さらに、ホテル事業も関空オープンに合わせ南海難波駅直結の「南海サウスタワーホテル」を1990年に開業しましたが、経営不振により2003年4月に撤退。現在はホテルの建物のみをホテルチェーン(スイスホテル)に賃貸する大家(=不動産事業)に徹しています。

なお、つい最近のことですが、大阪府南部ではお馴染みだったレジャー施設・みさき公園を2020年3月末に閉園しています。

このように、近年の南海電鉄の歴史は周辺事業の撤退と再編の歴史といっても過言ではありません。インバウンドの活況もあり何とか立て直しが一息ついたのも束の間、次はコロナ禍への対応に迫られています。

2031年のなにわ筋線開業で悲願の梅田進出

関西の私鉄には、宝塚歌劇団を持つ阪急、阪神タイガースを持つ阪神、名古屋までの路線を持ち日本一の路線距離を持つ近鉄があります。その中で南海電鉄は、ラピートの先進的なデザインを除けば特色に欠ける私鉄といわれていました。

しかし、今中間期は好調な不動産事業とこれまでの地道な経営改善が、私鉄唯一の営業黒字という形で報われる形となりました。ただし、コロナ禍による厳しい事業環境は依然として続いています。

その中で、南海電鉄の悲願であった梅田そして新大阪延伸が、2031年予定のなにわ筋線開業で実現されることになります。インバウンド需要の回復は短期的には望み薄ですが、なにわ筋線の開業を控える中で南海電鉄の事業がどう推移していくのか、今後の業績も注目されます。

【参考資料】
南海電気鉄道株式会社「2021年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
南海電気鉄道株式会社「2021年3月期第2四半期決算補足説明資料

石井 僚一