これは次世代以降、さらに深刻さを増す社会課題についても積極的に対処しようとする「未来志向」の表れと捉えることができるでしょう。

SDGsが提起する社会問題とは

SDGsは一見すると多岐にわたる分野における多種多様な目標ですが、実はその多くが「気候変動問題」や「貧困・格差問題」から派生した問題の解決に関する内容となっています。

「気候変動問題」とは、地球上の気候が変動することで生態系や私たちの暮らしに悪影響が発生している問題です。観測されている事実として、世界の年平均気温や海水温は上昇しており、北極海の氷は溶けています。こうした気温や海水温の上昇傾向、氷河の溶解は今後も続くと予測されています。

また、気温や海水温の上昇に端を発し、直接的に私たちの生活に被害をもたらす洪水や豪雨、干ばつ、高潮といった気候関連災害は、農作物の生産減や生態系の破壊、熱中症などによる疾病など二次被害も連鎖的に引き起こしています。

「貧困・格差問題」とは、お金はもちろん、食糧や水など私たちが生存するために必要な資源に著しい偏りがあることで、人権が踏みにじられている問題です。多くの場合、そのままではありますが「貧困に陥る」というかたちで問題が表出します。

貧困は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2つに大きく分類されます。

絶対的貧困とは、人間としての生存条件が十分に満たされていない状況を指します。SDGsでは絶対的貧困のなかでも「現在1日1.25ドル未満で生活する人々」を「極度の貧困」として定めています。この「極度の貧困」状態に陥っている人々は現在、地域別に見るとサブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)が最多となっています。

また、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響により、南アジアなどのアジア圏でも「極度の貧困」に陥る人が増加するとの研究が報告されています。それもあり、今後、全世界で10億人以上の人が「極度の貧困」に該当する可能性があります。

相対的貧困とは、その国の一般的な生活水準等と比べ経済的に困窮した状態を指します。つまり、国内における男女や収入、地域の違いによる経済格差のことです。絶対的貧困と比べて、顕在化しにくいという難点を抱えています。しかし、生活に支障があり、将来に対する不安が大きく、物心ともに安定しないという深刻性を無視することはできません。