筆者は選択的夫婦別姓制度が整えられ、「姓が選べるよ」と言われても夫の姓を使いたいと考えています。理由は単純で、「旧姓も気に入っているけれども、夫の姓+自分の名の組み合わせがしっくりくる」から。また、名字が変わるという体験に感覚的な付加価値を置いているからです。結婚して4年が経った今でも、旧姓とは違う名字で呼ばれることに面白さを感じています。

この「夫の姓+自分の名」の組み合わせや改姓による面白さが、旧姓のアイデンティティや手続きの面倒さを超える筆者のような人も決して少なくないのではないでしょうか。

周囲の知人に話を聞くと、「名字が変わったことで結婚した実感が湧いて嬉しかった」、「旧姓の自分と改姓した自分と、2つの人生を生きられて得」、「新しい自分になった気分」といった声も聞かれます。旧姓のアイデンティティや手続きの煩雑さ以上に夫婦別姓のメリットがあった人も珍しくはないようです。

改姓したことでかえって旧姓を宝物と思うように

また筆者の母の旧姓は珍しく、ワタベウェディング株式会社が2018年に行った「憧れの名字」というアンケートで上位に入ったことがある姓です。そんな旧姓を持つ母に、結婚して父の姓を名乗ることになって40年余りたった今、旧姓についてどう感じているのか尋ねてみました。

すると、「結婚前は旧姓について深く考えたり大事に思ったりしたことはなかった。今はもう同窓会でしか旧姓を呼ばれないけれども、日常生活で呼ばれることがなくなったからこそ、自分の心の中で宝物のような存在になっているね。だから私は夫婦同姓でよかったかも」といった返事が返ってきました。