商船三井のセグメント分析

「ライナー&ロジスティクス事業」と「不定期専用船事業」の合計経常利益額が、同社経常利益の99.5%を占めるため、2セグメントを取り上げる。

日本郵船のライナー&ロジスティクス事業

同社のライナー&ロジスティクス事業は、セグメント内に3つの事業があり、それぞれ個別で業績評価を行っている。そのため、各事業ごとに見ていく。

【定期船事業】

コンテナ船部門とターミナル部門からなる。

コンテナ船部門は、ONEのことを指しており以下のとおりであった。

  • 世界的な貨物需要の低迷、およびサプライチェーンの混乱解消による供給スペース増加で需給が緩み、運賃水準が大幅に下落
  • 北米航路では港湾混雑の解消により船腹稼働率が向上したことから、往航を中心に消席率が減少
  • 好調な輸送需要が継続する中、サプライチェーンの混乱が収束せず需給が逼迫していた前年同期と比べ、利益水準は大幅に低下

ターミナル部門は、国内ターミナルと海外ターミナルで構成される。国内ターミナルでは、前年同期に比べコンテナ船のスケジュールが正常化したことで取扱量は増加した。一方、海外ターミナルでは低調な荷動きにより取扱量が減少した。

以上の結果、定期船事業全体では増収減益で、経常利益は前年同期比▲2385億円の316億円であった。

【航空運送事業】

航空運送事業では、荷動きが前年同期比で減少した。また、国際旅客便の回復により供給スペースが増加したことで需給が緩み、前年同期比で運賃水準が低下した。

以上の結果、航空運送事業全体では減収減益で、前年同期比▲241億円の4億円となった。

【物流事業】

  • 航空貨物:アジア発を中心とした荷動きの低迷で、取扱量が前年同期比で大きく減少
  • 海上貨物:荷動き鈍化に伴い取扱量が減少し、市況下落の影響を受けた契約更改後の運賃が適用され、利益水準が低下
  • ロジスティクス:欧州での自動車関連産業の好調な荷動きや、北米における物流サービス拡充により、堅調に推移

以上の結果、物流事業全体では減収減益で、経常利益は前年同期比▲122億円の70億円となった。

日本郵船の不定期専用船事業

【自動車事業部門】

・ 完成車生産台数の回復及び各国での堅調な販売需要により輸送需要が旺盛であった。一方、船腹供給は限定的で、労働者不足等に起因する港湾混雑も見られ、需給は逼迫
・ 最適な配船と運航による稼働率向上で、輸送台数は前年同期比で増加
・自動車物流でも、完成車荷動きの回復に伴い、特に欧州や東南アジア地域で取扱量が前年同期比で増加。各国の事業会社において、新規ビジネス獲得への投資を進めて収益性が向上

【ドライバルク事業部門】

ケープサイズは、中国の景気回復が想定より遅れている影響を受け、市況は前年同期水準を下回った。

パナマックスサイズ以下は、石炭と穀物の荷動きは堅調だったものの、市況は好調だった前年同期水準を下回った。

高市況だった前年より市況が下落するなか、先物取引を用いた市況変動リスク低減に取り組み、長期契約獲得による収入の安定化と効率的な運航によるコスト削減に努めた。

【エネルギー事業部門】

  • VLCC(大型原油タンカー)の市況は好調に推移し、低迷していた前年同期水準から大きく改善
  • 石油製品タンカーは、ロシア・ウクライナ情勢の影響によりトレードパターンが変化し、輸送距離が延びたことで船腹需給が引き締まる
  • VLGC(大型LPGタンカー)は、長距離輸送の増加により船腹需給が引き締まったことで、市況は前年同期比で良化
  • LNG船は、安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移

【海洋事業】

FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが順調に稼働した。

以上の結果、不定期専用船事業全体では前年同期比で減収減益となり、経常利益は前年同期比▲100億円の537億円であった。