共働きが主流となった今でも、「手作りこそ愛情のしるし」という考えが残っていたり、家事の手抜きをして罪悪感を感じる女性は少なくありません。

大人の立場から見ると、整えられた家や手作り料理といった「カタチ」は子どものために思えるでしょう。一方で、子どもが見ているのは親の「カタチ」だけではありません。親の表情や精神状態なども子どもはよく見ているものです。

完璧な家事は本当に「子どものため」になっているのでしょうか。子ども時代に家事を完璧にする母のもとに育ったという、現在育児中の女性に話を聞きました。

不機嫌な横顔で家事をする母…一番の願いは笑顔だった

友達からうらやましがられるほど料理上手な母をもったTさん。

「母は朝から旅館のような朝食を作り、夕食には季節の食材を使った料理が何品も出てきましたし、おやつももちろん手作り。座る暇もなく掃除もするので、いつも家の中はピカピカでした。遊びに来る友達にはうらやましがられましたね。

でも、正直、私はうれしくなくて……。母はいつもピリピリしながら家事をしていたので、怖かったんです。台所に立つ母に描いた絵を『見て』と言うと、振り返った顔が、はじめ怒っているんですよ。すぐに笑顔に変わるのですが、それも違和感の残る作り笑顔。だんだん家事をする母に話しかけるのは止めるようになりました」。