基本月額とは、年間で受給する老齢厚生年金(加給年金は除く)を12で割ったものです。
  • 総報酬月額相当額(給与収入)
    その月の標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額)÷12月を指します。
    わかりやすく考えると税・社会保険料を引く前の金額になります。
    月額給与+直前1年間のボーナス合計額の月割分(12月で割ったもの)

3.1 支給停止調整額の計算式

基本月額−(基本月額+総報酬月額相当額)−50万円)÷2

例)Aさん、厚生年金120万円 年収420万円(月額30万円、賞与30万円を年2回)

月額にすると、厚生年金は120万円÷12で基本月額10万円、総報酬月額相当額30万円+(30万円×2)÷12で35万円のため、基本月額10万円と総報酬月額相当額35万円の合計は45万円です。

基準額の50万円に届かないため、影響はありません。

例)Bさん、厚生年金120万円 年収540万円(月額35万円、賞与60万円を年2回)

月額にすると、厚生年金は120万円÷12で基本月額10万円、総報酬月額相当額35万円+(60万円×2)÷12で45万円のため、基本月額10万円と総報酬月額相当額45万円の合計は55万円です。

基準額の50万円を超えてしまうので、超えた5万円の半分、2万5000円が公的年金から引かれます。

年金10万円のうち、2万5000円が支給停止となり、残り7万5000円が支給されるということです。

4. まとめにかえて

年金を受給するようになっても、働くことが出来る方は多くいらっしゃいますが、「ある程度の収入があるのであれば年金額を減らしますよ」というのが在職老齢年金制度です。

老齢年金の本来の意味は「働くことが出来なくなれば年金を支払います」であるため、制度として矛盾はありません。

とはいえ、保険料を払っているのに減額されるのは残念に感じるかもしれませんね。

年金財政が不安なことはあるかもしれませんが、今後も年金の制度を維持するためにも、また若い世代の方も老後にしっかり年金が受給できるようにするためにも、収入があり生活ができる方の年金のカットは仕方ないことといえます。

なお、調整されるのは老齢厚生年金に対して行われるので、65歳から受給できる老齢基礎年金は支給停止にはなりません。

参考資料

香月 和政