社畜から脱却するためには

自分では気づかないまま社畜化してしまうと、心身の健康状態が悪化しても気づきにくくなる場合があります。社畜から脱却するためには、どんな点に注意すれば良いのでしょうか。

個人でできる対策

社畜を脱するうえで心がけたいのが、仕事や会社とは無関係の趣味や人間関係を持つことです。社外の人と交流すると、社内で普通だと思っていることが常識外れだと気づきやすくなります。

将来に役立つ勉強をはじめる方法も有効です。自分の可能性が広がって、1つの会社に依存する必要がなくなることもあります。さらに、会社以外に大切なことが見つかれば会社での評価を第一に考えなくても済むため、理不尽な要求を断る勇気が出てくるかもしれません。

心に余裕ができたら、自分の人生で「何が一番大切なのか」を考えてみましょう。目的を考えて仕事をすることも、社畜にならないための大切な心がけのひとつです。

一方、滅私奉公で働いているうちに、「何のために働いているのだろう」といった虚無感に陥った経験がある人もいるでしょう。そんなときは一度立ち止まってみてください。自分でも気づかないうちに思考停止に陥ってしまうこともありますが、それはあなたのせいではないかもしれません。

会社が次々に仕事を押し付けたり暴言で社員を支配したりして、意図的に思考停止に追い込んでいるケースがあるためです。追い詰められる前に家族や友人、相談窓口に助けを求めましょう。

ジョブ型雇用へのシフト

メンバーシップ雇用に替わるジョブ型雇用という働き方に注目が集まっています。ジョブ型雇用とは、職務記述書によって仕事の内容を明確に定義し、条件を満たす人材を採用する雇用形態です。評価は成果によって決まり、報酬も事前に決められています。

一方のメンバーシップ雇用とは、職務内容や勤務地の定めをせずに人材を採用する雇用形態です。仕事の内容ではなく人によって賃金が決まる仕組みで、これまでの日本企業では主流でした。

労働者にとってジョブ型雇用は、ひとつの企業に縛られずに自分の得意分野に専念できるメリットがあります。「社」に就くのではなく「ジョブ」に就くため、滅私奉公は不要です。ただし、スキルアップの努力は欠かせません。

ジョブ型雇用は同一労働同一賃金と相性が良い仕組みだといわれています。企業にとってはスキルが伴わない中高年労働者に高い賃金を払う必要がない点がメリットです。ジョブ型雇用にシフトする企業が増えれば、近い将来メンバーシップ雇用を前提にした新卒一括採用の規模は縮小するかもしれません。

滅私奉公に変わるエンゲージメントとは

企業にとってジョブ型雇用のメリットは大きいものの、優秀な人材が流出しやすくなる点は無視できない課題です。そこで多くの企業が注目しているのが、エンゲージメントという概念です。

エンゲージメントとは、一般的に「社員が会社に愛着を持って積極的に貢献しようと思う意欲」を意味します。会社と社員の信頼関係向上に重きを置く点がポイントで、社員の気持ちに注目する忠誠心や従業員満足度とは異なります。

エンゲージメントが高い企業では、企業の成長に貢献した社員が正当に評価され、それに見合った報酬が得られます。会社のメリットが社員のメリットになる点が滅私奉公との違いです。エンゲージメント経営が成功すれば社員はいきいきと働きやすくなり、会社にとっては離職率の低下や業務効率化、生産性向上が狙えます。

まとめ

私たちの働き方は転換期を迎えています。テレワークや時短勤務、ジョブ型雇用を含めた企業の大規模な変革はすでにはじまっています。働き方の多様化や残業制限によって社畜は減るのか。今後の動向に注目です。

参考資料

尾藤 ちよ子