万が一の保障を用意しながら、将来のお金を増やす手段として注目される「変額保険」。

しかし、その仕組みやリスクは複雑で、迷う人も多いのではないでしょうか。

本記事では、変額保険がどのように機能し、どんな人に向いているのかをわかりやすく解説します。

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1. 変額保険とは

変額保険は、生命保険の一種でありながら「保障」と「運用」の2つの機能を持つ特長があります。通常の保険料の一部が特別勘定で投資信託などに回されるため、運用成果次第で満期保険金や解約返戻金が変動するのが大きなポイントです。

ただし、死亡保険金の基本保険金額は最低保証される場合が多い点は安心材料となります。

1.1 変額保険の保障機能

変額保険は、死亡時や高度障害状態になった際に保険金が支払われる、一般的な生命保険の機能を備えています。契約時に定めた基本保険金額は最低保証され、仮に運用が不調だったとしても、契約時に設定した基本保険金額を下回ることはありません。

一方、運用が好調なら追加分として「変動保険金」が上乗せされ、結果的により大きな金額を残せる可能性もあります。

1.2 変額保険の投資機能

変額保険は契約者が支払う保険料の一部を、特別勘定で株式や債券などを組み込んだ投資信託へ回し、追加のリターンを期待します。

ただし、運用リスクは契約者が負うため、場合によっては解約返戻金や満期保険金が元本を下回る可能性もゼロではありません。受取額が変動する点から、加入の際には投資のリスク許容度を考慮することが大切です。

2. 変額保険の主な種類

変額保険には、大きく分けて有期型と終身型の2つがあります。さらに、定額保険との違いを理解することで、自分に合った商品を選びやすくなります。

2.1 有期型

保険期間に終わりが設定されている変額保険です。保険期間中に被保険者が死亡または高度障害状態になれば、最低保証される基本保険金と好調な運用が上乗せされた変動保険金を受け取ることが可能です。

満期時には満期保険金も支払われますが、運用が不調だと受取額が保険料総額を下回るリスクがあります。

2.2 終身型

一生涯保障が続く変額保険で、満期保険金は設定されていないのが一般的です。死亡時や高度障害状態になったとき、基本保険金が保証されるのは有期型と同様ですが、契約期間が長期にわたる分、運用の成果によって解約返戻金が大きく変動します。

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2.3 定額保険と変額保険の違い

定額保険(終身保険や養老保険など)は、あらかじめ死亡保険金や解約返戻金、満期保険金などが決められています。保険料は一般勘定で運用され、商品ごとに予定利率が設定されるため、受取金は安定的ですが、大きな運用益が期待しづらいというデメリットもあります。

一方、変額保険は運用成果による増加が見込める代わりに、契約者が一定のリスクを負う仕組みになっています。

3. 変額保険が向いている人

保障を確保しながら老後や将来の資産づくりを検討している場合、変額保険も選択肢の一つになるでしょう。特にコツコツと長期で保険料を支払うことで、投資のリスクを分散しながら積立投資に近い効果を得られます。運用と保障の両方をカバーしたい人にとっては魅力的な商品となり得ます。

4. 変額保険の必要性が低い人

4.1 投資リスクを許容できない人

日々の価格変動に不安を感じ、投資自体に抵抗がある場合は、変額保険のメリットを十分に活かせません。運用リスクを受け入れられない場合、定額保険や純粋な投資信託以外の方法を考えたほうが安心でしょう。

4.2 短期間しか加入できない人

変額保険はできる限り長期的に運用を続けることで、複利効果を活かしやすくなります。短期で解約すると解約控除が発生し、元本割れのリスクが高い点に注意しなければなりません。

4.3 保障重視や他保険で十分な人

万が一のリスクを備えるだけであれば、定期保険や終身保険で保障を上乗せするほうが費用対効果が高いケースが多いでしょう。また、すでに十分な死亡保険に加入している場合は、あえてリスクのある変額保険を追加しなくてもよいかもしれません。

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5. 知っておきたい変額保険のメリット・デメリット

5.1 メリット① 運用成果による将来資金の増加

特別勘定で投資信託を運用するため、好調な相場が続けば解約返戻金や満期保険金が大きく増える可能性があります。インフレ対策としても期待できるため、長期的に考えるならメリットは大きいといえるでしょう。

5.2 メリット② 死亡保険金の基本額は保証

変額保険は、被保険者が死亡または高度障害状態になった場合、設定した基本保険金を最低額として受け取れるのが一般的です。運用がプラスなら上乗せも得られるため、家族への経済的備えがしやすいのが魅力です。

5.3 デメリット① 運用損による元本割れリスク

市場が下落した際には、満期保険金や解約返戻金が払込保険料総額を下回る可能性があります。特に短期解約すると手数料が重くのしかかり、想定外の損失を被ることも考えられます。

5.4 デメリット② 仕組みが複雑で理解しづらい

保険の知識に加え、投資や運用のポイントに関する理解も必要となるため、商品内容を十分把握しないまま契約すると、後に「こんなはずではなかった」というトラブルが生じがちです。契約時には重要事項説明書をしっかり読むことが重要です。

変額保険のトラブルも

独立行政法人国民生活センターの2015〜2019年の調査によると、変額保険や外貨建て保険など投資性のある保険に関する相談は年間400〜600件で推移しています。また、60~80代で相談者の7割を占めており、年齢が上がるにつれて相談件数が増加する傾向もあります。

高齢になってからの変額保険の加入(特に投資経験がない場合)は、十分な説明を受けても理解が追いつかないケースもあるため、注意が必要です。

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5.5 デメリット③ 手数料負担

変額保険の場合、保障を維持するための「保険関係費用」に加え、投資信託の運用コスト等の「資産運用関係費用」も差し引かれます。長期で運用するほど手数料の影響は大きくなるため、どの程度のコストが発生するか、契約前に確認することをおすすめします。

6. 変額保険に加入する前におさえておきたいポイント

6.1 加入目的が明確かどうか

死亡保障が主目的なのか、それとも老後資金形成を優先したいのかにより、変額保険が最適かは異なります。運用リスクを背負ってでも資産を増やしたいのか、まずは目的を明確にするところから始めましょう。

6.2 投資リスクを理解できているか

保険料の運用先となる特別勘定は、投資信託や株式、債券などの価格変動リスクを伴います。過去の運用実績をチェックし、自分のリスク許容度と照らし合わせることが大切です。

6.3 自分に合う商品を選べているか

変額保険には、有期型や終身型、あるいは特約で介護保障が付くタイプなど、商品ごとに特徴が異なります。自分のライフプランと照合しながら、必要な機能を持つ商品を選ぶことで失敗のリスクを軽減できます。

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7. 資産形成は変額保険・NISA・iDeCo、どれがベスト?

7.1 変額保険とNISA、iDeCoの違い

NISAやiDeCoは、投資信託や株式などを運用する際に得られる利益が非課税になる税制優遇制度です。

一方、変額保険は「保険」の枠組みの中で、保障機能と資産運用をあわせ持つ商品です。NISAやiDeCoは、それぞれ掛金の上限や運用対象、引き出し制限といった制度上のルールが定められていますが、変額保険は途中で解約することも可能です。ただし、その際には解約控除などの手数料が発生する点には注意が必要です。

7.2 変額保険と個人年金保険

老後資金を貯める際、個人年金保険が選択肢に挙がることもあるでしょう。個人年金保険は年金受取をメインとしていますが、変額型を除けば受取額がほぼ確定しているのがメリットです。

一方で大きな運用益を狙いにくい側面があり、より大きなリターンを求めるなら変額保険のほうが伸びしろがあります。

7.3 ケース別の選び方

① 保障は不要で運用を積極的にしたい→NISA

投資に集中して運用益を目指すならNISAがおすすめです。非課税枠の拡大により、長期運用しやすい制度へ進化しました。投資リスクをとる代わりに、受取時の課税負担を抑えられます。

② 保障と資産形成を同時に考えたい→変額保険

家族への保障を用意しながら老後資金を育てたいなら、変額保険が有力な選択肢になります。運用が好調なら、保険の枠内で資産も増やせるので、投資と保険をまとめたい人に適しています。

③ 老後に備えたい→iDeCoや個人年金保険

iDeCoは受取年齢まで原則引き出しできないため、強制的に貯蓄ができる点が特徴です。個人年金保険は定額タイプなら将来の年金額を把握しやすく、変額タイプなら運用当たり次第で受取り金額が増える可能性があります。

8. 「投資」と「保障」のバランスが大切

多くの方が資産運用に意識を向ける一方で、病気やケガ、家族の不測の事態に備える「保障」も見落とせません。もしもに備える保険がなければ、長期運用を計画していても途中で積立を断念せざるを得ない局面が出てくるかもしれません。投資を見直す際は、同時に保険の内容も考慮し、「投資」と「保障」の両方をうまく組み合わせることが望ましいでしょう。

9. まとめ:変額保険の仕組みを理解して最適な選択を

変額保険は死亡保障と資産形成が同時に狙える反面、運用損によるリスクや仕組みの複雑さという課題もあります。契約前には、保険料の支払い目的や期間、リスク許容度を検討し、複数商品を比較することが大切です。

自分のライフプランを踏まえて総合的に判断し、必要に応じて専門家にアドバイスを求めるなどすることで、後悔の少ない保険選びができるでしょう。

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参考資料

変額保険|生命保険を知る・学ぶ|公益財団法人 生命保険文化センター

リスク性のある金融商品(特定生命保険・投資信託)に関する消費生活相談について|独立行政法人国民生活センター

マネイロ編集部