1950年代後半生まれの母は、結婚して改姓することが何も不思議ではない世代かもしれません。しかし意外にも旧姓に対しては強い思い入れがあり、その受け止め方が「改姓したからこそ旧姓を大事にできるようになった」というスタンスだったことは娘ながらに素敵だなと感じました。

大事なのは「夫婦別姓」ではなく「選択できること」なはず

ここまで「夫婦同姓でよかった」という女性側の意見を紹介してきましたが、当の筆者は選択的夫婦別姓に大賛成です。選択的夫婦別姓はあくまで“選択的”。自分は夫婦同姓を望むけれども、他の人がどちらにするかは個人の自由で選択していいからです。

本当に大事なことは「夫婦で別々の姓を名乗ること」ではなく、「夫婦が名乗りたい姓を選択できること」にあるはずです。夫婦が別姓でいることは一人一人がより良い人生を送るための手段の一つであり、目的ではありません。

夫婦別姓を望む人と夫婦同姓を望む人が互いの考えを尊重せず、自分の考えと異なることを批判したり敵対し合ったりしているうちは選択的夫婦別姓制度が法律で整ったとしても、社会はいい方向には変わらないと個人的には思ってしまいます。

今は夫婦別姓のメリットや望む声ばかりが取り上げられ、「夫婦別姓こそ素晴らしい」という考えが若い世代を中心に広がっているかもしれません。しかし、そのどちらも素晴らしく、どちらを選択してもいいという方向に議論が進んでいくことを切に願います。

【参考資料】
47都道府県『選択的夫婦別姓』全国意識調査の概要」(選択的夫婦別姓・全国陳情アクション)
結婚と苗字に関するアンケート調査」(ワタベウェディング株式会社)

富士 みやこ