そこで人々は、「新発国債が発行できなくなって日本政府は破産するだろうから、既発国債は紙くずになるだろう」と考えるようになり、そうした売り注文も増えてきました。まさに、売りが売りを呼び、暴落が止まらなくなったのです。

日本政府は必死に国債を買い支えましたが、額面100円の国債が30円にまで値下がりしてしまったのです。

財政破綻の思惑から円も暴落

日本政府が破産すると、その子会社である日本銀行の発行している「日本銀行券」も紙くず同様になるかもしれません。

人々はそう考えて、紙幣を手放そうとしました。スーパーへ行ってリンゴやミカンを買う人も増えましたが、価格が高騰する前に売り切れてしまいました。インフレになるには、いま少し時間が必要だったのです。

一方、金融市場ではドルの値段が急騰しました。こちらは価格が需給を敏感に反映して瞬時に変動するので、実物よりも価格高騰が素早く起きるのです。

そこで、円が暴落(外貨が高騰)しました。日本政府は必死に介入しましたが、1ドル100円だったドルが短時間のうちに300円にまで値上がり(円は値下がり)してしまったのです。

人々は深い溜息をついた

金融市場というところは、売りが売りを呼ぶと一層大きな売り注文が出てくるところです。「日本政府は倒産を免れることができない」と人々が確信すると、日本国債と日本円にますます大量の売り注文が殺到しました。

投資家たちは、深い溜息をつきました。自分が被った巨額の損失への溜息と共に、かつて「日本経済は世界一だ」とはしゃいでいたバブル期を思い出しながら、日本という国の成れの果てを嘆いていたのです。